教えてくれたのは……飯島 慶郎(いいじま よしろう)先生
精神科医・総合診療医・漢方医・臨床心理士。
不登校/こどもと大人の漢方・心療内科「出雲いいじまクリニック」院長。
診療科の垣根を超えた総合的な心身医療を行っており、中でも不登校児の診療や不定愁訴(心身におこる原因不明の症状)を得意とする。全国で初めての「不登校専門クリニック」を開設し、社会問題の解決にあたっている。
五月病によく見られる「6つの症状」と特徴
今の時期に心身の不調を感じたら、多くの人が「五月病ではないか」と考えるかもしれません。五月病は、自分で判断できる基準はあるのでしょうか。よく見られる症状や特徴を飯島先生に教えていただきました。
飯島先生「じつは、『五月病』は正式な医学用語ではありません。そのため、五月病そのものを研究対象とした医学的な文献は極めて少ないのですが、一般的に言われる五月病の症状には、以下のようなものが挙げられます。
- やる気が出ない
- 憂うつな気分になる
- 集中力がなくなる
- 疲労感
- 眠りが浅くなる
- 身体症状(胃痛、食欲不振、頭痛、めまい、動悸など)
このチェックリストに2つ以上あてはまり、それが4月後半から6月前半に症状が現れた場合は、五月病の疑いがあると考えてもよいでしょう。ただし、これらの症状が日常生活に明らかな支障を2週間以上引き起こしている場合は、うつ病や適応障害の可能性も考慮する必要があるでしょう」
うつ病や適応障害との違い
「五月病」は、うつ病や適応障害とは症状が続く期間が異なるものの、うつ病のひとつの形として捉えることが自然なのだと飯島先生はおっしゃいます。
飯島先生「上記のような五月病と思われる症状は、精神科医や心療内科医が診ると、病態としてうつ病の症状であるとすぐに感じられます。しかし、全体的に見て、うつ病や適応障害と診断されるほどの症状の重さはないというのが事実です。
診断基準上、適応障害やうつ病の診断は、症状が労働や学業などの日常生活に“明らかな”障害をもたらし、その状態がおおむね2週間以上持続している場合に行われます。そのため、五月病については、診断域値以下の『軽症のうつ病』だと考えるのが自然だと私は考えます。
軽症のうつ病は、臨床上はたくさん存在していますが、昨今の診断基準(DSM-5やICD-10)を用いた場合は、診断基準に当てはまらず、病気として扱わないことになります。
しかし、その診断基準を用いずに伝統的な診断方法を採用すると、五月病で身体症状が見られないタイプは『小うつ病』、身体症状が顕著なタイプは『仮面うつ病』と診断することもできるでしょう。いずれの場合も、症状が一定期間続いている必要があります」
もしも心身の不調が続いている場合には、「五月病だから仕方ない」と一人で抱え込むのではなく、専門医に相談することも必要なのかもしれませんね。次回の記事では、五月病になりやすい人の特徴と改善方法について、ご紹介します。