教えてくれたのは……鶴町宗大(つるまちむねひろ)先生
医学博士、皮膚科専門医。医療法人 鶴町会 理事。獨協医科大学医学部卒業後、順天堂大学浦安病院 皮膚科教室にて研鑽を積み皮膚科専門医を取得。現在、つくば・土浦鶴町皮膚科クリニックの副院長として、皮膚科・美容皮膚科を通じて、健康で美しい肌の実現を目指して、肌の悩みをトータルにサポートできるよう診療を行っている。
「手足口病」の特徴
初期症状は?
「手足口病」とは、手足や口腔内などに水疱を伴う複数の発疹が出るウイルス感染症です。1~5才頃の子どもを中心に、主に夏に流行します。
潜伏期間は2~5日であり、原因ウイルスとしてはコクサッキーウイルスやエンテロウイルスなどによります。
多くの場合は、初期症状として口腔内やのどの痛みを認め、それに伴い水分摂取量の低下や食欲不振などを伴うこともあります。
症状の経過は?
初期症状のあとには、口の中、手のひら、足底、膝関節、殿部などに複数の水疱を伴う発疹が生じ、これらは痛みを有することもあります。
発熱に関しては、3分の1程度にみられますが、38℃以下のことが多いです。
また多くの場合、3~7日のうちに症状が改善します。
しかし、まれに髄膜炎、小脳失調症、脳炎といった中枢神経系に重篤な合併症を伴うことがありますので注意が必要です。また、コクサッキーウイルスA6による手足口病では、治癒後に一時的に手足の爪の脱落を伴う症例も報告されています。
治療方法は?
手足口病に特別な治療方法はありません。基本的には軽い症状の病気のため、水分補給や解熱鎮痛剤内服などの対処療法を行います。
しかし、まれに重症化することもありますので異変を感じたらすぐに医療機関を受診してください。
大人が「手足口病」に感染したら……
大人が手足口病に感染した際には、症状が子どもより強く出る場合があります。
具体的には、発疹による痛みがあげられ、歩く際には強い痛みを伴うこともあります。
また、発熱、全身の倦怠感、頭痛、関節痛などの症状が強く出ることがあります。
感染予防のための対策
まず、手足口病の原因ウイルスに対する予防接種はありません。
手足口病の感染経路としては、咳やくしゃみなどの際に出る飛沫による「飛沫感染」に加えて、鼻水や唾液がついた遊具などに手が触れることで感染する「接触感染」が主です。
また、症状が改善した後も、便の中から2〜4週間ほどウイルスが排出されますので、オムツ交換などの際に手指を介して感染が広がる可能性があるので注意が必要です。
そのため、マスクによる飛沫感染対策、念入りな手洗いや、手指消毒による接触感染対策及び適切な排泄物の処理が重要となります。
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「手足口病」には有効なワクチンや予防薬はないため、「飛沫感染」「接触感染」をふせぐためにはマスク、十分な手洗い、タオルの共用はしないなど、日頃からのしっかりとした感染対策が大切なんですね。まれに重篤な合併症を伴うことがあるとのことなので、気になる症状があったら医療機関を受診しましょう。