お話を聞いたのは……加藤綾菜さん
1988年広島生まれ。2011年にザ・ドリフターズの加藤茶さんと結婚。高齢の夫を支えるため「生活習慣病予防アドバイザー」「介護食アドバイザー」「介護レクインストラクター」など多くの資格を取得。You Tube「加藤家の日常」やさまざまなメディア、イベントに出演中。
『加藤家の食卓 医師と栄養士の先生に長生きする食事の作り方を習いに行ってきたレシピ集』(アスコム)
著者:加藤綾菜
定価:1,496円(税込)
「私が絶対に治してあげる!」と覚悟した瞬間
――綾菜さんは、加トちゃんのために食事面での健康管理を徹底されていますよね。それは、結婚当初からですか?
最初の頃は、ちーたん(加藤茶さんのこと)が好きな物しか作っていなかったので、あまり健康的ではなかったです。ちーたんはよく食べるし、よく飲むけど、野菜とか魚は食べないので、そういうものは食卓に並ばず、週に3回くらい揚げ物を作っていました。病気になった原因には、私の料理のせいというのもあったと思うんです。もっと気をつけておけば病気にならなかったんじゃないかなって。
――結婚後に、大きな病気をされたことがあるんですよね。
私が25歳と27歳のときに、ちーたんが大きな病気をしたんです。バッシングに加え、ちーたんが寝たきりになりました。私は、病院と家の往復しかしてなくて、付き添いばかりでお風呂にも入れず……。同じくらいの年の子たちは遊んでいるのに、私のこの生活はなんだろう……という気持ちになったこともありました。
――どのように乗り越えられたんですか?
病室でドリフのDVDを流すと、あまり意識がないちーたんが反応するんですよ。「絶対舞台に立ちたい。志村とまた舞台に立ちたい」って話すんです。病院の先生からは「それは難しいと思います」と言われていたけど、「私が絶対に治してあげる。また舞台に立たせてあげる」って思ったんです。
循環器系の病気で減塩をしてくださいと言われていたので、減塩について教えてくれる先生をインターネットで探して、直接連絡をして減塩料理を学びました。それと平行して、介護の勉強をしていくつかの資格も取りました。
ちーたんのお母さんの生まれ変わり!?
――資格まで取られたんですね。すごいです。そのおかげで、加トちゃんは元気になったんですね。
退院後はリハビリ期間があったりして、1年くらい通院しました。でも、少しずつ良くなりました。それが27歳のときだったんですけど、「もう、何があっても私は負けない」と思ったのがこのときです。自分からは絶対に逃げられないから、立ち向かって、夫婦で勝利していこうと覚悟しました。
自分一人で幸せになるのは簡単だけど、ちーたんのことも幸せにしていこうと思ったんです。だから、病気を二人で乗り越えたのはすごく大きかったです。大好きな旦那さまでもあるけど、親友でもあるし戦友みたいな関係になったと思います。私、多分ちーたんのこと産んでますしね(笑)。
――産んでいる? どういうことですか?
私、結婚したばかりの頃、美輪明宏さんにお会いしたことがあるんです。そのとき、三輪さんが私を見て、「あら、加藤さんのお母さんが生まれ変わったのね」と言ったんです。
――えぇぇぇ! すごいお話ですね(笑)。
三輪さんが、ちーたんに「綾菜さんの作ったお料理、お母さまの味に似てるでしょ?」って聞いたんです。私、びっくりしちゃって。実は、付き合ったばかりの頃、ちーたんが私の料理を食べて、「お母さんと同じ味だ」と泣いたことがあるんですよ。
――すごすぎるエピソードですね!
それに私、何回も同じ夢をみるんです。それが、破水をして赤ちゃんを産んだらちーたんだったという夢。しかも、今のままのちーたんが出てくるんですよ(笑)。あまりにもその夢を見るので、出会えたことに深い意味があるんだと思っています。
私が、ちーたんのお母さんの生まれ代わりだとしたら納得いくことがたくさんあるんです。こんなに歳が離れているのにものすごい愛情を感じるし、私たちには子どもがいないけど、その分の愛情を私はすべてちーたんに向けているんです。どんな夫婦も、3年過ぎればぶっちゃけドキドキなんてしないじゃないですか。でも、私たちは惚れた腫れたを超越した関係なんだと思ったら、これからも絶対大丈夫だと思うんです。
料理の幅がグンと広がる綾菜流「万能 氷だし」
――だからこそ、加トちゃんのためにこれだけ徹底した健康管理、食事管理ができるんですね。減塩を意識した食生活をスタートしてみてどうでしたか?
最初に教えてもらったのは、基礎的な減塩方法でした。醤油や塩を減らして、それを補うためにニンニクやショウガを入れて、香りで食欲を刺激して、味が薄くても誤魔化せるというもの。最初は、「すごい!」と思ったんですけど、この方法だと料理がワンパターンになるんです。
そこで、国立循環器病研究センターの先生から減塩料理についてさらに深く学ばせてもらいました。そして、味に深みがあっておいしくなるという“万能 氷だし”を料理家の田村つぼみ先生と一緒に開発したんです。
――今回発売になった『加藤家の食卓』で紹介されている“万能 氷だし”ですね。
濃い味付けが好きだったちーたんも、氷だしを使った料理を「おいしい、おいしい」って食べるようになったし、氷だしは和食、中華、イタリアン、エスニックにも使えるので、減塩料理の幅がグンと広がりました。
減塩料理を作るって、すごーくめんどくさいんです。毎回、計量スプーンでちょっとずつ量るから、すごく時間がかかるんです。私もやると決めたら徹底したいので手を抜けなくて、それがストレスになっていたけど、氷だしを作るようになってからは、調理時間が3分の1に減り、ストレスなく料理ができるようになったのはすごく大きいです。
――使っている材料は良いものを使っているんですか?
いえいえ、スーパーで買えるものばかりです。酒かすは150円くらいのものですが、1回で使う量が少ないので、150円でたくさん作れます。この万能氷だしを作っておけば、茶碗蒸しや煮物などもすぐに作れて便利ですよ。ぜひ、作ってみてください。
綾菜流「万能 氷だし」レシピ
材料(キューブ10個分)※1個の塩分は0.3g
- 玉ねぎ…2分の1個
- しょうが…5g(2分の1かけ)
- 酒かす…6g(約小さじ1)
- かつお節…6g
- しょうゆ…大さじ1
- 水…1カップ
作り方
1. 小鍋にすりおろした玉ねぎとしょうが、水、酒かすを入れて中火にかける。沸騰したら中火弱にして約5分煮る。玉ねぎの甘みとしょうがの有効成分がしっかり出る。
2. 火を止め、かつお節を先にいれてから、しょうゆを入れ、鍋を回してなじませる。かつお節が沈むまで1分ほど待つと、温度が下がってうま味が出やすい。
3. ざるでこす。ペーパーは使わず、かつお節などざるに残ったものは、ヘラやスプーンの背などで押して水分をしっかりしぼり落とす。うま味や塩味が入っているので、よくしぼる。
4. 製氷皿に3を流し入れる。粗熱がとれたらラップをして冷凍庫で冷やし固める。そのまま2週間ほど保存可能。
加藤茶さんのお母さまの生まれ変わりというお話、すごいですよね。お二人の絆の深さが納得できるエピソードをたくさん聞き、綾菜さんの人としての魅力にもどんどん引き込まれていきました。減塩料理は、高齢の方ばかりが気をつけるのではなく、saita読者世代にも必要なので、ぜひ氷だしを作ってみてくださいね。