片頭痛の症状と原因
よくある頭痛の中でも、多くの人が悩まされている「片頭痛」。その特徴的な症状とメカ二ズム、そして痛みの対処について、菅原脳神経外科クリニック院長 菅原道仁先生にお聞きしました。
「片頭痛は女性に多く、その痛みは4~5時間程度から長い場合は3日くらい続くことも。痛みは頭の片側のこめかみから眼の辺りに起こることが一般的ですが、約4割の患者さんは両側の痛みを訴えます。ギューッと締めつけられるような痛みではなく、ズキンズキン、ガンガン、ドクンドクンと表現されるような心臓の鼓動にあわせるような痛みが襲います。吐気や嘔吐を伴うこともあり、日常生活や仕事が手につかないほど。また、頭痛時は光や音や匂いに敏感になることが多いため、暗い静かな部屋でじっとしていると楽な人が多いようです。」
あなたの頭痛をセルフチェック!
ひと口に頭痛といっても、その種類は実はいくつかに分かれます。菅原先生は「まずは自分の頭痛を知ることが大切。」と仰います。「頭痛チェックシート(埼玉国際頭痛センター長 坂井 文彦 先生 監修)」で、片頭痛なのか?はたまた別の種類のものなのか……を確認してみましょう。
しかしながら、片頭痛は患者数は多いものの、実は原因が分かっていないやっかいな頭痛です。
諸説ある中で有力視されているのは「三叉神経血管説」。何らかのきっかけで頭の血管の周りにある「三叉神経」が刺激され、脳血管を拡張する痛み物質が出ることによって頭痛が引き起こされるという説。そして気になる「片頭痛を引き起こすきっかけ」は人それぞれで、生理、ストレス、人ごみ、寝不足や眠りすぎなどが代表的。なるべくストレスを減らし、規則正しい生活を送ることが大切です。
すぐに病院へ!命に関わる危険な頭痛
実は、片頭痛は命に関わる病気ではありません。ところが、頭痛の中には命に関わる危険なものもあるため、以下のような特徴がある場合は、速やかに医療機関へ!
A.前触れなく、突然頭痛が起きた
B.今までの頭痛とは違った感じだと感じる
C.今までの頭痛の中で一番痛い
D.頭痛だけでなく、発熱や手足の動かしにくさ、言葉が出ないといった他の症状を伴う
E.意識がもうろうとししたり、痙攣を起こしたりする
これらの症状がある場合は、すみやかに医療機関で受診を!
片頭痛の治療法
片頭痛の治療の第1歩は、まず医師に「片頭痛」と診断してもらうこと。自己判断は禁物です。菅原先生は「日常生活に支障が出るほどの片頭痛がある場合は、適切に薬を使用することをお勧めします。軽い片頭痛であればドラッグストアの市販薬も充分有効ですが、連日連夜、市販薬を乱用してしまうと、頭痛が治らなくなることがあるため、月に10日以上薬を飲まなければならないときは必ず医療機関を受診してください。」と、病院で診察を受けることを強く勧めておられます。
代表的な片頭痛治療薬「トリプタン製剤」
代表的な片頭痛治療薬は「トリプタン製剤」。こちらについては「片頭痛に非常によく効きますが、頭痛がひどくなってから飲んでも効果が半減するため早めの服用がポイント。」とアドバイスされています。
ただし、このお薬……一錠あたり約1000円するため保険を使用しても3割負担で一錠300円。この件について菅原先生は「経済的な負担を抑えるためにも、月に10回以上この薬を飲まなければならない場合は、片頭痛を起こしにくくする予防薬を併用することが一般的です。頭痛による吐き気が強く薬が飲めなかったり、飲み薬があまり効かないと感じる場合は、鼻からの注入や注射による投薬法もあるので、かかりつけ医と相談してください。」と仰っています。痛みからの解放のためにも、お財布のためにも、「まずは受診」ですね。
片頭痛の予防法
片頭痛の予防法は、「薬の服用」と「食生活を整えること」の2つがとても重要です。「片頭痛が頻繁に起こる場合は、「塩酸ロメリジン(商品名:ミグシス、テラナス)」などの片頭痛予防薬を併用します。片頭痛予防薬は、1ヶ月以上使用しないと効果が実感できないことが多いので、根気よく服用するようにしましょう。」とのこと。
また、食生活ではビタミンB2やマグネシウムが多く含まれる食品を積極的に加えてみると効果的。外食が多く理想的な食生活が送れない場合は、サプリメントでもOK。
ビタミンB2を多く含む食材……レバー、アーモンド、うなぎ、玄米など
マグネシウムを多く含む食材……ひじき、黒豆など
頭痛日記のススメ
薬を効果的に使用するには、自分の頭痛が起こるタイミングを知ることが重要です。手帳やカレンダーに印をつけるだけでも、1~2カ月ほど続ければ、天気や食べ物、睡眠時間や飲酒などに傾向が見つかるはずです。以下の事柄を参考に記録してみましょう。
・日時、時間
・天候
・頭痛の質 ズキンズキンと脈を打つ感じ、重苦しい感じなど
・痛む場所 前頭部、後頭部、全体的になど
・生理周期、睡眠時間、飲酒、喫煙、食事など、生活習慣にまつわること
・ストレスの有無
・食べ物や飲酒 出かけた場所など
頭痛を引き起こす誘因がわかれば、生活習慣を整える工夫ができます。「今日は危ないかも」と思った日は、薬を持参して備えましょう。また、病院で受診するときには、この記録が大切な資料となるので、必ず持参しましょう。
ズキズキ!でも薬が無い!
片頭痛の痛みが出た場合は、自宅なら静かで暗い部屋でじっとしていましょう。こめかみをぬれタオルなどで冷やすのも効果的。もしも運悪く外出先や仕事中なら、カフェインが多く含まれている緑茶やコーヒーを飲んでみると、カフェインの持つ、血管収縮作用のおかげで収まることがあります。ただし飲みすぎには注意しましょう。
スッキリしないなら必ず受診を
「頭痛持ちなの」と言う人は多いものの、実際に診察を受けた経験のある人は、ごく少数です。今回取り上げた片頭痛と同様に多くの人が苦しんでいる「緊張性頭痛」では、対応の仕方が異なり、薬も違えば頭を冷やすのか、温めるのか、などさまざまな面で真逆なことも多々あります。「片頭痛だと思って長年、市販薬を片っ端から試していたけど収まらず、病院へ行ったら緊張性頭痛だと診断され、処方された薬ですぐに治った」という声も聞いたことがあります。簡単に手に入る頭痛薬、鎮痛剤は安価でとても便利ですが、自分の頭痛や体質に合わないということもあります。ぜひ、きちんと受診をして、正しい治療で痛みから解放されましょう!
お話を伺ったのは……
「All About 家庭の医学ガイド」菅原脳神経外科クリニック院長 菅原道仁先生
現役脳神経外科医。杏林大学医学部卒業後、クモ膜下出血や脳梗塞といった緊急の脳疾患を専門とし、国立国際医療センター、北原脳神経外科病院にて数多くの救急医療現場を経験。2015年に東京都八王子市に菅原脳神経外科クリニック、2019年10月に港区赤坂に菅原クリニック東京脳ドックを開院。「病気になる前にとりくむべき医療がある」との信条で、日々の診療とともにテレビなどのメディア出演や本やコラムの執筆を行っている。
…次回は肩や首のコリを伴う「緊張性頭痛」の原因や対処について、です。
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