MD PRODUCT、その歩み

会場は、MD PRODUCTの原点をうかがわせる白い空間。
主役は紙、テーマは余白だ。

もともとは「ミドリ」ブランドのノートシリーズ「MD PAPER PRODUCTS」のノートとして発売された『MDノート』。当時の市場にはなかった表紙のないシンプルすぎるデザインや価格設定(本体価格600円)に対して、社内外からは厳しい声も多かったという。それでも少しずつ支持を集め、15年のあいだにMDノートは「国内外で書く人の定番」として知られる存在になった。
「伝わらなかった思い」
転機となったのは、2023年に行われた15周年イベント。
来場者と直接言葉を交わすなかで、スタッフはひとつの気づきを得た。
想像以上に多くのユーザーに支えられている一方で、作り手の思いや背景は、十分に伝わっていなかったのではないか……。名称ですら正確には知られず、「ミドリのノート」として親しまれている現実があった。
ユーザーの熱量は高い。しかし、MDが大切にしてきた「紙」や「書くこと」へのこだわり、その背景にある思いまでは、充分に届いてはいなかった。
そこで始まったのが、「ミドリ」から独立した新たなブランド化のプロジェクト。2024年1月から、外部の協力も得ながら、改めて「MDとは何か」を問い直す作業が続けられた。
ユーザーが導いた「余白」という概念
大きなヒントになったのは、韓国で行われたオフィシャルイベント。
「あなたにとってMDノートとは?」という問いに対してユーザーから返ってきた答えは「心の逃避所」「私の伴侶」「丈夫な柱」といった言葉だった。どれも、ノートを単なる記録の道具ではなく、自分と向き合うための存在として捉えていることを示していた。

この気づきから導かれたのが、「余白は、可能性。」というコンセプトだ。余白とは、何も書かれていない空白ではなく、自分のためにあえて残しておく時間や心の余裕。その余白があるからこそ、人は立ち止まり、次の一歩を考えることができる。
見える、香る……余白時間

発表会の会場では、そのコンセプトが空間全体で表現されていた。
さまざまなクリエイターのデスクを再現した展示物が特に目を引いた。
天井から吊るされたオブジェや円形に配置された什器は、書くことを抽象化しながら、会場全体を俯瞰して自然と歩き回りたくなる構成。

新プロダクトとして紹介された「MD香時計」も印象的だった。1周で約1時間という円形のお香は、時計を見ずに時間を感じるためのもの。香りは控えめで、デスクまわりだけをそっと包む設計。書く、考える、ただぼんやりする——そんな時間を演出するツールとして提案されていた。
特に紙の原料である木に因んだ「Forest」という香りは、自分と向き合う時間に深みを与えてくれる。お香の残り具合で時間が「見える」という仕掛けも心地いい。
書くを愉しむから、「余白」を育むブランドへ

ノートのプロダクト発表会の域を越えて、このイベントは「書く時間は、あなたにとってどんな時間ですか?」という問いをユーザーに投げかけている。
忙しい毎日のなかで、余白を持つことは簡単ではない。それでも、ノートを開く、お香に火をつける、といったアクションが自分に立ち戻るきっかけになるかもしれない、MD PRODUCTが描く新しいフェーズは、そんな静かな可能性を感じさせるものだった。




