「どうしても捨てられない……」部屋が散らかる人に“やさしい人”が多い理由 #片づけアドバイザー直伝

家のこと

stock.adobe.com
 「どうしても捨てられない……」部屋が散らかる人に“やさしい人”が多い理由 #片づけアドバイザー直伝

2021.05.27

すっきり片づいた家で生活するには、まず不要な物を手放すことが必要だとは分かっているけれど、それが一番難しいと感じている方もいるのではないでしょうか? 片づけアドバイザーの石阪京子さんによると、なかなか捨てられない場合は「今必要な物だけを選ぶ」ことがコツだそうです。詳しくお話を伺いました。

広告

物が捨てられないときは自分に問いかけることがコツ

――片づける前に不要なものを手放さないといけないと思いますが、そこが最も難しいと感じます。「今必要な物だけを選ぶ」ことについて詳しく教えて下さい。

必要な物を選ぶ判断基準は、使っているか使っていないかなんですよ。私の3日片づけのメソッドでは、バックヤード(押入れ・クローゼットなどの収納)から始めましょうと言っています。例えばクローゼットの中を全部出して見ると、すっかり忘れていた物がよく出てきます。忘れていた物ということは、全く使ってない物で、役に立っていない物です。

使っていない物がクローゼットにあるから、今使っている物が収納しきれなかったり、取り出しにくかったりします。だから不要かどうか悩むものが出てきたら、「自分は今コレを使っているか」、「本当に必要なのか」を自分に問いかけることが必要です。「またコレを買うかな」とか「今だったらコレを買うかな」、「コレは手放したくないと思っているけどなぜ使ってないのかな」というようにです。

ある生徒さんは、クローゼットから10年前の新婚旅行で買ったカゴのバッグが出てきて、「これ悩んでいるんです」とおっしゃったんです。「いつ買ったの?」とお聞きすると、「10年前にバリ島で買った、ただのカゴバッグです」とおっしゃいました。「今は使ってないの?」とさらにお聞きすると、使っていないとおっしゃるので、「浴衣に合わせたりするの?」とお聞きしてみますと、「違います、浴衣にも洋服にも合わないんです」とのこと。
「それは使いにくいよね、服に引っかかったりしたら余計に使いにくいしね」というと彼女は「そうなんですよ、ほんと引っかかって使いづらくて。そうですよね、いらないですね」と彼女は自らいらないとおっしゃいました。
つまり10年前から捨てられないと思っていたけど、これまで使っていない理由とちゃんと向き合ってなかったんですよね。使ってない物には絶対理由があるんです。

思い出系は自分の中でパワーになるときに取っておく

――亡くなった方が使っていた物などの思い出の物はどうしたらいいんでしょうか? 

本当に大事なら捨てなくていいんですよ。その代わり今の物を減らす必要がありますね。

1Lの器には1Lの水しか入らないように、収納の枠を決めてその中に思い出を入れたいのか、それとも今の物を入れたいのかを考えるんです。それは自分しか選べないから、私が「いらないよね」とは言えません。自分の中で亡くなった方の物がパワーになるなら置いておいたらいいし、そうではないと思うならサヨナラしてもいいと思います。

「吹っ切れポイント」の効果

――バックヤードを片づけるときには、必ず全部出さないといけないのでしょうか? かなり大変なことですよね。

そうです。なぜかと言うと、全部出したときにその空間を目の当たりにするんですね。またキレイに戻したいという心理も働きます。
それともう一つ、イヤになるんですよ。「吹っ切れポイント」と私はいっていて、「もういいや! ハンカチ50枚もいらない」と思えるんです。始めはいる、いらない、と判断していても、多すぎる物はそのうち「やってられない!」という気持ちになって、もういいと諦めることができる。しまいには「もういいです!」と見ずにバサッと捨てる方もおられます。
多すぎる物はもう見たくない、と疲れて捨ててしまうのもありです。なぜなら、本当に必要なものは絶対に残るからです。
逆に、私が「この服いる?」と聞いたときに「いるんです!」と即答する物はその人にとって絶対にいる物なんです。逆に、「これいると思います?」とか「似合うと思います?」などと周りの人に聞かないとわからないような物は、今の自分が必要としていない物ですね。

捨てることはひどいことでもなんでもない

――子どもが昔使っていた物は、やはり大切に思えて捨てることができません……。

部屋が散らかって悩んでいる人は優しい人が多くて、物にも想いを乗せて、物を捨てると思い出を捨ててしまうような気持ちになって悲しくなったりする方もいますよね。

でも物は所詮、物なんです。お子さんは、成長しながらたくさんの抜け殻をのこしていきます。それを一生懸命拾い集めていたら、おうちは抜け殻だらけになってしまうでしょう。
物よりも、かけがえのない家族とのおだやかな時間や、物の管理に気を取られず、やりきったと思えるほど好きなことに没頭できる空間や時間が大事だと思います。

物の片づけで空間や時間、心のゆとりを得られるようになると、物より大事なことに気づくことができます。
また家を片づけきると、物に想いを乗せて物に執着することが、足かせになってさまざまな障害になっていたことに気づき、その後は物に想いを乗せて苦しむことがなくなっていくんですよ。

今の時代は何でもデジタル化できますよね。バックヤードに使わなくなったランドセルなどを置いている方もいらっしゃいますが、支援として贈れたり寄付したりするところもあるので、写真を撮って必要な人に譲ってあげることのほうが本当の優しさになるかなと思います。

自分や家族、社会のために生きている間にいかに役に立てるかを考えると、多すぎる物に囲まれてどうしようと思っている時間がもったいない。あっというまに年は取りますし、子育ての貴重な時間は戻ってきません。

探し物や、物の管理で時間を取られるぐらいなら、物を減らし必要な備蓄を備え、安全で安心な家で、子どもとおしゃべりしたり、友だちを呼んで楽しい思い出を作ったり、そういうことをサッとできる家を作る方が大事だと私は思います。

物を捨てるには悩んで時間もかかるもの。でも「捨てられない物には必ず理由がある」とあったように、まずは捨てられない理由と向き合うことから始めてみるといいのかもしれまれません。

『これが最後の片づけ!』『これが最後の片づけ!』
著者:石阪京子
出版社 : ダイヤモンド社

教えてくださったのは……片づけアドバイザー 石阪京子さん

石阪京子

片づけアドバイザー。宅地建物取引士。JADPメンタル心理カウンセラー・上級心理カウンセラー。
大阪で夫と不動産会社を起業、夢のマイホームを手に入れても片づかないことで理想の暮らしができないと諦めている多くの人に出会う。
自分にできることはないかと女性目線での建築設計、引っ越し後のアフターフォローとして家の片づけを提案。独自のメソッドは一度片づけをしたらリバウンドしないのが特徴で、これまで様々な片づけ方法を試したり、プロに頼んではリバウンドを繰り返してきた人たちの「最後の駆け込み寺」となっている。同メソッドで片付けに成功した人は1000人にのぼる。
現在は収納監修、片づけレッスンほか、北海道、東京、大阪、名古屋、広島、福岡など各地でのトークイベントやオンラインセミナーを開催。多くの女性に暮らしの整え方についてのアドバイスを行っている。著書は最新刊『これが最後の片づけ!』(ダイヤモンド社)のほか、『一生リバウンドしない奇跡の3日片づけ』『夢をかなえる7割収納』『家事のしないことリスト』など多数。

広告
saitaとは
広告