「同情」と「共感」の違いって?子育てで必要な「共感力」について

家族・人間関係

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2024.11.20

臨床心理士・公認心理師のyukoです。会社でも子育てでも共感が大切と言われることが増えてきました。しかし共感といっても「うんうん、わかるよ」と否定せずに聞くことだけではありません。本当の意味での共感、子どもの気持ちに寄り添うことについて考えてみます。

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親身に聞いたつもりなのに「わかってない」と言われてしまった

クラスの友人関係について「Aちゃんはこう思ってるみたいなんだけど、でも私はこうしたらいいんじゃないかって……」と悩みながら話す中1の娘。否定せず共感的に聞こうと思い「そうだよね、うんうん、わかるよ」と相槌を打ち「じゃあこうしたら?」とアドバイスをした。すると「ママは何もわかってない」と言われてしまった。共感的に聞いていたつもりなのに、なぜそう言われてしまったのだろう。

言い争う親子出典:stock.adobe.com

ここ数年、「共感力」という言葉が広まり、本やネットでも取り上げられる機会が増えてきました。
「子どもに共感しよう」「育児には共感が必要」ともいわれていますが、具体的にはどのような関わりが共感といえるのでしょうか。

子どもにとって必要な親の共感について考えてみます。

「同情」と「共感」の違い

相手を思いやる概念として、「同情」は「共感」と混在しやすい言葉です。
共感しているつもりが同情となっており、相手の気持ちを本質的に捉えられていないことは人間関係においてしばしば起こりうるもの。

「同情」とは、「他人の気持ちや苦悩を自分のことのように親身になって考えること」。
相手をかわいそうだなと思ったり、自分に置き換えて辛さを感じたりする気持ちや態度です。

一方で共感とは、「他人の意見や感情などにその通りだと感じること」。
自分だったら~という気持ちを交えず、相手の意見を聞いて「なるほど、そうだよね」と思う気持ちや態度といえるでしょう。

リビングで話す親子出典:stock.adobe.com

日常生活の中では意外と、共感よりも同情の方が身近にあるかもしれません。
例えば、こんなエピソードを聞いたときどんな気持ちや考えが浮かぶでしょうか。

親が見ていない隙に子どもが電気ケトルを倒してしまい火傷をしてしまった。大事には至らなかったものの、子どもは全治1週間のけがを負った。

多くの人は「子どもがかわいそう」「自分も気をつけなければ」など同情の気持ちを寄せるでしょう。
一方共感的に考えると「子どもはどんな理由から電気ケトルに近づいたのだろう、どんな痛みを感じたのかな」「この親御さんは子どもがけがを負いどんな気持ちになっただろう」と思いを馳せることになるでしょう。

一般的な生活の中では、「自分だったら~」と感じる気持ちの方が思い浮かびやすく、また自分の教訓や学びとしてメリットにもなるので同情の方が身近に感じやすいんですね。

共感とは「相手の靴を借りてみること」

子どもの話を聞く中では「同情」と「共感」のどちらも使い分けたほうがよいでしょう。
しかし、「共感」は説明を聞いてもどうすればよいのかいまいちピンときませんよね。

心理学のひとつの考え方として、「共感」は「相手の靴を借りてみること」という表現があります。

「同情」は、自分の視点から「自分だったら~」と考えます。
一方「共感」をするときは、「相手の立場に立ったら~」と想像を働かせてみます。
そのときに、相手の靴を借りた気持ちになって、履き心地を味わったり相手が立っている場所から見る風景を見ようと試みると、寄り添った関わりに近づけるんですね。

話す親子出典:stock.adobe.com

「自分が子どもの立場だったら、子どもの性格だったら、こう感じるのではないか」と想像して声をかけてみると共感的な支えになるでしょう。

話の聞き方にもレパートリーが必要

子どもは今、親にどのような返答を求めているのか、わからないときがあるのは当然です。

男女の会話ではよく「あなたは私の気持ちがわかっていない」などとズレが生じることがありますよね。
親子の間でも同様で、共感的に話を聞いてほしいときと、的確なアドバイスをほしいときの両方があるもの。

今はただ話を聞いてほしい様子のときは、子どもの視点に立って聞いてあげられるとよいでしょう。
アドバイスや助言がほしい様子のときは、「自分が子どもの立場だったらどうするかな?」「自分は今までどうしてきたかな?」と考えてあげられると支えとなるでしょう。

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どう答えたらよいかわからないときは、何を求めているか率直に子どもに尋ねてみるのもおすすめです。
親子でたくさん会話を重ね、お互いに心地よい時間を過ごしていけるとよいですよね。

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著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。

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