教えてくれたのは……エマ・ヘップバーンさん
神経心理学を専門とする臨床心理士。
15年以上の実務経験をもち、私的・公的の両面でメンタルヘルスの問題に取り組んでいる。
『幸せスイッチをオンにするメンタルの取り扱い説明書』
著者:エマ・ヘップバーン
訳:木村千里
価格:1,870円(税込)
発行:ディスカヴァ―・トゥエンティワン
自分自身にも「思いやり」をもって接していますか?
人に対して思いやりをもつことは意識していても、「自分自身に思いやりをもつ」ことは意外とできていない方も多いのではないでしょうか。何か失敗をしてしまったときに自分を責めてしまい、余計に気持ちが沈んでしまう負のループに陥っていませんか?
エマ・ヘップバーンさんによると、自分をむやみに批判せずに尊重することを「セルフコンパッション(自分への思いやり)」と言うのだそう。自分を思いやれば完璧主義から抜け出し、自分を批判する精神から、自分に理解と優しさを示す精神へと切り替えることができるそうです。
自分に思いやりをもてるようになると、不安やストレス、憂鬱感などのやっかいな感情を乗り越えやすくなったり、うまくいかないときでも自分を信じて目標達成のために再挑戦する意欲がわいたりするメリットがあるとのこと。
セルフコンパッションは、練習することで身につけられるようになり、実際にやってみると想像以上に効果が感じられるのだそうですよ。
書籍で紹介されている、3つの練習方法をご紹介します。
1.セルフコンパッションをはぐくむ
困難な状況に陥ったら、次に挙げる問いかけをして、自分が何を求めているのか考えてみましょう。
1.友だちだったらどう接する?
友達や大切な人が苦境に立っていると仮定して、その人にどう接するか考えてください。「くよくよするな」と厳しく批判しますか? やっかいな感情を抱えていたり、間違えたりしたからといって、その人の評価を下げますか?
2.自分にはどう接している?
では、自分が同じ状況だったら、自分にどう接しますか? どんな言葉をかけ、何をしますか?
3.差に気づく
「1」と「2」に差はありますか? 自分に接するように友達に接することがありえますか? どちらの接し方が有益ですか? 困難な状況にいるとき、あなたが求めているのは何でしょうか?
4.セルフコンパッションをはぐくむ
困難な状況にいるとき、どうしたら自分に思いやりを示せますか? 自分にどんな言葉をかけるのが有益ですか? 苦境にいたら自分がどんな励ましの言葉を聞きたいか考え、自分にかけてあげる言葉を事前に用意しておきましょう。
5.自分のニーズに素直に行動する
落ち込んだときは自分を責めずに今の自分に必要なものを問いかけましょう。自分のニーズに素直に、友達や子どもに接するときのように、自分に接し、語りかけましょう。
2.思いやりタイムをとる
セルフコンパッションには、「優しさ」「共通の人間性」「マインドフルネス」の3つの要素があります。
この方法は、3つの要素をすべて取り入れた手軽なエクササイズです。ストレスを感じたときにその都度やっても、1日や1週間の間に一定間隔でやってもかまいません。
- 立ち止まり、ゆっくり呼吸をしながら、今感じていることに注意を払います。
- 感情に名前をつけ、その感情を持つのは悪いことではないと認めます。
- 自分を慈しみなぐさめるためには、何が必要ですか? 言葉や行動を通して、自分に優しい対応をしてください。
3.「共通の人間性」を認める
苦しい状況では「自分だけが苦しんでいる」といった孤独につながるとらえ方をして「どんな困難にも負けず、いつも明るく前向きであるべきだ」と考えがちです。でもそれは非現実的なこと。
「共通の人間性」とは、困難な体験や感情、苦悩を「人間なら誰もが経験すること」ととらえ、私たちを隔てるのではなく、1つに結びつけるものという認識を指します。
まずは自分の感情や体験を批判しているときに、批判している自分に気づけるようになりましょう。
「こう感じるのはおかしい」「こんなふうに感じる人なんかいない」「私は変なんだ」と自分に言い聞かせたり、「もっとしっかりしないと」「みんなはもっとうまくやっているじゃないか」などの言い方をしていると、自分がまわりとは違うような気がして精神的に孤立してしまいます。
人間なら誰でも「悩み、苦しむ」「助けが必要なときもある」「失敗するし間違える」など、苦しみややっかいな感情、大きな悩みがあっても、まわりと何も違わないことを思い出してみてください。
孤立につながるような批判的な思考をしてしまったときのために、「共通の人間性」を思い出せるオリジナルのセリフを考えておくのもおすすめです。
一生懸命になるがあまり、自分に対してつい厳しくなってしまうことはあると思います。人に向ける思いやりを自分自身にも向けられるようになると、大きなストレスから少しずつ解放されて、“ありのままの自分”を認められる一歩になるかもしれません。