うちの子、もしかして発達障がい…?「個性」との違いを考える

家族・人間関係

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2023.11.13 更新

臨床心理士・公認心理師のyukoです。発達障がいについての情報が広まる中、「わが子の特徴も発達障がいではないか」と感じる親御さんが増えています。わが子は本当に発達障がいなのか。病院に行った方がよいのか、それとも見守るべきか。誤解しやすい事例をもとに考えていきます。

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「うちの子って発達障がいですよね?」

発達障がいに関する考え方が浸透し、以前より多くの方に理解や配慮の輪が広がってきたのはよい変化かと思います。

しかし一方で、「友達ができないわが子はコミュニケーションの問題があるに違いない。自閉症スペクトラムなのかも?」「兄はよく勉強しているのに弟はちっとも机に向かわない。これって学習障がい?」など、発達障がいに寄せた解釈をする方も増えています。

小児科出典:stock.adobe.com

実際、「子ども 勉強 集中できない」とWEB検索すると、「集中力が続かない発達障がいは?」という関連記事がすぐに目につきます。子どもの特徴が発達障がいと結び付けられやすくなっているのが現状。

今回は、よくお聞きする子どもの困りごとと、その捉え方について考えてみます。

これって子どもの個性?それとも専門家に相談すべき?

友達がいない

ASD(発達障がいの一種:自閉スペクトラム症)の特徴にはたしかに「対人関係や社会性、コミュニケーションの障がい」があります。
しかし、対人関係に問題がある人すべてASDかと言われると、もちろん違います。

ASDの傾向がある子は、

  • 皮肉や冗談を字義通り受け取る。
  • 視線が合いにくい。
  • 音程や抑揚・リズムに特異さがみられる。
  • 一方的に話し続けることが多い。
  • など、独特のコミュニケーション様式が見られます。

友達を作れないのか、それとも一時的に友達を作れても維持しにくいのか、どのコミュニティにおいても難しいのか。

ひとりぼっちの子ども出典:stock.adobe.com

本人の特徴と環境要因を合わせて考えていく必要があります。

忘れ物が多い

「忘れ物が多い」「授業に集中できていない」と悩み、ADHD(発達障がいの一種:注意欠陥・多動性障がい)ではないかと相談に来られる方も多いです。
たしかに、ADHDには「集中力の持続困難」や「忘れ物やなくし物の多さ」などの特徴があります。

しかし以下のように。判断が難しいケースも多いんです。

  • 塾の授業は落ち着いて聞けるし、ノートも取れている。しかし、学校の授業ではそわそわと落ち着かず、上の空になるときが多い。
  • 小学校1年の息子。忘れ物が多く、特に絵具や雑巾などイレギュラーなものをよく忘れる。
  • 去年サッカーチームのレギュラーを外されてから元気がない。勉強にも集中できていない。

勉強する子ども出典:stock.adobe.com

小学校低学年であることに加え、普段持参しないような物を忘れるのは、不注意によるものかどうか判別しきれず、必ずしも発達障がいによるものとはいえません。

また、集中力や注意力は、気分の落ち込みや周囲の環境、勉強している内容によって大きく左右されます。
「本人の特性だろう」と判断する前に、ここ最近の変化や気持ちに影響していそうなこと、例外の場面(集中できている場面)などを考えるのも重要です。

勉強ができない

近年、LD(発達障がいの一種:学習障がい)に関する情報も徐々に広まってきています。
LDには、「読む」「書く」「算数や計算」に関する困難さが関係してきます。
しかし、保護者が「LDではないか」と考えて受診されても、診断がつかないケースも多いもの。

例えば、

  • 中学受験をさせようと塾に入れたが成績がちっとも伸びない。塾の授業にもついていけていないよう。
  • 父親がアメリカ人で母親が日本人。家では英語を使用しており、5歳まで中国にいた。日本語がちぐはぐだし、小学校で漢字の勉強をしていても、形を捉えるのが難しい。

勉強できない子ども出典:stock.adobe.com

学習障がいの診断に用いられる検査は、全国の同年齢の平均から統計を取っているものなので、学習塾における成績が振るわない子の場合、数値上で問題性が指摘されることは少ないです。
また、日本語文化に馴染みが薄い、異文化からの影響が大きい子は、学習障がいによる習得の難しさではなく、環境要因の強さを指摘されます。

「勉強できない=学習障がい」とすぐに繋げるのではなく、その子がおかれている特殊な環境を理解することが最優先なんですね。

まずは身近な専門家に相談を

わが子の苦手さや、他の子との違いが気になるのは当然です。
ですが、ネットの情報に右往左往してしまうと、わが子の様子が余計見えにくくなってしまいます。
まずは第三者の視点で見てくれたり、必要な機関と繋げてくれる学校の先生やスクールカウンセラーに相談してみるのがよいでしょう。

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著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。

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