「スキンケアと同じように腟ケアを」女性医療専門医に聞いた“腟まわりのセルフケアの重要性”

心と体

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2023.11.20

人生100年時代と言われますが、40代の私たちはまだまだ折り返し地点にもいっていません。これから先、折り返した後の人生も、女性としての喜びを感じながら生きていくためには腟ケアが必要と言うのは、女性医療クリニックLUNAグループ理事長・関口由紀先生。詳しくお話を聞きました。

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教えてくれたのは……関口由紀先生

関口先生

医師、「女性医療クリニック・LUNAグループ」理事長。
医学博士、経営学修士(MBA)、日本メンズヘルス医学会テストステロン治療認定医、日本泌尿器科学会専門医、日本排尿機能学会専門医。著書は『セックスにさよならは言わないで:悩みをなくす腟ケアの手引』など多数。

書影

性ホルモンで乗り越える男と女の更年期 知っておきたい驚異のテストステロンパワー』(産業編集センター)
著者:関口由紀
定価:1,760円(税込)

腟を乾燥させるなかれ!

セルフケア出典:stock.adobe.com

――先生が医療監修をされた、原田純さんの『人生最高のセックスは60歳からやってくる』という書籍があります。この本のタイトルもまたかなりインパクトがあるというか、希望が持てるというか。

そうそう。原田さんはパートナーがいるわけではありませんが、28年ぶりセックスについて考えて、この先一生できなくなるのはいやだと腟ケアをしたら、腟の状態が改善したんです。その後、パートナーも見つかり、セックスしてみたら彼があまりに下手で教育した結果、最高のセックスライフを手に入れたという方です。

――前回のインタビューで、先生は「セックスは40歳からがいい」とおっしゃっていましたが、60歳からはさらに最高なんですね。原田さんがその最高のセックスができるようになったという“腟ケア”について教えてください。

腟ケアとは、フェムゾーンをしっかり保湿すること。前回お話した「GMS(閉経関連尿路生殖器症候群)」もそうですが、腟と外陰にとって乾燥は大敵! 皆さん、お肌のケアは欠かさないのに、フェムゾーンのケアに意識を向ける方はまだまだ少ないです。ぜひ、腟ケアの保湿に関しても、意識を高くしていただけるといいなと思います。

――具体的に、どのようなことをしたらいいのですか?

お風呂から出た後に、保湿剤、クリーム、ジェルなどを使いフェムゾーンを保湿していきます。人差し指、中指に保湿剤をつけ、真ん中のクリトリスから尿道さらに膣前庭、その後両サイドの小陰唇、外側の大陰唇、後ろ側の肛門まで塗ってください。

はじめは抵抗があるかもしれませんが、腟まわりのケアに慣れてきたら、指の第2関節ぐらいまでを腟の中に入れて保湿剤を塗りましょう。塗ったときに筋肉が痛む場合は揉みほぐしてください。その後、その指に向かって骨盤底筋をきゅっと閉めて上にぐっと持ち上げると、骨盤底がちゃんと閉まっているかを確認できます。

スキンケアと同じように腟ケアを

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――そのときに使う保湿剤はどんなものがいいですか?

全身に使える保湿剤で十分です。こだわりがある場合は、植物性のオイルなどを使ってもいいです。最近は、フェムケアアイテムが増えてきて、腟ケア用のオイルなどもたくさん出ているのでチェックしてみてください。

――オイルや保湿剤を腟の中に入れることに抵抗があるというか、大丈夫なのかな? と感じるのですが。

腟ケアの話をすると、その質問は必ず出ますが、入り口辺り、第二関節ぐらいまでなら大丈夫です。腟は、帯下(おりもののこと)などによる自浄作用があり、さらに乳酸菌が良い常在菌としているので、通常は奥まで洗わなくても清潔に保たれています。ただ、アトピーがひどい方や「GMS」の症状がある方は、細菌性や接触性の皮膚炎を起こしてしまうことがあります。自分に合った保湿剤で、腟の入り口までは毎日保湿する習慣をつけましょう。

フェムゾーンは第2の顔です。顔は、みなさん必ずお風呂から出た後はスキンケアをすると思います。ただ、プチプラの化粧品や乳液を使うか、デパートで買うような高級なものを使うかは人それぞれ。そこは、ご自身に合ったものを選んでいただければいいですが、とにかくフェムゾーンの保湿は重要です。

――顔の乾燥と同じくらい、フェムゾーンの乾燥もケアしなくてはいけないんですね。

皮膚科の先生がよく「全身保湿しましょう」と言いますが、同じく、フェムゾーンもちゃんと保湿しましょうと伝えていきたいです。日本はフェムケアについて遅れていましたが、最近ようやく情報もアイテムも増えてきたので、みなさんもアンテナを高く情報をインプットしてみてください。

――腟ケアをすることでどんな変化が起こりますか?

腟ケアと一緒に骨盤底筋トレーニングをすることで、便秘が改善することがあります。また骨盤底は、骨盤内蔵器の膀胱や子宮、直腸を支えるとともに、排泄機能の正常化にも関与しているんです。腟ケアをすることにより、尿漏れや頻尿が正常化してきますよ。

腟ケアは毎日して当たり前

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――それはいいことばかりですね。でも、日本人女性で毎日腟ケアをしている人はまだまだ少ないですよね。

統計を取ってみたら、意外を多いかもしれません。最近は、フェムケアアイテムがどんどん増えているし、大手も参入してきていますよ。

――それだけ大事だということですよね。

親は、子どもに毎日歯磨きをすることを教えますよね。ヨーロッパでは、それと同じようにお母さんが娘に腟ケアについて教えるんです。女性の体にとって、とても大切なことだからです。
日本では、外陰部などは女の人が触ってはいけない場所として教えられてきて、自分の身体にも関わらず、触っていいのは夫と産婦人科医だけ、といった時代が続いていました。昔の平均寿命で考えればそれでもよかったかもしれないけど、今や人生100年時代。トラブルが出ないためにも、腟まわりのセルフケアは重要なんです。

――歯磨きと同じ感覚で腟ケアですね。

昔は、毎日歯磨きをしないで総入れ歯になったという人がたくさんいたけれど、今は朝晩の歯磨きが当たり前になり、総入れ歯という人もみかけないでしょ。同じように、腟ケアも「毎日して当たり前」という時代が近い将来に来ると信じています。

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歯磨きと同じように、日々腟ケアをする。毎日? と驚いてしまいましたが、スキンケアもボディケアも1日も欠かせないと感じているのだから、腟ケアだって毎日して当たり前ですよね。このお話を聞いてから、フェムケアグッズをチェックしてみたところ、確かに腟ケア用アイテムはたくさん発売されています。腟ケアをすれば、いいことがたくさん。ぜひ、今日からでも腟ケアをスタートさせてみてください。

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著者

山田かほり

山田かほり

フリーライター歴10年。読んだ人の心にふわっとした空気が流れるような記事や情報をお届けできるよう心がけています。

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