子どもに「どうしたい?」と聞くのは、実は“不適切なのではないか”というおはなし。

家族・人間関係

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2022.11.27

子どもに「あなたはどうしたいの?」と問いかけることって、多いかもしれません。 だけど、ぼくはこの問いってすごく難しいよなと思います。 特に小さな子どもには。 今日は「どうしたいの?」はじつは不親切な問いじゃないかってことについてお話します。

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「どうしたいの?」で子どもはすごく困惑する

子どもに「どうしたいの?」と聞くことが、なぜ不親切だと思うのか。
それは、「責任を負うリスクばかりに、意識が向いてしまうから」です。

この問いをよくする親は、子どもの自主性を重んじてあげたいという心境からだと思います。
事実、そうした思いから選択の結論を娘にゆだねることが、ぼくもよくあります。

先日もこんなことがありました。

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今度のお休みの日は何して過ごそうか? という話になったとき。
「家でのんびり過ごすのがいい? それとも、公園でボルダリングやりに出かける?」と。

この数ヶ月、繁忙期が続いてしまって土日も仕事。ゆっくり家族で遊ぶことがあまりできていませんでした。
そこでこのお休みの日は娘(小2)が楽しく過ごせることをしよう、という思いでした。

ところが、もやもやと冴えない様子。

どっちでもいいような、どっちも嫌なような感じでグズグズしています。

「なにか、違うことしたいの?」
「う~ん、なにかあるってわけじゃないけど……」

いくら聞いてもハッキリした答えが返って来ないのです。

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こうしたことは日常生活の中でたくさんあります。

「ごはん、なにか食べたい物ある?」
「買い物一緒に行くの? 行かないの?」
「トイレ行くの? 行かなくて平気なの?」

自主性を重んじてあげたい。それに、自分で決められるようになって欲しい。そう思うからこそ決めつけた命令形じゃなくて、自分で選択できるように問いかけているのに、子どもは困惑するばかり。

「やりたい」より怖い、責任を負うリスク

さて。ここからは恥ずかしながら正直な気持ちをさらけ出します。
「そんなの、お前だけだよ」と思われる方もいるかもしれませんが、中には共感してくださる方もいるかもしれません。

ぼくが「どうしたいの?」と娘に問いかけるとき。
たしかに娘の自主性を大事にしたいという思いはあります。でも100%ってわけじゃない。
半分くらいは、決断の責任を放棄しているのです。

たとえば「ごはん、何食べたい?」と聞くときは「君が食べたいって言ったんだから文句言わないでよ」って思いがあります。
「やる? やらない?」と聞くときも同じです。

「自分で決めたんだから、ちゃんと責任を持って最後までやらなきゃだめだよ」

って思いが半分くらいはある。
つまり、その決断に対しての責任を子どもに委ねちゃってる。

だから、子どもが「やっぱりヤダ」「食べられない」「行きたくない」となったら「自分で決めたことは、責任を持ちなさい」って言う。

「トイレ行きたい」「さっき自分で行かないって言ったじゃん。なんでさっき行かなかったの!?」なんて具合に。

ぼくは、改めて自分のコミュニケーションを振り返ったときに、そのことに気が付きました。

「自分で決めて、責任を負う練習だって大切」と思う方もいるでしょう。ぼくも、そう思います。何でもかんでも親に決めてもらって自分で責任を取ることを学ばなければ、何も決めることができないまま成長してしまうかもと不安にもなります。

ただ、「決断の練習」にも順序があるんじゃないかと思ったのです。

決断の練習

「どうする?」と聞くとき、大きく分けて3つの場合があります。

  1. 親の「こうして欲しい」が強めな場合:じつは、ほぼ選択の余地なしVer(笑)
  2. 選択肢が複数ある場合:いくつかの中から選ぶ
  3. 自分の考えを深めて答えを導き出す場合:選択肢から自分で考える

まず1。
これについては「どうする?」と聞くのはズルいなと(自戒を込めて)思います。
出先での「トイレ行く?」みたいな質問ですね。

こうした問いは「トイレに行っておいて欲しい」とちゃんと希望として伝えるのがフェア。
それなのに、こうしたじつは選択の余地がないことまで、あたかも「選択権がある」かのように問いかけるから、子どもは混乱します。

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「あのときは行きたくなかったから、行かないと言ったのに。あとで行きたくなったら怒られた」

こうした選択の失敗体験が積み重なると、親の顔を見ながら「正解探し」をさせてしまうことに。

2の選択肢が複数ある場合。
大事なポイントはふたつあると思います。

まず、どの選択肢を選んでも文句を言わないこと。

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選んだ結論に対して「それは違う」と言われると、やっぱり「正解探し」になってしまいます。

もうひとつは、選択肢の中に答えがない可能性も考慮する。
これはちゃんと話を聞いてあげないとわかりません。

最初に紹介した「家でのんびり」か「公園」かの選択。これって、娘の2大休日の楽しい過ごし方だったんです。
でも、今回はそれじゃなかった。

選択肢の中に答えがない場合は、つぎの「3自分の考えを深める」、になってきます。

3自分の考えを深める
これが難しい。ただ「どうしたいの?」って聞いたって答えなんて出てこないことがほとんどです。
大人だって、改めて聞かれると言葉につまるような質問です。

こうなったらできることはひとつ。
「どうしたいの?」じゃなくて「どうしようか」に切り替えて、自分も当事者となり一緒に考えるのです。

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この考えてベストアンサーを見つけるプロセスこそが、いい学びになる。

ちなみに。
わが家は、ワンピースの映画を見ることになりました(笑)

一度見ている映画だったから、まさかもう一度見たいとなるなんて思ってもいなかった。
色々と、楽しかったことややってみたいことを話し合った末に「ワンピースもう一回みたい!」と、雷に打たれたようにピンときた娘。

自分の「どうしたい」を考えるのは、簡単なことじゃないんです。
 

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著者

三木智有

三木智有

NPO法人tadaima!代表 日本唯一の家事シェア研究家/子育て家庭のためのモヨウ替えコンサルタント。著書に『家族全員自分で動く チーム家事』がある。

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