教えてくれたのは……小林 弘幸先生
順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上の指導に携わる。『医者が考案した「長生きみそ汁」』(アスコム)、『整える習慣』(日経BP日本経済新聞出版本部)、『捨てる勇気100』(宝島社)など、著書・監修書多数。
『腸から生まれ変わるカラダ』
著者:小林 弘幸
価格:1,540円(税込)
発行:宝島社
全身のトラブルの原因になりうる「ゾンビ腸」
バランスの悪い食生活やストレスなどのさまざまな要素によって腸内フローラのバランスが乱れ、腸のバリア機能が衰えた状態のことを、小林先生は「ゾンビ腸」と命名しています。
ゾンビ腸になると、悪玉菌が増えて本来排出されるべき老廃物が腐敗し、毒素が発生することに。この毒素が血管を通じて全身に広がってしまうことで、多くの健康問題を引き起こす可能性があるそうなのです。
「善玉菌が好む食べ物」を増やすことが腸内環境を改善するカギ
小林先生によると、ゾンビ腸の改善には「食事」が重要なポイントのひとつになるとのこと。食事によるゾンビ腸対策は、腸内細菌の「善玉菌」が好む食べ物を増やし、悪玉菌が好む食べ物を減らすことが基本になるのだそうです。
腸の働きを左右する腸内細菌は大きくわけて3種類にわけられ、それぞれ働きが異なります。
- 「善玉菌」……腸のぜん動運動を促して、食べ物の消化・吸収を促進。老廃物を分解する。
- 「悪玉菌」……増えると発がん性物質や病気・老化のもととなる毒素をつくりだし、腸内環境を悪化させる。
- 「日和見菌」……普段は何もせず、腸内環境によって、善玉菌、悪玉菌の優勢なほうに加勢する。
腸内細菌のバランスは、善玉菌2割、悪玉菌1割、日和見菌7割のバランスが理想的。このベストなバランスを維持できるように、食事内容を意識するとよいのだそうですよ!
“腸のゾンビ化”を改善する食事について、小林先生が挙げられているポイントの一部をピックアップしてご紹介します。
1.「善玉菌が好む食品」を幅広く摂る
腸内細菌は、その種類ごとに食べ物の好みが異なるため、善玉菌が好む食品をなるべく幅広く食べることが大切です。肉類、プロテインの過剰摂取などによって吸収されなかったたんぱく質は悪玉菌のエサとなるため、摂りすぎには注意しましょう。
腸内環境を整える「プロバイオティクス」と、それをパワーアップさせる「プレバイオティクス」を組み合わせて、毎日の食事でどちらも摂ることがより効果的な食べ方です。
プロバイオティクスの代表例
もともと腸内にいた善玉菌とともに腸内環境を整えてくれる善玉菌を含む食品のこと。最初から体内にいた善玉菌と異なり、便と一緒に排泄されるため、定期的に摂取することが必要です。
- 乳酸菌……みそ、キムチ、チーズ、発酵バター、乳酸菌飲料など
- 納豆菌……納豆
- 酪酸菌……ぬか漬け
- 麴菌……塩麹、甘酒
- ビフィズス菌……ヨーグルト(ビフィズス菌名の記載があるもの)
プレバイオティクスの代表例
オリゴ糖や水溶性食物繊維を含み、善玉菌のエサとなって善玉菌を活性化する食品のこと。こちらも、毎日の摂取で大腸の環境を整えられます。
- レジスタントスターチ……冷えた炭水化物(おにぎり、ポテトサラダ、あんこを使った和菓子など)、未精製穀物(玄米、ライ麦など)
- 糖アルコール……メロン、梨、きのこ類、ワイン、みそ、はちみつ、さとうきび、プルーンなど
- 水溶性食物繊維……海藻類、大麦、柑橘類、こんにゃく、ネバネバ系食品(オクラ、なめこ、めかぶ)など
- オリゴ糖……タマネギ、アスパラガス、ニンニク、バナナ、はちみつ、大豆製品など
2.抗酸化食品を摂る
ゾンビ腸対策では、「抗酸化成分」を意識して摂りましょう。
鉄が酸化するとサビてしまうのと同じように、人間のカラダも活性酸素によって酸化します。活性酸素が過剰になると、カラダの老化や疲労、がんや糖尿病などの病気のリスクを引き起こす可能性があるため、活性酸素の除去作用がある抗酸化食品を食べることが大切です。
毎日、抗酸化成分を摂取することで、ゾンビ腸の大きな原因である腸内酸化ストレスが軽減されます。
抗酸化食品の代表例
- 赤い野菜や果物……トマト、ニンジン、リンゴ、スイカなど
- 緑黄色野菜……ブロッコリー、ホウレンソウ、小松菜、ミカンなど
- 白色野菜……玉ねぎ、にんにく、大豆、白菜など
- ポリフェノールを多く含む食品……ベリー類、ナッツ類、アボカド、赤ワイン、コーヒー、緑茶、カカオなど
- イミダペプチドを含むもの……鶏のムネ肉やササミ
3.朝食を大事にする
一日3食のうちで、ゾンビ腸対策として最も重要なのが朝食です。一日のスタートとなる朝食には、「副交感神経の働きを高める」「全身の血流を良くする」「気持ちに余裕が生まれる」といった、3つの大きな効果があるためです。
バナナやコーヒーでゾンビ腸対策
朝はできるだけしっかりと食べてカラダを活性化させ、午前中のパフォーマンスをアップしましょう。食習慣を変えるのが難しい場合には、寝起きの水を一杯飲んだ後にバナナを1本食べるだけでも、腸内環境を整える効果が期待できます。
寝起きの水以外は、できるだけ冷たい飲み物を摂らないことも大切です。腸の冷え対策には、一杯のホットコーヒーがおすすめ。全身の血流の改善や腸を温める効果があるため、ゾンビ腸対策に効果的です。
腸内環境のために食品の選び方を意識しよう
善玉菌が好む食品のひとつとして挙げられた「ヨーグルト」。腸の健康を保つために、ヨーグルトを食べる習慣がある方も多いと思います。小林先生によると、ヨーグルトを選ぶ際には、注目すべきポイントがあるのだそうですよ。
次回の記事では「ゾンビ腸を改善するヨーグルトの選び方と食べ方」について、ご紹介します。