仏教に興味を持ったきっかけ
露の団姫さんは、天台宗僧侶の落語家さん。もともと仏教に興味があり親しんでいたところ、初代・露の五郎兵衛が僧侶であったこと、説法をおもしろおかしく話したことが落語の起源と知り、高校卒業後に初代・露の五郎兵衛の流れを組む露の団四郎師匠のところへ入門されました。現在ではご自身のお寺、道心寺で「3」の付く日に縁日寄席を開かれています。
仏教に興味を持ったきっかけについてお聞きすると「私は父が45歳の時に生まれたんですが、学校行事などでふと「ウチのお父さんはみんなのお父さんより年上なんだなぁ」と思ったことがきっかけです。」
そのことから「みんなのお父さんより早く死んでしまうの?」「死ぬってどういうこと?」「死んだらどうなるの?」「焼かれている最中に目が覚めたら!?」とか、どんどん死について考えてしまい、仏教に答えを求めて本を読み始めたのだそうです。
根拠のない道徳より、お釈迦さまの言葉
子育ての話を聞いている時に団姫さんが仰った言葉が印象的でした。
「子どもの頃、どうも納得できなかったのが道徳の授業なんです。おもちゃや本を友だちが「貸して」と言ったら、自分が使っていても「どうぞ」と渡しなさい、と教えられる。え?どうして友だちが優先?私も使ってるのに?使い始めたはかりなのに?と疑問だらけでした。そして次に「誰がこんなこと言ってるの?」と思ったんです。自分よりも他人の思いを大切にすることが正しいのか…と、理解できないことが時々ありました。」
道徳の教科書にある言葉は「誰の言葉か」が不明瞭なことに違和感を覚えた団姫さん。「宗教だと「聖書に書いてあります。」とか、「お釈迦さまの教えです。」とハッキリしています。そんなところが心にすっと入った理由かもしれません。因みに夫はクリスチャンなんですよ(笑)。」とのこと。因みにお子さんはバイリンガルのように双方の教えの良いところを理解されているのだとか。
団姫さんがsaita読者の悩みに答えます
友だちができません。
どんな友だちが欲しいのかを自分に対して問いただし、あきらかにしてみましょう。例えば中学生の頃を例にしてみると、休み時間に一緒にいるだけのような関係ならいらないかもしれません。一緒に受験勉強をするような友だちが必要だと考えましょう。仏教には「愚か者を道連れにするな」という教えがあります。つるんでいるだけではなく、自分に意見をしてくれたり、心配してくれたりするのが友だちです。ママ友や同僚と愚痴や悪口を言ってランチをするような縁はほどほどにして、趣味の講座やボランティアなどで同じ思いを持つ人と繋れるように、新たな輪を探してみましょう。
結婚を巡る価値観が親と合いません。
親が亡くなった後もあなたは生きなくてはなりません。まず自分自身が「親にすべてを分かってもらおう」と思っているところが、この悩みの根源です。あなたはパートナーと一緒に生きて死んでいくんです。両親に祝福してもらえなくてもパートナーと幸せになる可能性は充分あります。悩みにとらわれず、大切な選択は必ず自分でしましょう。自分の足で人生を歩むには何が必要かを考えてくださいね。そして、あなたが幸せな結婚生活を送っていれば、親も自然と分かってくれます。どんなことでも「分かってもらいたい」が先行しすぎると、物事が空回りしてしまうのです。
わが子をついよその子と比べてしまう。
比べてはいけない、と思っているところが、まず「とらわれ」なのだと気づきましょう。人間だれしも比べてしまうものです。しかし、比べているのは、結局は親のエゴだったり、都合です。
「わが子が困っているかどうか」を軸に考えれば、よそのお子さんの優れたところを素直に受け入れやすくなりますし、わが子のどうしてもうまくいかない部分も上手にあきらめることができます。そして、上手にあきらめる、つまり手放すものが増えれば、やるべきことがあきらかになります。子どもには「もっと頑張れ」という言い方ではなく、具体的な目標を相談したり、そのための方法や手段、習慣を手短に伝えるようにして、自分の中に溜めないようにしてみましょう。誰かと比べられつつ「もっと頑張れ」と言われるのは、誰しも嫌なものですよね。逆にやる気をなくす子の方が多いのではないかと思います。
心の病を抱えた友人に、どう言葉をかけていいのか。
一般に「がんばれ」とは言ってはいけない、と言われますが、ではどうすれば?ということですね。まずは「ここまで頑張ってこられましたね。」と、病気になるまでと、そこから今まで抜け出そうと努力されていることを認めて差し上げてください。心の病を持つ方が自立をするには相談相手、頼れる人をたくさん作ることが大切です。なので、あなた自身が相手に手を差し伸べるというよりも「寄り添う」スタンスでいてください。
とらわれず、うけいれる、あきらかにする
生きていると悩みや苦しみに襲われることもありますが「とらわれず、うけいれる、あきらかにする」を上手に使いこなして、穏やかな日々が送れますように。
一隅を照らす(いちぐうをてらす)
天台宗開祖・伝教大師最澄さまの「あなたが、あなたの置かれている場所や立場で光れば、あなたのお隣も光ります。小さな光が集まって、町や社会を日本を、そして世界を照らしていきましょう」という教えが「一隅を照らす」という言葉です。
あなたには、あなたのできること、好きなこと、続けられることがあるはずです。そのことで家族や周りの人たちや社会を明るく照らしてあげましょう。
お話を伺ったのは…露の団姫(つゆのまるこ)さん
1986年生まれ。兵庫県尼崎市在住。
落語の創始者、初代・露の五郎兵衛が僧侶であり、説法をおもしろおかしく話したことが落語の起源と知り、高校卒業を機に初代・露の五郎兵衛の流れを組む露の団四郎へ入門。
2011年、天台宗で得度。2012年、比叡山行院で四度加行を受け正式な天台僧となる。
年間250席以上の高座と仏教のPRを両立し全国を奔走する異色の落語家。