教えてくれたのは……飯島 慶郎(いいじま よしろう)先生
精神科医・総合診療医・漢方医・臨床心理士。
不登校/こどもと大人の漢方・心療内科「出雲いいじまクリニック」院長。
診療科の垣根を超えた総合的な心身医療を行っており、中でも不登校児の診療や不定愁訴(心身におこる原因不明の症状)を得意とする。全国で初めての「不登校専門クリニック」を開設し、社会問題の解決にあたっている。
五月病になりやすい人の特徴
前回の記事では「五月病とうつ病の違い」について、お話をうかがいました。
飯島先生によると、新生活が始まった子どもだけではなく、子どもを支える立場の大人も五月病になる可能性があるとのこと。五月病になりやすい人には特徴があるのだそうです。
飯島先生「3月から4月は、お子さんの入学、進級、就職などのお祝い事が多く、新生活にともなう環境変化が目白押しです。実は、お祝い事もストレスの原因のひとつになります。
周囲の環境が急激に変化していることに対して、人間は興奮状態をつくって乗り切ろうとします。そして、ある程度適応が済み、この興奮状態がプツッと切れた状態が“五月病の入口”になります。興奮が解けたために、蓄積した疲労が一気に押し寄せることになるからです。
つまり、3月から4月に本人の体力を超えてテンションを上げて頑張りすぎた人が、五月病になりやすい人の特徴だと言えるのではないでしょうか」
五月病になったときにやってはいけない「3つのNG行動」
五月病になった場合に、どのようなことに気をつける必要があるのでしょうか。「意識してやるとよいこと」と「やってはいけないこと」のどちらもあるのだと、飯島先生は解説します。
飯島先生「3月から4月にかけての疲労の蓄積が五月病の引き金をひくと考えられるため、その時期は過度に興奮しないように、きちんと休息をとることが予防として大切です。
五月病のような症状を感じた場合は、うつ病の療養法に準じた対応をとる必要があります。新しいことにできるだけ手をつけず、必要最低限のことだけできたらよしとしましょう。できる限り多くの時間を休息にあてるよう心がけるとよいと思います。
その反対に、下記の3つはNG行動です。
NG1.気分の落ち込みを振り払おうとして、さらに活動的になる
NG2.人からの気分転換の誘いに無理をして応じる
NG3.アルコールの力に頼る
中でも、アルコールの力に頼ることは、より気分を下げ、不眠や依存症の入口になるので注意してください」
五月病になったときには「とにかく休む」こと
最後に、五月病を改善する方法を教えていただきました。
飯島先生「先ほど述べた内容と重なりますが、まずは体力と気力の消耗を防ぎ、可能な限りの休息をとることが一番です。少々の休息をとっても回復を実感できないこともあるかもしれませんが、根気よく休み続けると、いつか調子が上向くのを実感できるでしょう。
また、症状が日常生活に支障を及ぼすレベルであったり、2週間以上経っても改善の兆しがなかったりする場合には、うつ病や適応障害の可能性も考えられます。その際は、身近な心療内科・精神科の受診を検討することも大切です」
誰にでも起こる可能性がある五月病。環境が変わる時期は、いつも以上に自分のケアを丁寧におこない、自分自身も労わってあげられるとよいですね。