教えてくれたのは……マインドトレーナー 田中よしこさん
株式会社コレット代表取締役。心理学・脳科学、コーチングの知見を取り入れ、「自分を本当に知る」ことをメソッド化。個人セッションやセミナーなどを中心に、潜在意識を整え、本心と「未来の理想の思考」を引き出す方法を伝えている。『モヤモヤしない考え方』(ワニブックス)より新刊発売。
「自分だけが我慢すればいい」という考え方が招く3つの後悔
「自分さえ我慢すればいい」と考えることは、一見するとトラブルを避けるための最良の方法に思えるかもしれません。しかし、この思考パターンは後悔を生みやすく、心に大きな負担をもたらすことも。
今回は、その我慢によって、どのような後悔が生じる可能性があるのかを解説します。
1. 自分の夢や希望を失う
「自分さえ我慢すれば」と他のことを優先すると、自分のやりたいことや目標は後回しになってしまいがちです。その結果、人生の大切な時間が知らず知らずのうちに過ぎてしまい、最適なタイミングが別のことで次々と先送りになってしまうのです。
心理学によると、「未達成の目標は後悔の原因となる」とされており、挑戦しなかったことへの後悔が最も長く続くことが研究結果にも示されています。我慢を続けるほどに自己実現の機会が失われ、「もっと自分を大切にしていればよかった」と後悔することに。
みなさんは、人生の終わりにどのようなことを思い返したいですか? じっくりと考えてみることをおすすめします。
2. 自分の価値がわからなくなる
「自分さえ我慢すれば」と相手を優先することで、自分の本来の価値を見失ってしまうことがあります。自分以外を優先しているので、当然のことと言えますよね。特に、自己犠牲を繰り返すことで「自分は他人にとって大切な存在ではない」と感じることが増え、やがてはそれが事実であるかのように思い込んでしまうことがあります。
これは、「もっと自分を大切にしていれば、人生をもっと楽しめたかもしれない」という後悔につながり、リカバリーの方法が分からなくなってしまうことも。自己肯定感が下がると、幸福感も低下するということが心理学的にも示されています。「自分が我慢すればいい」という考えをどれほど持っているのか、一度振り返ってみましょう。
3. 対等な人間関係を築きにくくなる
自分の気持ちを抑えて相手に尽くし続けると、人間関係が不健全な方向へ進んでしまう傾向があります。相手は無意識のうちに「この人なら何をしても許してくれる」と思うようになり、対等な関係が崩れてしまうのです。健全な人間関係は、“与えること”と“受け取ること”のバランスが大切です。我慢を積み重ねると、結果として関係がこじれてしまい、「もっと自分の意見を言えばよかった」と後悔することが多くなります。
また、人は我慢を続けることでストレスが蓄積し、心身にさまざまな不調が現れることも少なくありません。ストレスホルモンであるコルチゾールが長期にわたって分泌され続けることで免疫力が低下し、体調不良につながることが神経科学の研究で明らかになっています。「我慢が美徳」の考え方が自分に合っているのかを改めて見つめ直してみましょう。
「自分を大切にすること」を改めて考えてみよう
「自分さえ我慢すればいい」という考えは、他人を思いやる優しさから生まれるものですが、長く続くと後悔の原因になることがあります。自分自身を大切にすることは、より充実した人生を送るための第一歩です。
お伝えしたように、過度な我慢はメンタルや脳の健康に良くありません。我慢で引き起こす後悔について、ぜひ見直してみてくださいね。