検証1:パイナップルに肉を漬け込む!
1:肉を漬け込む
まず、果物の中で、最もタンパク質分解酵素を多く含むパイナップルを使います。
パイナップルをミキサーにかけたもので牛肉全体を覆い、ラップをし、半日ほど冷蔵庫で漬け込みます。
半日以上たったら、パイナップルを取り除きます。
パイナップルに漬けた肉は、やわらかくなっているというより、溶けていると言った方がいいくらい、やわらかくなっています。トングで持ち上げると、重さでちぎれそうなくらいです。
肉を軽く水洗いして、表面についているパイナップルを落とし、キッチンペーパーなどで水分を拭き取ります。
タンパク質が分解されすぎて、やわらかくてボロボロになっているという印象です。
2:肉に塩を浸透させると同時に、表面を乾燥させる
肉の総重量に対して、0.8%の塩をまぶします。
これは、人間の体内の塩分濃度がおよそ0.8%なので、本能的においしいと感じやすい塩分濃度だからです。
肉に塩が浸透するには、時間がかかるので、肉に塩をまぶしたら、1時間ほど置いておきます。
肉に塩をまぶすと、浸透圧によって一度は肉の表面に肉汁が浮き上がってきますが、時間が経つと、肉が浮き上がった肉汁を再び吸収します。
さらに、肉を焼いた時にこんがり焼き目がつくのは、メイラード反応によるものです。メイラード反応は、肉の表面の水分が少ないほど起こりやすいので、塩を浸透させつつ、肉の表面を乾燥させるのも大切です。
ですので、1時間肉に塩を浸透させたら、キッチンペーパーの上に置き、さらに1時間置いて、表面を乾燥させていきます。
検証2:舞茸に肉を漬け込む!
次に、野菜の中で、最もタンパク質分解酵素が多い舞茸を使います。
舞茸をミキサーにかけたもので牛肉を覆い、ラップをし、半日ほど冷蔵庫で漬け込みます。
半日以上たったら、舞茸に漬けた肉を取り出して、まわりに付いている舞茸を取り除きます。
肉の表面を触ると、程よく柔らかくなっているのが分かります。
キッチンペーパーなどで、表面の水分を拭き取ります。
パイナップルに漬けた肉と同様に、塩を浸透させ、表面を乾燥させます。
検証3:肉をマッサージする!
まず、肉に塩を浸透させて、表面を乾燥させます。
次に、肉をポリ袋に入れ、マッサージします。
人間の肩こりと同じように、マッサージすることによって、こりが取れて、やわらかくなります。特に、筋の部分はしっかりマッサージすると、食べた時にかみ切りやすくなります。
5分から10分ほど、マッサージしていきます。
筋が硬い場合は、めん棒などを使ってマッサージするといいでしょう。この時、肉がちぎれないよう、力加減には気をつけましょう。
肉がほぐれたら、元の形に形を整えます。
これを押さえればうまく焼ける! 肉を焼く時のポイント6つ!
ポイント1:肉は常温に戻して余計な加熱時間を省く!
肉を焼く前は、冷蔵庫から出して常温に戻しておきましょう。余計に火を入れなくてよいため、水分量が保たれてやわらかくなります。
ポイント2:肉の中心温度の管理をしっかりと! 中心温度は70度を超えないように
肉の焼き具合は、だいたい、中心温度が50度くらいがレア、60度くらいがミディアム、70度くらいがウェルダンになります。中心温度が40度を超えると、タンパク質が変性して、少しずつ生から嚙み切れるようになっていきます。70度を超えると、繊維やコラーゲンがねじれるなどして、大量に肉汁が出てしまうので、気をつけましょう。
ポイント3:最初は強火で表面を焼き固めて肉汁をキープ!
最初に強火で肉の表面を焼き固めることによって、それが蓋になり、肉汁が逃げにくくなります。
ポイント4:20秒ごとに裏返すと、均等に火が通り、乾燥もしない!
ステーキ肉を焼く時は、20秒ごとくらいに裏返すことにより、均等に火が入り、火の入りムラや、乾燥を防ぐ効果があります。
ポイント5:焼いた肉はキッチンパーパー&アルミホイルで巻いて、ジューシーに仕上げる!
焼いた肉は、保水のためにキッチンペーパーで包んでから、冷めないようにアルミホイルを2重にして巻きます。肉が冷めないようにしつつ休ませることによって、肉汁が全体に行き渡って、肉汁が落ち着き、ジューシーな仕上がりになります。肉を焼いてからすぐに切ると、肉汁が外に逃げやすくなります。
ポイント6:ブラックペッパーは事前に振らないで!
ブラックペッパーは、肉に浸透しないので、事前に振ってしまうと、肉からはがれ落ちたり、焦げたりするので、仕上がり直前か、食べる前に振ります。
3種類の肉を、実際に焼いてみよう!
まずは、舞茸ステーキ
フライパンを火にかけて温めたら、油を入れて、ステーキを入れます。
あえて、超高温で焼いていきます。
55度くらいで火を止めたら、余熱で60度くらいになるので、ミディアムに仕上げていきます。
焼いた肉を、キッチンペーパーで包んでから、アルミホイルを2重に巻きます。
次に、パイナップルステーキ
やわらかくなりすぎて、肉汁がかなり逃げています。
肉汁が逃げると、旨みも減って、パサパサになるうえ、出てきた水分によって、メイラード反応が起きにくくなります。
これ以上焼くと肉汁が出すぎてしまうので、50度でフライパンから取り出し、キッチンペーパーで包んでから、アルミホイルを2重に巻きます。
最後に、マッサージステーキ
肉汁が出ていません。
ミディアムレアに仕上げます。
焼いたら、キッチンペーパーで包んでから、アルミホイルを2重に巻きます。あとは、5分休ませます。(肉の大きさによって休ませる時間を変えます)
ちなみに、肉は保温して休ませても、温度は少し下がってしまうので、休ませた後に、もう一度フライパンに戻して表面温度を上げると、アツアツのステーキを食べることができます。
果たして一番おいしく焼けたのは!? 試食して比べてみよう!
マッサージステーキをいただきます
肉汁が全く逃げ出していないので、ジューシーに仕上がっています。
事前にしっかり塩が浸透していて、メイラード反応もしっかり起こって、香ばしくなっています。肉を噛んだとき肉汁がじゅわっと溢れ出てきて、鼻から抜ける香りが香ばしいです。しっかりマッサージしているので、程よくやわらかく、食べ応えもあって最高です。
舞茸ステーキをいただきます
程よくやわらかくなって、肉汁もしっかり残っています。
舞茸の香りが肉に移っていますし、タンパク質分解酵素によって、程よく肉がやわらかくなっているので、これはこれでおいしいです。ただ、ステーキを純粋に楽しみたい、肉の味だけをダイレクトに楽しみたい場合は、向かないかもしれません。舞茸の香りが強いので、きのこ類が好きな人は好きかもしれませんが、きのこ類が苦手な方は、食べにくいかもしれません。
パイナップルステーキをいただきます
見た目通り、これが一番柔らかいですが、肉汁が抜けていてパサついています。
鼻から抜ける香りが、パイナップルなので、酢豚にパイナップルが入っているのが苦手な人は、食べにくいと思います。香りだけではなく、ほんのりした甘みも肉に移っています。
やわらかさの順位は、1位はパイナップルステーキ!
やわらかさの順位をつけると、パイナップルに漬け込んだ肉がダントツにやわらかいです。舞茸に漬けた肉とマッサージした肉は、だいたい同じくらいのやわらかさですが、僅差で、舞茸の方がやわらかい感じがします。
ですので、
1位 パイナップル
2位 舞茸
3位 マッサージ
となります。
総合評価の第一位は、マッサージステーキ!
やわらかさ、ジューシーさがあって、それでいて歯ごたえがよく、香りもよくて、総合的においしかったのは、
1位 ダントツでマッサージ
2位 舞茸
3位 パイナップル
でした。
ステーキは、ただやわらかければいいというのものではなく、見た目、シューシーさ、香り、食べごたえも大事になってくることがわかりました。
教えてくれたのは:岩野上幸生さん
YouTubeチャンネル登録者数23万人/料理人歴18年目/飲食店経営者
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