人と食事したくない「会食恐怖症」につながる“子どもの頃の体験”とは

家族・人間関係

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2024.05.15

臨床心理士・公認心理師のyukoです。飲み会や食事会など、人と食事を取るのを楽しみにしている方は多いと思います。一方、誰かに自分の食べている姿を見られたくない、人と食事を共にしたくないと感じる「会食恐怖症」も子どもから大人の間で広まっています。どのような経験が会食恐怖と繋がるのか、その対応についても考えていきます。

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会食恐怖症とは

会食恐怖症とは、人前で食事をすることや、レストランなどで外食することに強い恐怖や不安感を覚えること。
みんなで食事を取らないといけない場面になると腹痛や吐き気など、身体症状を呈する子もいます。

苦しむ子ども出典:stock.adobe.com

成長して大人になっても、幼少期の嫌な経験が頭から離れず、飲み会や食事会に人一倍ストレスを感じる方は多いよう。
どのような経験が会食恐怖に繋がりやすいのか、会食恐怖への対応について考えていきます。

食事中の苦痛な経験は記憶に残りやすい

会食恐怖との関連において、給食の完食指導がひとつの問題となっています。
周りが食べ終わっていても一人でずっと残された、残食ゼロをクラスで競うなどの指導方針がストレスやプレッシャーになる子は多いよう。

給食出典:stock.adobe.com

そして当時の苦痛経験が忘れられず、大人になっても複数で食事をすることに不安を感じ続けるんですね。

「食事の時間=安心できない、怒られたり恥ずかしい気持ちになる時間」となると、年月が過ぎても漠然とした恐怖心が残ってしまうんです。

また、食事中に嘔吐してしまった経験や他人の嘔吐を見た経験も会食恐怖に関連します。
不快な感覚や周囲からの視線、いたたまれなさが食事と結びつき、人目に触れながら食べるのが嫌になるんです。

家庭内でも、食事中に家族で喧嘩する機会が多かったり、嫌いなものを食べ終わるまで食事が終われないなど、本人にとって不快な体験と食事が結びつくと食べることそのものがどんどん嫌いになっていきます。 悪いイメージと食事の結びつきが、会食恐怖に関連しているといえるでしょう。

コロナ渦特有の難しさも

学校生活において、マスクの時間が長かったことにより、マスクを外した姿を見られるのに抵抗がある子もまだまだ多いです。また、「食べる姿を見られるのが特にいや」「話しながら食べるのが難しい」と感じている子も。

黙食に慣れていたり、一人で前を向いて食べるほうがよかったと感じ、元のように和気あいあいと食べるのが苦痛に思う子も少なくないんです。

思春期の多感な時期をマスクに守られていたため、世間でマスクの必要性がなくなってもスムーズに外しにくいんですね。

マスクをする学生出典:stock.adobe.com

「みんなとご飯を食べたくない」と言われたら

原因を突き止めれば解決するわけではありませんが、まずは「漠然とした怖さ」を「意味のある不安」に変えるのが第一。どんなところに不安を感じるのか、みんなとご飯を食べるときの何が嫌なのかを紐解いていくのが大切です。

「嫌」を言葉にできたら肯定的に褒め、その後どうすればよいかを一緒に考えていきます。

  • 給食の時間が嫌で学校に行きたくないくらいの子であれば、給食の時間のみ別室で対応してもらう。
  • 話しながら食べるのが難しい子は、先生にフォローを入れてもらいながら、食べられそうな物だけ食べさせてもらう。
  • 競争や「お残し0」がプレッシャーに感じる子は、親から先生に伝えて配慮してもらう。

家族との食事、親しい親戚との食事、知り合いがいない場所での外食など、スモールステップで人と食事できる場面を増やしていくのもよいでしょう。

食事をする子ども出典:stock.adobe.com

極端な話、大人になってからは一人で食事をし続けることは可能です。

ただ、社会的な付き合いや親密な人と食事を通して関係を築く場面にも多く遭遇するでしょう。その機会を活かせるようになれば、生きる上での選択肢はさらに広がります。

まずは、食べるのが苦痛じゃなくなる工夫を、そのうえで、食事は人生を豊かにするものだと実感できる経験を積んでいけるとよいでしょう

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著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。

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