教えてくれたのは……抗菌博士 梶浦義浩さん
1985年、株式会社シナネンゼオミックに入社。以来、抗菌剤「ゼオミック」の研究・開発に従事。現在は同社プロジェクト担当として、市場開拓も担当。抗菌試験管理士、臭気判定士の資格も有する。イベント等では抗菌博士として講師を務める。
食中毒を引き起こすのは冬はウイルス、夏は……?
冬の食中毒はウイルスによるものが発生しやすいのに対して、梅雨から夏の時期は細菌による食中毒の発生が多くなります。
食中毒の原因となる細菌
<カンピロバクター>
牛や豚などの食品が原因となる食中毒菌です。
<黄色ブドウ球菌>
弁当、おにぎり、練り製品などの食品が原因となる食中毒菌です。熱を通しても毒素が無毒化されない特徴があります。
<ウェルシュ菌>
カレーやシチューなどを調理したときにおこりやすい食中毒菌です。芽胞を作ることで熱に強く長時間加熱しても死滅しない菌です。
<その他>
腸管出血性大腸菌(O-157)、サルモネラ菌、セレウス菌などがあります。
日常生活においてこれらの細菌を増殖させ、食中毒を引き起こしてしまう「食中毒の落とし穴」にはどのようなものがあるのでしょうか。
食中毒の落とし穴【その1 お弁当】
春から夏の時期は、お弁当箱の中はの30°C〜40°Cになります。これは、食中毒菌が最も増殖しやすい温度です。お弁当を完全な無菌状態で作ることは不可能です。食中毒を防ぐには、細菌を増殖させないための3つの対策「「つけない」「やっつける」「増やさない」を徹底しましょう。
対策1: 「つけない」
調理前には、十分な手洗いをしましょう。また、野菜などの食材は流水でしっかりと洗うことが大切です。
対策2: 「やっつける」
肉や魚は十分に加熱しましょう。中心温度が75°Cで1分間以上の加熱が目安です。加熱することで、肉や魚に付着している細菌を死滅させることができます。
対策3: 「増やさない」
お弁当には保冷剤を入れ、低温状態を保ちましょう。温度を低く保つことで細菌が増えるのを防ぎます。
食中毒の落とし穴 【その2 スープジャー】
スープジャーは、50°C以上(温かいもの)、20°C以下(冷たいもの)の温度をおよそ6時間程度保つことができます。これらの温度が保たれている間は菌の増殖を防ぐことができますが、時間が経過すると菌が繁殖しやすい温度(25°C〜40°C)になってしまいます。
対策1: 温度の上下を少なくする
容器の中身を可能な限りいっぱいにし、温度の上下を少なくするようにしましょう。
対策2: 容器をしっかり洗浄する
スープジャーを使う前は出来るだけ丁寧に容器を洗浄をし、菌の混入を防ぎましょう。温度が変化した場合に原因となる菌がいなければ、食中毒や食品の腐敗を予防することが出来ます。
食中毒の落とし穴 【その3 味噌汁】
ウェルシュ菌のような自然界に広く分布している芽胞菌は、100°Cに熱しても死滅しません。残った味噌汁を常温で放置しておくと増殖を開始する可能性があり、食中毒の発生原因になってしまいます。
対策: 速やかに冷蔵保存し、できるだけ早く食べきる
味噌汁の残りは、冷蔵庫で保存しましょう。低温にすることで菌の増殖を抑えることができます。また、なるべく早く食べきるように心がけましょう。
いかがでしたか? 生活の中でうっかりやってしまいそうなこともありそうですよね。大切な健康を守るために、日常生活における食中毒対策をもう一度見直してみませんか?