教えてくれたのは……佐賀 俊文先生
公立学校共済組合関東中央病院 心臓血管外科部長/二子玉川女性のクリニック。杏林大学医学部卒業。日本外科学会外科専門医、心臓血管外科専門医、脈管専門医・指導医、血管内治療認定医。心臓大動脈の治療から下肢静脈瘤などの末梢血管治療まで幅広くこなす。メスを握る手術とカテーテルによる治療の両刀を使いこなすハイブリッド外科医。
実は、日常生活のさまざまな場面に危険が潜む「ヒートショック」
前回の記事では「ヒートショックを起こすリスクが高い人の特徴」や「起きたときの対処法」について伺いました。ヒートショックは入浴時に起こるイメージがありますが、佐賀先生によると、実際には日常生活のさまざまな場面に危険が潜んでいるのだそうです。
佐賀先生:ヒートショックは、急激な温度差が引き金になります。日常生活での具体例としては、冷えた脱衣所から入浴すること、起床後に薄着でトイレに行くこと、またはゴミ出しで外に出ることなどが挙げられます。急激な温度変化により、起こりうることは以下のとおりです。
体が冷え切った状態で急に熱いお風呂に入浴した場合
佐賀先生:手先や足先の血管が拡張し、血液が体の中心から末梢に移動します。これにより、体幹部の血圧が急激に下がり、脳への血流が低下することになります。そのため、意識障害、めまい、眼前暗黒感(目の前が急に暗くなること)、悪心(吐き気)が出現することがあります。
寒い場所に出た場合
佐賀先生:寒い場所に出たときには、上記の反対です。生体反応により、体温を逃さないように手先、足先の末梢の血管がキュッと閉まり、血液は体の中心部に集まります。これにより、体幹の血圧が急激に上昇し、心臓、大動脈、脳の血管にストレスがかかって破れたり裂けたり、または詰まったりして、血管疾患を引き起こすことがあります。
ヒートショックを予防するために意識したいこと
ヒートショックのリスクを減らすために、日常生活の中でできることはあるのでしょうか。佐賀先生に予防策を教えていただきました。
佐賀先生:まずは、自分がヒートショックのリスクをどれほど持っているかをしっかりと把握することが大事です。その上で、基礎疾患や生活習慣病に対する治療の必要性も含めて、検診などで指摘を受けた点に関しては医療機関を受診しましょう。喫煙は、受動喫煙も含めて動脈硬化の最大のリスク因子とされています。家族歴は、血縁者はもちろんのこと、食生活や行動など同じ生活習慣を持つ配偶者の既往も参考になります。
日常生活においては、脱衣所に暖房器具を設置する、朝に暖かい格好をしてから行動するなど、寒さから身を守る対策をしっかりと行いましょう。また、飲酒時には特に注意が必要です。深酒状態での入浴は控えるようにしてください。