教えてくれたのは 舟木彩乃さん
ストレスマネジメント専門家。公認心理師。株式会社メンタルシンクタンク副社長。
一般企業の人事部で働きながらカウンセラーに転身、その後、病院(精神科・心療内科)などの勤務と並行して筑波大学大学院に入学し、2020年に博士課程を修了。「首尾一貫感覚(別名:ストレス対処力)」に有用性を感じ、カウンセリングにとり入れている。
『「なんとかなる」と思えるレッスン』
著者:舟木彩乃
価格:1,650円(税込)
発行所:ディスカヴァー・トゥエンティワン
ストレスや不安につながりやすい“すべき思考”
のべ1万人以上の悩みに寄り添ってきたカウンセラーの舟木彩乃さん。「不安を抱えやすい人」や「ストレスを感じやすい人」には、共通した特徴があるとおっしゃいます。
舟木さん 「不安やストレスを抱えやすい人は、『思考の枠組みが広くない』という共通点があります。思考の枠組みとは、価値観や考え方、ものごとのとらえ方のことです。思考の枠組みが狭いと、自分の評価基準、価値基準に当てはまらない人や出来事に遭遇したとき、許容することができず、不安や違和感を抱きやすいのです」
舟木さん 「たとえば、メールやLINEの返信が『わかりました』『了解』だったとき、あなたはどんなふうに感じますか? さまざまな感じ方があると思いますが、もし『こんなにそっけない文面を送るなんて、きっと怒っているんだ』と結論づけてしまうようなら要注意。許容できる出来事の範囲が、少し狭くなってきているかもしれません」
“すべき思考”にとらわれている人の4つの口癖
許容できる範囲が狭くなる原因のひとつに「すべき思考」「レッテル貼り思考」があり、こうした思考のクセが、ストレスや不満を抱える要因になっていることもあると舟木さん。「自分の言動を振り返って、“すべき思考”につながりやすい言葉を多用していないか、振り返ってみるといいですよ」とおっしゃいます。
では、“すべき思考”に陥っていると、どのような言葉を口にしやすくなるのでしょうか。舟木さんから教えていただいた「4つの口癖」をシェアします。
【口癖1】「〜すべき」 【口癖2】「〜するべきじゃない」
「すべき思考」という言葉通りの、わかりやすい口癖ですね。自分が発している言葉に耳を傾けて、ふだんどれくらい使っているか振り返ってみましょう。
【口癖3】「みんな」 【口癖4】「絶対」
意外に感じるかもしれませんが、「みんな」「絶対」という言葉の裏には、“すべき思考”が隠れていることがあります。たとえば、「みんなしているから〜(○○するべき)」「絶対○○(するべき)でしょ」などのフレーズが代表的ですね。どちらもすべき思考につながりやすい言葉なので、ふだんよく口にしていないか振り返ってみましょう。
“すべき思考”をとりはらうと自由になれる
舟木さん 「自分がパートナーや同僚などに、こうした言葉を向けていないか、チェックしてみるのもおすすめです。というのも、“すべき思考”を他者に当てはめていると、対人関係で非常にストレスを感じやすくなってしまうのです。
たとえば、『家族を一番大切にするべき』という価値観を相手にも求めようとすると、パートナーが飲み会に行ったときに強い怒りをおぼえ、許せないと感じてしまうことがあります。自分の基準を相手に当てはめることで、相手がその通りに行動しないときに怒りを感じ、コミュニケーションがうまくいかなくなってしまうのです」
舟木さん 「“すべき思考”がなくなると、自分に対しても、相手に対しても自由になり、人間関係が楽になります。思考の枠組みを取り払うことはなかなか難しいことではありますが、『すべき思考をしている自分』に気がつくことが第一歩。自分が発している言葉に耳を傾けてみるといいですよ」
ストレスや不安の根本には、思考のクセが関係している場合があるのですね。自分がふだんどんな言葉をよく使っているのか、立ち止まって振り返ってみるのもいいかもしれませんね。