小学校のクラス、3~4人が支援を必要としている現状
2022年に文部科学省が公表した「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」では、小学校に通うおよそ10%の子どもが「学習面もしくは行動面で著しい困難を示す」と明らかにされています。
つまり、35人学級であれば、3~4人の子どもが支援を必要としているのが現状。
このような現状の中、発達障害と診断される子どもの数は年々増加傾向に。
しかし一方で、児童精神科不足が問題となっており、初診を受けるまで1年以上かかる、初診を引き受ける余裕がない病院も増えています。
発達外来を掲げていてもマンパワーが不足しており、受診までに相当時間がかかるところも多いんですね。
病院を頼れないとき、どのように気になる子どもに対応していけばよいのかを考えていきます。
焦っている中で、はまりやすい落とし穴
「ある日先生から突然子どもの問題を指摘された。すぐに対応を考えないといけない」「進級に間に合うようにしなければ手遅れになるので」など、焦って受診しようとしたり、検査を受けさせようとする親御さんは多いものです。
しかしそんなとき、焦って発達検査を子どもに受けさせようとすると、こんな落とし穴にはまってしまいます。
- 私設の機関で4~5万円払えば明日検査をしてくれると聞いて急いで受けた。後から調べると保険の範囲内で検査を受けられるクリニックもあると知って後悔した。
- 検査を取ったはよいものの、その結果をどのように生かしていけばよいのかわからない。
- 子どもの心の準備ができておらず、「なんでこんなテスト受けなきゃいけないの」と不安定になってしまった。
発達障害は、明日突然悪化するものではありません。
まずは、「先生から詳しい話を聞く」「子どもの困り感、学校の様子、家での様子を整理する」など、いろんな視点から冷静に見るのが大切です。
今すぐに診断を受ける必要があるのか
発達障害の診断を受けるメリットとしては、学校や周囲の大人と共通認識を持てる、対応のヒントを得やすくなる、もやもやした気持ちに落としどころができるなどが挙げられます。
一方、デメリットとして、こんな親御さんの声を紹介します。
発達障害の診断を受けて、子どもを見る目が変わった。
今までは電車を綺麗に並べる姿を見て几帳面な子なんだと、ほほえましく見守っていた。お気に入りの服ばかりを着たがる、好きな車両のことを話し続けるのも、夢中になれるものが見つかったんだと感じていた。
しかし、それらの行動が発達障害の特徴だったと知り、微笑ましく思えていた子どもの行動も「特性」と思うと、複雑な気持ちで見てしまうように。親である自分がこれまで障害の特性を助長してきてしまったかもしれないと罪悪感も抱くようになった。
この親子が診断を受けなければ幸せだったかと言われると、そうとも言い切れません。
時間をかけて受け入れられていくケースは多く、また、「もっと早く知っておけばよかった」「子どもの辛さに気づいてあげられなかった」と感じる方もいらっしゃるからです。
しかし、「診断の有無によって子どもの見方が変わってしまうかも」と不安を感じている方は、まずその不安軽減のための相談から始めるのもひとつ。
なぜなら、様々な情報や意見を受け止める準備を親ができていないと、子どもが混乱しやすくなるからです。
長期的に見て、今どんな対応をするのが親子にとってよいのか。
パートナーや学校の先生、スクールカウンセラーや地域の相談センターなど、まずはそこから第三者に相談してみるのが大切です。
参考資料
文部科学省(2022)「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」https://www.mext.go.jp/content/20230524-mext-tokubetu01-000026255_01.pdf