お話を伺ったのは……田中えりさん
マインドフルネス瞑想講師・ヨガ講師。MELON インストラクター。名古屋市生まれ。30代後半に病気になったのをきっかけにヨガ、瞑想、東洋医学を学ぶ。子育て中の親向けに定期クラスや講座・ワークショップを行うほか、団体や行政のイベントを担当。現在は、マインドフルネスサロン MELONのインストラクターの一人としてクラスを担当するなど、心と体の「ととのえかた」を伝えている。
『イライラ・モヤモヤが消える ママの心のゆるめかた』
著者:田中えり
価格:1,540円
家族のことばかりではなく、自分にも目を向けていますか?
最近耳にする機会が増えた「マインドフルネス」。心のトレーニングとして私たちの日常生活に浸透してきています。しかし、まだ「マインドフルネス」がどういうものかわからないという方も中にはいると思います。そこでまずは、マインドフルネスの基本について田中さんに伺いました。
――田中さんはマインドフルネスの講師として瞑想やヨガも多くの方に教えていると思いますが、改めて「マインドフルネス」について教えてください。
田中えりさん(以下、田中さん):マインドフルネスと聞くと「ちょっと難しそうだし、私には関係ないわ」と思う方もいるかと思いますが、そんなことはありません。実は私たちは自分の「過去」や「未来」には気づけているのに「今」の状態を知ることがとても苦手なんです。過去や未来しか見ていないとネガティブになることもあるので、自分に「今、何を感じているの?」と自問し、自分の状態に気づくことをマインドフルネスといいます。
――「今」の自分に気づくと、どんなメリットがあるのですか?
田中さん:自分の今の状態に気づくことで焦りやイライラなどのストレスを手放せ、自分の感情とうまく付き合っていけるようになります。だからこそ、子育て中のお母さんたちに実践してもらいたいなと思います。
――田中さん自身は、マインドフルネスに出会う前と出会った後ではどんな変化があったのですか?
田中さん:私もマインドフルネスを知る前は頭の中であることないこと、いろいろ考え過ぎている状態でした。結局、自分でストレスをどんどん作ってしまっていたんですね。体調も優れなくなってしまっていたところ、ヨガの教室でマインドフルネスに出会い、そこから「今」の自分に目を向けることができるようになりました。
これまでは考えすぎて自分の中で事を大きくしていたことに気付いたのが大きな変化です。現実と頭の中の考えをしっかり分けることでストレスからも解放され、マインドフルネスがストレスを和らげてくれるのだと実感しました。
――マインドフルネスは毎日行ったほうがいいのですか?
田中さん:脳科学の研究結果によると、短時間でも毎日続けたほうが効果的だということがわかっています。植物にまとめてお水をあげるよりも、毎日少しずつあげたほうが元気に成長すると思います。このことと同じように、5分でもいいので毎日続けることに意味があるんですよ。
「息」は自分の心とつながっている!
――ママたちは日々忙しく過ごしています。そんなママたちがお子さんが寝た後にできるリラックス法はありますか?
田中さん:お子さんが寝た後だとお母さんたちも静かな時間を持てると思うので、リラックスできる呼吸法をお伝えしますね。吸う息の倍くらいの長さで息を吐くことを意識してみてください。1分から2分でもいいのでこの呼吸法を続けていると、次第に落ち着いてきますよ。
――寝る前に自分の呼吸に向き合う習慣が付けば、だいぶ変われそうですね。
田中さん:「息」という字は「自分の心」と書くように、呼吸と心は繋がっているといわれています。息を吐くことで緊張がほぐれ、リラックスできることが分かるようになります。そうすると、夜に限らず昼間も自分で自分の感情をコントロールできるようになりますよ。だからこそ、毎日少しの時間でもいいので続けてほしいなと思います。
親子の向き合い方にはメリハリも大事
――忙しいときはどうしても余裕がなくなり、子どもに向き合えなくなることもありますが、そんなときは何を意識したらいいでしょうか。
田中さん:そうですね。仕事や家事などで、お子さんと向き合えないときもあると思います。そんなときはメリハリをつけることが大事だと思います。
言葉のキャッチボールをできる年齢のお子さんが、忙しい時に遊んで欲しいと言ってきたら「今、お母さんはこれをしなければいけないから30分待っててね。終わったら一緒に遊ぼうね」と、今の状況をお子さんのほうを向いて伝えてあげてください。伝えたことでご自身は集中して作業ができ、お子さんには、自分のための時間をとることの大切さを、お母さん自身の行動で伝えることができると思います。
――子どもに事情をしっかり伝えることが大切なのですね。
ママの中には自分のための時間を取ることに罪悪感を感じる方もいると思いますが、自分の時間を取れずにイライラしてしまうならよくないですよね。子どもとそれぞれの時間を過ごすことで、また一緒に過ごす時間をより濃く感じられるはずです。
マインドフルネスには、フォーカスする対象を切り替えるという練習があります。今は一緒に過ごす時間、今はそれぞれのことをする時間というように、お子さんと一緒に気持ちを切り替えることを意識するのも大事だと思います。
――もし、お母さんが時間を守れなかったときはどうしたらいいでしょうか?
田中さん:基本的なことですが、時間を守れなかったときは大人も子どもにちゃんと謝ることが大事です。「30分って言ったのに10分過ぎちゃったね、ごめんね」と素直に謝れるかどうか、自分の心に余裕があるかにも意識を向けて欲しいなと思います。
忙しい日々の中で、家族にばかりに目がいき自分のことを意識することを忘れていることも多いのではないでしょうか。自分や家族のためにも心の余裕を持つことも大切です。まずは教えていただいた呼吸法をさっそく取り入れてみてはいかがでしょうか。