教えてくれたのは……樋口 直彦(ひぐち なおひこ)先生
医療法人藍整会 なか整形外科 理事長、医療法人藍整会 なか整形外科 京都西院リハビリテーションクリニック 院長、日本整形外科学会認定専門医。Vリーグ「サントリーサンバース」チームドクター。骨折治療をはじめ関節外科、スポーツ整形外科を専門に治療。スポーツ整形外科医として、患者さんの個々のケース、タイミングを共に考え最善の治療を行なっている。
「変形性股関節症」の痛みを和らげるために意識したいこと
前回の記事では「変形性股関節症の症状や原因」について伺いました。もし診断を受けた場合、痛みを和らげるために日常生活でできることはあるのでしょうか。
樋口先生:変形性股関節症の症状を和らげるためには、股関節周囲の筋肉を強化するストレッチや軽い運動が効果的です。特に股関節の柔軟性を保つストレッチや、太ももの筋肉を鍛えるスクワットなどがおすすめです。
また、正しい姿勢を意識し、体に負担をかけないように心がけることも重要です。さらに、軟骨の健康維持には、ビタミンDやカルシウム、コラーゲンを含む食品を摂取することが推奨されます。体重管理も大切で、過度な体重は関節への負担を増加させるため、適切な食生活と運動を組み合わせることが有効です。
変形性股関節症にならないために、40代女性ができる「4つの予防策」
40代を過ぎると股関節への負担が増え、変形性股関節症のリスクが高まるのだと、樋口先生は言います。「変形性股関節症」にならないために、40代女性が気をつけるべき4つのことを教えていただきました。
1.自分の股関節の状態を知る
樋口先生:日常の姿勢や生活習慣に加え、まずは自分の股関節の状態を知っておくことが大切です。特に「臼蓋形成不全」と呼ばれる、股関節の受け皿となる臼蓋(寛骨臼)が浅い状態があると、関節が支えられず、変形性股関節症の発症リスクが増加します。
臼蓋形成不全の有無を確認するためには、レントゲン撮影を受けるとよいでしょう。リスクがあると分かれば、股関節の負担を軽減するための対策を早期に取ることが可能です。
2.運動やストレッチを行う
樋口先生:股関節まわりの筋肉を鍛える運動やストレッチが効果的です。例えば、太ももやお尻の筋肉を鍛えることで股関節が安定し、負担を軽くすることができます。
3.正しい姿勢を保つ
樋口先生:正しい姿勢を保つことも重要で、座るときには深く腰を掛け、歩くときには骨盤を立てるように意識するとよいでしょう。
4.体重管理を行う
樋口先生:痛みを和らげる対処法と重複しますが、体重管理を行うことも予防に役立ちます。過度な体重は股関節に負担をかけるため、適切な食生活と運動で健康的な体重を維持しましょう。股関節を大切にすることで、将来の不調を防ぎ、日々の生活を快適に保つことができます。
ほかに考えられる疾患の場合も。痛みが続くときには専門医に相談を
「変形性股関節症」以外にも、股関節の痛みで考えられる疾患があるとのこと。痛みが続く場合には、早めに専門医の診断を受けることが大切なのだそうです。
樋口先生:股関節の痛みを引き起こす一因として、「大腿骨頭壊死」が挙げられます。これは、大腿骨の先端(骨頭)への血流が途絶えて壊死し、痛みや動きの制限が生じる疾患です。過度のアルコール摂取やステロイド薬の使用がリスク要因とされ、早期発見が進行を抑えるポイントです。
また、「関節リウマチ」や「強直性脊椎炎」といった自己免疫疾患も、股関節に痛みを引き起こすことがあります。さらに、スポーツや激しい動作で生じる「股関節唇損傷」も原因のひとつになり、関節を動かすと痛みが増すのが特徴です。痛みが続く場合は、早めに専門医の診断を受けましょう。