「わが子に褒めるところがない…」と思ってしまう親が今すぐできる“褒め方のコツ”

家族・人間関係

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2024.04.23

子どもを褒めて育てたいけれど、子どもが大きくなってくると「褒めるところがない!」なんて思う人もいるかもしれません。自らを「モンスター三つ子男子の母ちゃん」と呼び、三つ子の育児を経て現在は親子カウンセラー・言葉がけコーチとしてご活躍中の島谷留美さんに、最強の褒め方について教えていただきました。

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教えてくれたのは…島谷留美さん

島谷留美さん

親子カウンセラー、言葉がけコーチ。「ママの学校」主宰。やんちゃな男子3人を育てる壮絶な育児期間中に、アメリカ発祥の心理学「親業」を学び、2017年「親業」をベースに自らの子育て経験から編み出した独自の言葉がけプログラムを開発。著書は『モンスター三つ子男子の母ちゃんが見つけた 子どもに伝わる魔法の「ほめ方」「叱り方」』。

魔法の褒め方叱り方

『モンスター三つ子男子の母ちゃんが見つけた 子どもに伝わる魔法の「ほめ方」「叱り方」』
著者:島谷留美
定価:1,540円(税込)

やる気スイッチを入れるのは子ども自身

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――前回のお話で、三つ子のお子さんたちが中学受験に失敗したことで、勉強に意欲的に取り組むようになったと伺いました。勉強のやる気スイッチが入る瞬間って、本当にあるんですね。

大人になった息子たちに、「勉強のやる気スイッチってどこにあるの?」と聞いたことがあるんです。「そんなの簡単だよ。やりはじめることだよ」と言う子、「危機感と向上心だよ」と言う子など三つ子でも答えはさまざま。

「受験を控えていて志望校も決まっているのに勉強しないと悩んでいる親御さんがいる」と話したときに、長男が「勉強しないということは、その学校に行きたくないんだろう」と言うんです。「俺、医学部に入りたいと思ったから必死で勉強したんだよ。勉強をしないということは入りたくないからなんじゃないの」って。その通りだなと思いました。

――スイッチを入れるきっかけはいろいろだとしても、スイッチを入れるのは自分自身ということですか?

そうです。「親に言われたからやるなんておかしいだろ。俺は親に言われてやろうなんて思ったことは一度もない」と長男が言ったのを聞いて、私はすごくがっくり来たんですけどね(笑)。

――スイッチは自分自身で入れるとして、親ができる“スイッチが入りやすくなる環境作り”はありますか?

家の中を子どもが居心地の良い空間にすることです。みんな外ですごく頑張ってますよね。部活で先輩から怒鳴られたとか、レギュラー外されたとか。いろんなことに揉まれて帰ってきて、家でも「はい、今日の宿題はこれよ」なんて言われたら、「家でもこれかぁ……」となります。

家に帰ったらお母さんがポテトチップスを食べながらドラマを見ていて、「ちょっと長く昼寝しすぎちゃったから、夜ご飯今から作るわ」というくらい抜けていたほうが、子どもは居心地が良いと思うんです。自分が失敗したことや、できなかったことが話しやすいというか。

親業の正式名称は「親業訓練協会」⁉︎

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――家でもちゃんとしなくちゃいけない空気だと、息が詰まりますもんね。

お母さんたちは頑張りすぎているから、子どもからすると完璧すぎる人に見えちゃってる可能性がありますよね。お母さんから、「たまには休んじゃおうよ。ママも休むしさ」って言われたほうが気持ちが楽になると思うんです。 
あと、お母さんって子どもが帰ってきて鞄を置いた音だけで、なにかあったなってわかるんですよね。そういうアンテナがあると思うんです。

――なにかあったなと思ったときの正しい対応は?

悩んでいるな、困っているなと思ったら聞くに徹すること。子どもから何か話してくるかもしれないし、ため息をつくだけかもしれない。ため息をついたなら、 「ため息ついているね。何かあったかな?」  と聞くんです。そこで大事なのは、絶対にジャッジやアドバイスをしないこと。子どもに対していろいろ言いたくなるのはわかります。でも、本人が答えを出すのを待つんです。その時に答えが出なくても、きっとこの子は自分なりの答えを出すと信じて待ちます。

――なるほど! とは思うのですが、実践するのはかなり難しそうですよね。

私、親業って実は「親業訓練協会」っていう名前なんじゃないかと思っています。これは訓練なんです。私も慣れるまでたくさん苦労しましたが、その訓練を重ねてわが家ではお互いの距離感とルールができ上がりました。その結果、子どもたちは安心して悩みを打ち明けてくるし、それに対して自分で考えることができるようになりました。

お母さんの“うれしい”が最高の褒め言葉

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――すぐに変わるわけではないんですね。

今までの育児がガラッとは変わらないし、この学びを知ったからこそのストレスもあります。「もっと聞きたかったのに聞けなかったな」とか「いらない一言を発しちゃったな」と。子どもにジャッジしない、アドバイスしないがストレスになって溜まってしまうと、いつもは我慢してるんだから吐き出しちゃえ! という気持ちになって、「いつもママ我慢して怒らないようにしてるけどね!」と言ってしまうことも。でも、10回に1回は“子どもの話を聞く”ができたり、“うまく褒めることができたら子どもが変わってきた”という経験もしてきました。小さな成功体験を積み重ねていくしかないです。

――褒めるというのは、やはり効果的なんですね。褒め方のコツはありますか?

お子さんを褒めましょう! という話をすると、「うちの子、YouTubeばかり見ているんですけど、たくさん見て偉いねって言うんですか?」って聞くお母さんがいます。「うちの子に褒めるところなんて1つもありません」とかね。でもね、日常の当たり前の中に、子どもを褒めることってたくさんあるんです。

――当たり前のこととは、具体的に言うと?

例えば、子どもがサッカーの練習からすごくお腹を空かせて帰ってきて、用意していたご飯をペロリと食べたらうれしいですよね。そしたら、「作った甲斐があったな」って伝えるんです。これが褒め言葉なんですよ。「バクバク食べてる姿って清々しいよね」って、お母さん自身がうれしいと思ったことを言葉にすることが、褒めることになるんです。
何かができたから、何かをやってくれたから褒めるのではなくて、日常の当たり前を褒めてみてください。お母さんがうれしいことを伝えるのが、最強の褒め方なんです。

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島谷さんのお話を聞いていると、子育てに対してハードルを上げているのは、他の誰でもなく自分自身なのかもしれないという気持ちになりました。「お母さん、うれしい」ということを伝えるだけで子どもは褒められていると感じる。褒めることのハードルをあげていたのもまた自分自身。少し力を抜いて、感じたことをそのまま伝えるだけで、うまくいかないと思っていた子育てが良い方向に変わっていくかもしれません。

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著者

山田かほり

山田かほり

フリーライター歴10年。読んだ人の心にふわっとした空気が流れるような記事や情報をお届けできるよう心がけています。

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