教えてくれたのは……マインドトレーナー 田中よしこさん
株式会社コレット代表取締役。心理学・脳科学、コーチングの知見を取り入れ、「自分を本当に知る」ことをメソッド化。個人セッションやセミナーなどを中心に、潜在意識を整え、本心と「未来の理想の思考」を引き出す方法を伝えている。著書に『自分の気持ちがわからない沼から抜け出したい』(KADOKAWA)がある。
「自分はすべて正しい」と思い込む人に共通する深層心理
日常生活で、自分の意見や行動が常に正しいと信じて疑わない人に出会うこともありますよね。
そういった人と接すると、自分の意見が言いづらかったり、気疲れしてしまうこともあるでしょう。自信がない人から見ると、時には羨ましくも思えるかもしれません。
今回は、「自分はすべて正しい」と思い込む人の心理的な特徴をお届けします。
1. 過去の成功体験の影響を受けている
過去に成功体験が多い人は、その成功体験を根拠に自分が正しいと信じる傾向があります。
心理学者アルバート・バンデューラの自己効力感理論によると、過去の成功体験は自己効力感を高め、自分の能力を信じる基盤となるとのこと。
自分を信じる力自体はとても素晴らしいのですが、これが強すぎると、他の意見を排除しがちになり、自分の方法が常に正しいと思い込んでしまうのです。
私たちには、“バイアス”と呼ばれる心理の作用があります。これは、「〇〇だから〇〇に違いない」と自分が信じる情報に沿って行動を起こし、それに反する情報はスルーする傾向があることを指します。
自分が常に正しいと思い込む人には、「バイアスが強めな人なんだ」と思って接するとよいでしょう。自信がない、間違っていると感じる人は、反対のバイアスをもっている可能性があります。自分自身にも「バイアスがあるかもしれない」と認識できるとよいでしょう。
2. 自分の間違いを認められない
「自分はすべて正しい」と思い込む人は、自分の価値を高く保っていたいという願望をもっている傾向があります。間違いを認めることで自己価値が低くなると感じているため、肯定的な情報を優先的に選んで受け入れ、否定的な情報からは目を背けがちに。自分の意見が正しいと信じることで、評価されたい、認められたい自分を表現してしまうのです。
私たちは、いつも常に正しい選択ができるわけではありません。間違いや失敗は自然なことであり、それを受け入れつつ共に成長していきましょう。
3.自尊心が低い
心理学者ロイ・バウマイスターは「人は自尊心を守るために、自分の過ちを認めることを避ける傾向がある」と指摘しています。自尊心を守るために、自分が間違っていることを認めるのが難しくなるのです。
「あなたは間違っている」と言われるよりも「あなたは正しい」と言われるほうが自尊心が満たされるかもしれません。ただそれはあなたの“考え方”に対して「ここは正しい」「それは間違っている」というコミュニケーションである、と捉えるようにしましょう。自分の“存在自体”が正しいか間違っているかといった捉え方をしてしまうと、誰でも間違いを認めにくくなってしまいますよね。
正しさを押し付けてしまいがちな人は、この考え方を身につけておきましょう。
自分のものさしだけで判断せず、他人の意見も受け入れる
自分がすべて正しいと思い込む人の深層心理には、実は「自分を守りたい」「成功を維持したい」という気持ちが根底にあることが多いのです。そして人はそれぞれ異なる背景をもっているため、何が正しくて何が間違っているのかを一括りにして判断することはできません。
他人の意見を受け入れて自分の考えを見直すことは、成長の一歩。自分の考えだけに固執するのではなく、他人の考え方も柔軟に受け入れながら、より幸せで心地よい毎日を過ごしていきましょう。