教えてくれたのは……クックデリ株式会社 山村愛美さん
2021年 クックデリ株式会社入社。管理栄養士として、福祉施設や病院向けに献立作成をする傍ら、2022年9月に立ち上げられた「クックデリ認定栄養ケア・ステーション※」の開設に携わる。地域の健康づくりに貢献するため、管理栄養士としての専門知識を活かした取り組みを行っている。
※食・栄養の専門職である管理栄養士や栄養士から栄養ケアの支援・指導を受けることができる地域密着型の拠点として、日本栄養士会から認定されている施設のこと。
健康維持に欠かせない「果物」
日本は四季折々に美味しい旬の果物が実り、独特の香りや甘味で私たちの食生活を豊かにしてくれます。
果物はただ美味しいだけでなく、身体の調子を整える作用を持つビタミンや、ナトリウムの排泄を促すカリウム、お腹の調子を整える作用を持つ食物繊維が豊富に含まれており、昔から『1日1個のリンゴは医者いらず』『柿が赤くなれば医者が青くなる』ということわざがあるくらい、健康維持には欠かせない食品です。
最近の研究では、心臓病、高血糖、肥満を予防する可能性があるといわれており 1)、果物の効果について世界中で注目されています。
果物を食べすぎると「肥満」の原因になることも
ただし、果物に含まれる果糖を過剰に摂取すると、中性脂肪の増加と肥満になる可能性が考えられるため、摂取量には注意が必要です。今回は、私が経験した食事カウンセリングの事例をご紹介します。
Aさんの相談内容
相談者のAさんは「減量したいから食事に気をつけて、お菓子をやめて果物を食べるようにしているのに体重が変わらない!」と、おっしゃっていました。ある日のAさんの食事内容を見てみましょう。
◆<Aさんの食事内容>
朝食:食パン、コーヒー、ヨーグルト、サラダ、目玉焼き
10時のおやつ:みかん2個、バナナ1本
昼食:ごはん、唐揚げ、サラダ、味噌汁
昼食後:りんご1個
15時のおやつ:柿2個
夕食:焼き魚、煮物、お浸し、漬物
夕食後:みかん1個、柿1個
Aさんに「たくさん果物を召し上がっていらっしゃいますね?」とお聞きすると、「健康のために果物はたくさん食べるようにしています。栄養満点で砂糖も使われていないからおやつ代わりにしているんです。」と、自信満々に答えてくださいました。
Aさんが減量できなかった原因
なぜ、Aさんは減量に成功しなかったのでしょうか。
身体に嬉しい効果がいっぱいの果物ですが、ビタミンやミネラルの他に、果糖(フルクトース)やブドウ糖(グルコース)を多く含んでいるため、食べすぎた場合は肝臓で中性脂肪に合成され、脂肪の状態で貯蔵されます。2)3)
つまり、Aさんは良かれと果物を召し上がっていましたが、果糖やブドウ糖の摂り過ぎで体重が上手く落ちなかったのです。果物は過剰に摂りすぎると肥満の原因にもなりますので、食事の一環として適正な量を食べましょう。
果物の1日の適正量はどれくらい?
では、1日どれくらいの果物を食べればよいのか、適正量をご紹介します。
【日本人の食事摂取基準(2020 年)】では、1日の栄養量を満たすには、1日200g~300gの果物を摂取するよう推奨されています。主治医から、食事についての助言がない場合、この基準を満たす果物の量は、みかんなら2個、りんごなら1個、いちごなら10~15粒程度が目安です。
ただし、フルーツジュースは糖分が多く、加工の際に食物繊維が取り除かれることもありますので、フレッシュな旬の果物を摂取すると良いでしょう。
農林水産省が提唱している【食事バランスガイド】では、食事では補えないビタミンC、カリウムなどの供給源として果物の摂取が推奨されています。果物は食事だけでは補えない栄養を補給できる大切な食品です。適正量を知り、上手に食事に取り入れましょう。
果物と合わせて食べると腸内によい「食品」とは
1日の摂取量が適正であれば、複数の果物を組み合わせることで、さまざまな栄養素を取り入れることができます。それらの栄養素が体内で働くことで、体の調子を整えるなどの効果を期待できます。
また、果物に含まれる食物繊維と、乳酸菌が豊富なヨーグルトを一緒に食べるとことで、腸内で良い働きをする善玉菌が増えたという報告もあります。4)
果物だけでは摂取しづらいカルシウムやたんぱく質も補えるので、おやつの代わりに食べるのもオススメです。
皆さん、いかがでしたか?
日本人は諸外国と比較し、全体的に果物の摂取量は少ない傾向にあります。果物の良い効果を取り入れながら、バランスの良い食事で毎日健康に過ごしましょう。
参考文献:
1) Ahmadi-Abhari, S., Luben, R. N., Powell, N., Bhaniani, A., Chowdhury, R., Wareham, N. J.,...&Khaw, K. T. (2014). Dietary intake of carbohydrates and risk of type 2 diabetes: The European Prospective Investigation into Cancer-Norfolk study. British journal of nutrition, 111(2), 342-352.
2) 公益財団法人 中央果実協会 果物が好き!になるパンフレット 資料編
3) Stanhope, K. L. (2016). Sugar consumption, metabolic disease and obesity: The state of the controversy. Critical reviews in clinical laboratory sciences, 53(1), 52-67.
4) Yang, J., Martínez, I., Walter, J., Keshavarzian, A., & Rose, D. J. (2013). In vitro characterization of the impact of selected dietary fibers on fecal microbiota composition and short chain fatty acid production. Anaerobe, 23, 74-81.