教えていただいたのは……久加亜由美さん
(株)マンダム先端技術研究所ライフサイエンス研究グループ。嗅覚測定を行うための国家資格である「臭気判定士」の資格を保持。2008年株式会社マンダム入社。2012年より体臭研究に携わり、デオドラントに関する基礎研究(体臭/制汗)に従事。
【汗とにおい】日常生活でもっとも気になるシーンは?
夏が近づき気温が高くなるにつれ、多くの人が悩んでいる汗とにおいの問題。
では実際に、日常生活のどのようなシーンに一番、汗やにおいによるストレスを感じているのでしょうか。
株式会社ジェイメックが実施した“ワキ汗・汗のにおいに関する意識調査”によると、ワキ汗や汗のにおいを気にするシチュエーション、1位は「エレベーターや満員電車など人が密着したところ」、2位は「急いだり、運動したとき」という結果になりました。
そのほか、プレゼンや面接、気になる相手とのデートのシーンなど、暑さ以外にも緊張により汗やにおいの悩みを抱える人も多くいることがわかりました。
また、マルホ株式会社が実施した“脇汗の悩みに関する意識実態調査”によると、脇汗に悩む人の半数以上が「人間関係や恋愛に支障が出ている」、「仕事や勉強に支障が出ている」と回答。
対人関係や仕事・勉強のパフォーマンスにも影響を与えていることが伺えます。さらに、7割以上が「服が汚れたり傷んだりしないか不安」と回答し、汗やにおいに対し、不満を抱える人が多くいることが分かりました。
【汗とにおいの基本知識】においには種類がある?
3種類の汗と2種類の汗腺
私たちの体から出る汗は、3種類。
体温上昇時に気化熱を利用して体温を調整する「温熱性発汗」、ストレス(緊張や興奮)を感じた時に出る「精神性発汗」、辛いものを食べた時などに出る「味覚性発汗」があります。
また、汗を出す「汗腺」は2種類あり、全身に分布する「エクリン汗腺」と、わきの下や陰部など体のごく一部に分布する「アポクリン汗腺」があります。
じつは、汗自体は「無臭」!?
体臭の原因は、汗と皮脂と皮膚の常在細菌の3つ。じつは、汗や皮脂そのものは臭いません。
時間が経つにつれて皮膚上で汗が皮脂と混ざり合い、さらにその汗や皮脂を細菌が代謝したり、大気中の酸素や過酸化脂質による酸化によって、におい物質が発生するのです。
体の部位による「においの種類」
体臭はさまざまな部位から発生しており、体の部位によって「においの種類」が違ったり、年代によって「においの種類」や「発生部位」が変化しています。
例えば、ワキは2種類の汗(エクリン汗・アポクリン汗)と2種類の皮脂 (皮脂腺から出る皮脂・角質層の中にある脂質)が要因でお酢・スパイスのようなにおいがしやすく、足はエクリン汗と角質層になる脂質が要因で納豆のようなにおいがします。
40代女性の”においの特徴”とは
ミドル世代の男性(30代半ば~50代半ば)が最も強くなることで知られる「ミドル脂臭」は男性特有の体臭ですが、女性も汗臭や加齢臭は発生します。(参考:マンダム、日本人男女の腋臭(ワキ臭)の違いを明確化)
マンダムの調査によると、40代女性の約4割以上の方が体臭の変化を実感しています。
体臭変化を実感している40代女性の体臭をさらに詳しく調査したところ、頭皮のにおいタイプが「水っぽい蒸れたような臭い」の汗様臭タイプであり、臭気強度(においの強さ)が高いことが分かりました。この臭気は40歳代以降の男性のミドル脂臭(使い古した油のような臭気)とは大きく異なります。
体臭の変化を実感している40歳代女性は、特徴的な頭皮臭があり、またその臭気強度は高いことが明らかとなりました。(参考:マンダム、40歳代女性特有の頭皮汗様(あせよう)臭を発見)
汗とにおいの問題は自分の体で起こることですが、その種類や実態についてはあまり知られていません。敵を倒すには、まず敵を知ることから。汗やにおいに関する正しい知識を得て、今後の対策に役立ててくださいね。
次回は、「梅雨のじめじめ季節前に知りたい!”朝・昼・夜で変える”研究員おすすめのワキのにおい対策とは?」で、具体的な汗とにおい対策についてご紹介します。