苦手な行事になると“お腹が痛い”と言い出すわが子。「子どもの訴え」との正しい向き合い方

家族・人間関係

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2024.10.17

臨床心理士・公認心理師のyukoです。発表会や学校の行事、授業で前に出て話さなければいけない日になると「お腹が痛い」と言い出してしまう子がいます。気のせいだから大丈夫と流すのがよいのか、本当に痛いのなら休ませた方がよいのか。子どもの訴えとの付き合い方を考えます。

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「お腹が痛い」と訴えるわが子。これは仮病?

幼稚園の頃から運動会や発表会が苦手なわが子。それでも小さいときはなんとか頑張ることができていた。しかし小学校に入ってからは行事の前になると「お腹が痛い」と言い出すように。その都度休ませたり、行けそうだったら頑張らせたりしているけどこのままでいいのかな? おそらく仮病だと思うけど、どうやって関わればいい?

お腹が痛い子出典:stock.adobe.com

子どもの体調不良は当然心配だけど、その訴えが仮病だとしたら?
子どもの言うことをそのまま飲み込んで休ませるのはよいことなのか、迷われる方は多いですよね。

親自身が育ってきた環境も関係してくるでしょう。何を言っても厳しく「学校に行きなさい」と言われていた場合、子どもにはそう接するのが当然と考える方もいるかもしれません。一方、厳しく行かされたために辛い思いをした方は、自分の子どもだからこそ優しく育てたいと感じる方も。

子どもが「おなかが痛い」「頭が痛い」と訴えてきたときの対応について考えます。

まずは一度医療機関に。

おそらく仮病だろう、と思っていても、必ず医療機関には行ってください。親の予想とは反して疾患が隠れているケースもまれにあり、見落としにつながる可能性があるからです。
また、胃潰瘍などの疾患は大人がなりやすいイメージですが、子どもにもなりうるもの。強いストレスが体を攻撃し、実際症状として表れている場合もあるんですね。

身体の問題ではないとわかったとき、どうすればいい?

小児科や消化器科に受診をしても異常がない場合、多くのケースでは心の不調を疑われます。ここで意識しておきたいのは「仮病」ではなく「心の不調」であること。

昔は「心の弱さ」といわれ、強くしつけられる子も多かったのですが、それでは余計に重症化することがわかり、今は「心の不調」と理解し、ケアしていくことが求められています。

話をする親子出典:stock.adobe.com

嘘を責めたり、親をだまそうとしたと捉えるのではなく、「痛みを訴えないといけないほどの辛さを抱えている」と理解するのが第一です。「お腹が痛くなるほど嫌なんだね」と受け止めてから、対策を一緒に話し合っていくのがよいでしょう。

「休むこと」のメリット・デメリット

親としては、「一度休ませると長期化するのでは?」「苦手から逃げる子になってしまっていいのだろうか」など、様々な心配が頭をよぎるかと思います。
しかし一般的には、明確に理由がわかっている場合は一日休ませても長期化しにくいもの。「人前で緊張してしまうから発表会が嫌だ」「ミスをするのが怖いから集団行事が嫌だ」と理由が話せる場合、その日を乗り越えられれば次の日からは頑張れる子が多いです。

走る少年出典:stock.adobe.com

では、「嫌」と言っていることを受け入れて休ませるのにはどんな影響があるでしょうか。
よく言われるのは「逃げ癖がつく」。
たしかに休むデメリットとしては、「いざやってみれば意外と大丈夫だった」という成功体験が得られない点があります。避けることで乗り越えていく手段を身に着けると、苦手は苦手のまま時間が過ぎていくというデメリットはたしかにあります。

一方捉え方を変えて「回復・成長を待つ期間にしてみる」視点でも考えてみます。

子どもが「嫌だ、不安だ、怖い」と訴えるとき、その気持ちの背景には「でもきっと叱られるだろう、行けと言われるだろう」とわかっている子が多いです。そんなとき「じゃあ今回は休もうか」と言い、親が受け入れるとどうなるのでしょうか。

その後の経過は子どもによって様々です。

  • 休んだことでその日は安心できたけど、心の中でもやもやし、罪悪感のようなものを感じる。
  • 小学校1年生のときは運動会を欠席にした。小学校2年生になり、担任やクラスメイトが変わり環境が変化したので、なんとなく今年は少し参加しようかなと思えた。
  • 相変わらず行事は苦手だけど、休んでいいと言ってくれた親に安心感を感じられた。ママ・パパがそばで見守ってくれているなら一歩踏み出してみようかな。

運動会出典:stock.adobe.com

休んだからといって、必ずしもすべてが逃げ癖につながるわけではありません。

答えを出すのは難しい問題ですが、その子の、その状況にあった対応を見出していけるといいですよね。

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著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。

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