子どもが自ら考える。「しなさい」と言わずに“子どもの気持ちをくむ聞き方”とは

家族・人間関係

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2024.04.21

子どもが困っているときや泣いているときに、「どうしたの?」「〜しなさい」など、子どもの話を遮って解決策を言おうとしていませんか? 親子カウンセラー・言葉がけコーチとしてご活躍中の島谷留美さんによると、親の聞き方次第で子どもは自分で考えて解決するそうです。今回は島谷さんに、子どもの気持ちをくむ聞き方について教えていただきました。

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教えてくれたのは…島谷留美さん

島谷留美さん

親子カウンセラー、言葉がけコーチ。「ママの学校」主宰。やんちゃな男子3人を育てる壮絶な育児期間中に、アメリカ発祥の心理学「親業」を学び、2017年「親業」をベースに自らの子育て経験から編み出した独自の言葉がけプログラムを開発。著書は『モンスター三つ子男子の母ちゃんが見つけた 子どもに伝わる魔法の「ほめ方」「叱り方」』。

魔法の褒め方叱り方

『モンスター三つ子男子の母ちゃんが見つけた 子どもに伝わる魔法の「ほめ方」「叱り方」』
著者:島谷留美
定価:1,540円(税込)

“聞く”に徹すると子どもは自分で解決する

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――島谷さんは「親業」を学んだことをきっかけに子育てが変化したとのことですが、どのような意識の変化があったのでしょうか。

子どもたちを信頼して見守ってみようという気持ちになりました。「あれしなさい、これしなさい」とガミガミ言うのはやめて、「これが心配なんだよね」とか「ママが困っちゃうんだよね」ということを伝えるようにしたんです。

登校前に、「今日、卵パック持って行かなくちゃいけない」と言われたら、「なんで前の日にちゃんと言わないの!」と以前は怒っていたんですけど、「いきなり言われても3つも用意できないからさ」とか、「470円の集金、3人分なんていきなり言われても小銭の用意がないからママ困っちゃうよ」とか。

――なるほど。ただ怒られると、怒られたことしか残らないけど、そういう言い方をされると「ママが困らないようにちゃんと伝えよう」という気持ちになりますね。

お友達とケンカして泣きながら帰ってくることってあるじゃないですか。以前は「男の子なんだから」とか、「自分で解決しなさい」と攻めながら解決方法を出させるような言い方ばかりをしていたんです。それもすごく変わりました。

――具体的にどのように会話が変化しましたか?

あるとき次男が泣きながら帰ってきました。理由は言わず泣いているだけ。子どもが悩んだり困ったりしているときは、聞くに徹するというルールがあるんです。本当は「どうしたの?」とか「誰に何をされたの?」とか色々聞きたいんですけど(笑)。ソファーで泣いている次男の背中を黙ってポンポンと。そしたら、まだ小学生だったので抱きついてきて「お兄ちゃんたちにボールとられた。僕の大事なボールなのに」と教えてくれたんです。

子どもが解決するのを“待つ”ことが親の役割

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――「どうしたの?」と聞くと、子どもってなぜか答えないですよね。黙って聞く姿勢を見せると子どもから話してくれるんですね。

子どもの気持ちをくむ聞き方があるので、「そうか。大事なボールとられちゃったんだね」と繰り返します。すると「そうだよ。僕が持ってたのに兄ちゃんたちがとった」と。「そうか、それは悲しかったね」と気持ちをくんであげると「そうなんだよ」と。

「この子はどうするんだろう」と思いながら見ていると、一通り泣き終わったら次男が「ママ、一緒にとり返しに行ってくれる?」と言うんです。「そうか。一緒にとり返してもらいたいんだね」「うん!」「わかった。じゃあ一緒に行こうか!」と言って、2人で公園に行きました。

――解決するための方法も自ら提案してくれるんですね。

そうなんです。子どもって信じて聞いてあげると、ちゃんと自分で解決するんです。公園に行くと、ボールを使っていたお兄ちゃんたちはもう飽きていて、「ちょっと借りただけだよ」と言ってボールを返してくれました。次男はそれをうれしそうに受け取って、「ママ、ついてきてくれてありがとう」と言いました。

――そこまで、親として意見をせずに寄り添うというのはなかなか難しいですよね。

それまでの私だったら、「男の子なんだから、お兄ちゃんからとり返してらっしゃい」とか、「新しいボールを買えばいいじゃない」と、子どもの意見を聞く前にいろいろと解決策を提案していました。でも「親業」を学んだことで、子どもが解決するのを待つということが親の役割なんだなと気づけました。いきなり完璧にはできないですが、1つずつ小さく小さく成功体験を積んで、子どもが答えを出していくことを見守っていきました。

親の「勉強しなさい」は子どもに届かない

――見守ることを意識して、明らかにお子さんたちが変わったと思った出来事はありますか?

わが家は、中学入試で全員落ちたんです。私の中で、ある程度自他分離できたなと思えたのがこのときです。受験をするのにあまり勉強をしていなくて、野球ができるチャレンジ校のみを受験したのですが見事に落ちました。でも、もしそれで受かっていたら人生なめちゃうよなぁと思っていたので、落ちたのは良い経験だったと思います。そこから中学に入った3人は、勉強に自主的に取り組むようになったんです。

――中学受験に失敗しても、今の息子さんたちを見るとその後すごく努力されたということですよね。どのように、勉強のやる気スイッチをいれたのですか?

全員落ちたことで、好きだった女の子にがっかりされたみたいで、それから勉強するようになったんですよね。「そこにスイッチがあったのかぁ!」と(笑)。親が言う「勉強しなさい」なんて全然パワーがなくて、親が入れられるスイッチって案外少ないんだなとそのとき思ったんです。

それよりも、子どもが困ったなとか不安だなって思ったときに吐き出せる場所を提供することが、親ができる唯一のことなのかもしれないって。その方法のひとつとして、“傾聴”というスキルがあるんだなと思いました。

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島谷さんが経験されたてきたことを聞いていると、自分自身の子育ての中にも「あるある」ということがたくさん出てきました。今回島谷さんがお話しされたことは、実は親にとってかなりハードルの高いことだったりします。でも、少しずつ成功体験を積み重ねていく、という島谷さんの言葉には、私にもできるかもしれないという希望を感じました。

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著者

山田かほり

山田かほり

フリーライター歴10年。読んだ人の心にふわっとした空気が流れるような記事や情報をお届けできるよう心がけています。

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