教えてくれたのは……菅原洋平さん
作業療法士。ユークロニア株式会社代表。アクティブスリープ指導士養成講座主宰。ビジネスパーソンのメンタルケアを専門に行うベスリクリニック(東京都千代田区)で、薬に頼らない睡眠外来を担当するかたわら、生体リズムや脳の仕組みを活用した企業研修を全国で行う。
『「めんどくさい」が消える脳の使い方』
著者:菅原 洋平
価格:1,650円(税込)
発行:ディスカヴァ―・トゥエンティワン
職場の後輩に話が伝わらないのは「思考のタイプ」が違うからかも
職場に後輩がいる方も多いと思いますが、指導をしている中で「なんだか話が伝わっていないな……」と感じることはありませんか?
話が伝わりくいのは、もしかすると「思考のタイプ」が違うことが原因のひとつかもしれません。
菅原さんによると、相手の脳と自分の脳の情報処理の仕方が違うことで、コミュニケーション上の「めんどくさい」が起こってしまうのだとか。この違いを知って上手に活用すると、コミュニケーションをもっとスムーズにとれるようになるとのこと。
「同時系」と「継次系」どちらのタイプ?
私たちの脳の情報処理の仕方は、大きくわけて「同時系」と「継次(けいじ)系」の2種類あるそうです。「わかってもらえなくて、めんどくさい」を減らすためには、相手がどちらのタイプなのかを知ることも大切なのだと菅原さんは言います。
同時系の人の特徴
まずは情報の全体を捉え、その後に部分同士を関連づけて理解するのが「同時系」です。行動のイメージが浮かびやすく、「それを実現するためにはどうするか」という考え方をもっています。
同時系の人に伝える際には、「結論を先に話す」や「例えを用いて説明する」方法が理解されやすいとのこと。一方で、経緯を辿って話したり、専門用語を使ったりすると伝わりにくくなってしまいます。
継次系の人の特徴
マニュアルなどに沿って、情報をひとつずつ順序立てて理解するのが「継次系」です。前後の文脈や過去の事例に基づいた考え方をもっています。
継次系の人に伝える際には「順番通りに話す」や「因果関係に基づいて説明する」方法が理解されやすいとのこと。要点のみを伝えたり、余談をはさんだりすると伝わりにくくなってしまうようです。
ここからは、具体例をもとにタイプ別の対処法をご紹介します。みなさんのまわりに当てはまるタイプの後輩がいれば、ぜひ参考にしてみてくださいね。
例1.「根拠のない思いつきばかり」
「根拠のない思いつきばかり」といった特徴をもっているのは、同時系です。とにかくすぐに行動に移したくなるタイプのため、端から見ていると自分の行動を振り返れていないと感じることもあるかもしれません。
同時系は、情報のエビデンス(根拠)を問われるのが苦手。アイデアをすぐに実現させたいので、根拠を裏付ける作業が得意ではない傾向があるのだそうです。そのため、「思いつきでものを言わないように」「その根拠は?」と切り返してしまうと、「自分は評価されていない」「仕事がつまらない」と感じさせてしまうことも。
同時系の後輩のやる気を引き出すには
日々の仕事を「数値化する」ように促すのが効果的!
体調や仕事のパフォーマンスを1~5点で数値化してもらう、メールチェックにかかる所要時間を計って作業時間を把握してもらうなど、数値化することで自分の行動を振り返る思考を身につけてもらいましょう。
何かのアイデアを提案する際に「その方が面白いから」と説明するより、「5回中4回面白かった」などと説明すると1つの根拠となります。このように経験を数値化できるように促すことで、成長につながります。
例2.「もっと要領よく進めてほしい」
やることが多くて混乱している後輩に対して、「もっと要領よく進めてほしい」と思うこともあるのではないでしょうか。作業の見通しが立たないのに先の課題を見過ぎて混乱しやすいのが、継次系です。
継次系は、情報のハイライト(焦点化)を求められるのが苦手。そのため、「要領よくできないの?」「見ればわかるでしょ」と言ってしまうと、「自分は評価されていない」「やらなければいけないことが多すぎる」と感じさせてしまうことも。
継次系の後輩のやる気を引き出すには
鍵になる作業の発見を促すのが効果的!
情報を選別することで理解しやすい継次系には、一連の作業内容を書き出して「これを完了させればとりあえず大丈夫」といった鍵になる作業を見つけてもらいましょう。
やるべきことを1つ選んで完了したら次の課題を見るように促すと、全部が完璧ではなくても仕事が進むことに気づいてもらいやすくなります。
お互いが快適に働くために「伝え方」を見直してみよう
自分のスタイルに固執して「伝わらないから」とあきらめてしまうのではなく、相手によって伝え方や指導の仕方を変えてみると、コミュニケーションがスムーズになるかもしれません。良好な関係を築いてお互いが快適に働けるように、ぜひ参考にしてみてくださいね。