元気があったりなかったり。不安定な息子が気になる
小学4年生の息子は、最近家に帰ると靴下を脱ぎっぱなしのまま床にゴロン。「今日どうだった?」と聞いても「普通」としか言わない。塾の用意を促しても「うん」と言うだけで動かない。ゲームのデータが少し消えただけで涙目になったり、いつもなら笑って流す軽い冗談にもムッとしてしまう。子どもらしく「おやつ! おなかすいた」と言うときもあるけど、不安定な様子が気にかかる。
小学校中学年から高学年くらいになると、人間関係の空気を読んだり、班活動で役割をこなしたり、「ちゃんとしなきゃ」の場面が急に増えます。
そんな中、本人は理由が説明できないけれど、心の中では“コップの水面”がギリギリの子も。
さらに令和の子どもたちは、授業のタブレット、チャット連絡、オンラインゲームなど、学校外にも人間関係が広がる環境の中にいます。
臨床の現場でよく見るのは、体力はついているのに、休むための“心の余白”がなくなっている子。
大人のように「今日は疲れたから距離を置こう」と調整する力はまだ育ち途中。
そのため、ちょっとしたことでコップがあふれてしまうんですね。
心のコップとの付き合い方、水があふれる前にどんなサポートができるかを考えてみます。
聞き出すのではなく、子どもが「素の自分に戻れる場所」を用意する
「何があったの?」と質問するのではなく、まずは“いつものリズムに戻れる環境” をそっと作るほうが、子どもは自然に落ち着きます。
たとえば、
- 帰宅してすぐは、あえて質問しない。玄関で「おかえり〜。手だけ洗っときな」くらいの軽さで迎える。会話ゼロでも大丈夫という空気を最初に提示する。
- 「ただいまアイス」や「5分だけだらけタイム」など、“いつもの安心習慣”を作る。帰宅直後、“いつもの安心無言タイム”があると脳がうまくリラックスモードに入れる。脳が切り替わるまで、言葉を求めないで見守る。
- テレビの音量を少し下げておく/部屋の照明を少し柔らかくしておく。実は臨床的に効果が大きいもの。何気ない環境でも感覚の刺激に疲れやすい年頃。静けさが「安全スイッチ」になりやすいんです。
こうした環境調整は、子どもの“自律神経を元の速度に戻す作業”。
情報過多のこの時代、静かで温かい空間が何よりの支えになります。
“うまく聞く親”ではなく、”余白のある親”になる
多感な時期、親の反応が重いと話す気が一瞬で消えてしまいます。
おすすめしたいのは、子どもが話したくなったときに、スッと入れる“大人の軽さ”。
- 子どもがポロッと言ったことに、リアクションを盛りすぎない。「そんなことが!?」「どうして!?」と重く受け止めるより、「へぇ、そんなことあったんだね。で、どうしたの?」くらいの“話したかったら教えて”くらいの温度感が肝。
- アドバイスは求められたときだけ、控えめを意識。「その子とは距離を置きなさい」など重いものではなく、「明日は一回だけ、試しに返事を短めにしてみたら?」など軽いものがおすすめ。
- 親自身が“回復の見本”になる。「今日は疲れたから、10分だけソファで休憩するわ」「今日はチートデイにしようかな。お惣菜買ってくるけど食べたいものある?」など。
深刻になりすぎない親の姿勢は、子どもにとって「この人には安心して話せる」の合図になります。
本音は、肩の力を抜いたときに漏れるもの。
うまく聞こうとするのではなく、家の雰囲気に”余裕・余白”を作るのがポイントです。
感情のコップは、特別なケアでなく、毎日の小さな“素に戻れる時間”で空になっていくもの。
どうにかしてあげよう! と意気込むのではなく、ちょっとお茶でもどう? くらいの雰囲気を作ってあげられるといいですよね。



