創業51年 喫茶サンシャイン移転前最後の日 「その瞬間」店内は温かな拍手であふれた。

カルチャー

2025.05.10

大阪の人気スポット梅田で、51年もの長きにわたって愛されているのが「喫茶サンシャイン」。ビルの老朽化により、長年親しまれた店舗を4月15日に一旦閉店した。徒歩3分の場所に移転が決まり、SNSではファンの間で安堵の声が広がったが、やはり「最終日にもう一度!」と詰めかけた人々の熱量と愛情は想像以上だった。

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大阪 喫茶店 梅田

ホットケーキ

「大阪 梅田 喫茶店」で検索をすると、AIがこう答えてくれる。

大阪の梅田エリアには、老舗の純喫茶からモダンなカフェまで、様々な喫茶店があります。特に有名なのは、自家焙煎コーヒーが美味しい「喫茶サンシャイン」や……

出典: Google prodadmin.saita-puls.com

 この日は51年もの間、営業を続けた日興ビルでの営業最終日。名残惜しい時間を味わう人々にお話を伺った。

「半休取って来ちゃいました!」

お客さま

【16:35】

主におひとりのお客さまが多く使われるセンターの大テーブル。
モーニングの時間には、特に人気で常連さんが定位置に座られるというお話を以前伺った。
さて、最終日の夕方にこの席におられるのはどんな方かな? とお声かけさせていただいたのは、ピザトーストとプリンにブレンドコーヒーをご注文の女性。

ーー今日が最終日というのはご存じでしたか?

プリンさん:はい、もちろん。移転すると知ってから何度か来たんですが行列が……ここのプリンが大好きで。あ、写真? ピザトースト半分食べちゃってますけどいいですか?(笑)

ピザトースト

ーー今日はお仕事帰り?

プリンさん:……っていうか、半休を取って並んだんですよ(笑)。「あ、最終日に来れるやん!」って急いで来てみたら行列も短めだったので。

ほんわか優しい笑顔とは裏腹に? この日のために半休を取るとはかなりの強火ファン。恐れ入りました! 

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あ!Kちゃん!

かおるちゃん

【16:42】

お話を聞いている間に、行列の2番目に並んでいた友人のKちゃんが入店していた。大テーブルに座り、文庫本を読んでいる。実は2年前の秋ごろ、私は彼女からここでホットケーキを食べながら、とても大切なお話を聞いた。人生のターニングポイントとも言える大きな決断を前に、私に心の内を打ち明けてくれたのだ。それ以前も以降も変わらずお互いにひとりでもふたりでもサンシャインに通い続けている。

ミックスジュース

ホットケーキとオムライスの大ファンだけど、ミックスジュースを注文したのはこの日が初めてとのこと。「思い出多いこの場所で今日はミックスジュースを」と決めていたらしい。いつも上手に風景や料理の撮影をするKちゃんの様子を後ろから撮らせてもらった。

思い悩んだ日々もあったけれど、とても幸せそうにここで過ごす彼女の姿を見て、知り合ってから今日までの日々を思い返していた。

まさかの!?2日連続のご来店

イタリアン

【17:11】

サンシャインでは、玉ねぎ、ピーマン、ハムに焦がしたケチャップで味付けをしたこのスパゲティ(敢えてパスタとは言わないでおこう)を「イタリアン」と呼ぶ。

イタリアン

ーーよくこちらには来られるんですか?

Mr.イタリアン:はい、よく。昨日も来て「今日が最後」と知って、また来ました。

ーー2日連続ですか!

Mr.イタリアン:移転とはいえ、やっぱり今日が最後なんだったら来たいなと思って。

サンシャインファン選手権が催されようものなら、大テーブルのプリンさんと決勝で対戦? しそうな発言である。天晴!

「移転しても、もちろんです」

ご夫婦

【17:16】

笑顔で静かに語り合うのは「ホットケーキが大好き!」と仰るご夫婦。
醸し出す雰囲気がいかにも常連さん。インテリアにも照明にもファッションごと、話し声ごと溶け込んでおられる。

「そうですね。よく来ますよ。」「移転先が近くて良かったです。もちろんです、通います(笑)。」

そして…閉店の瞬間

拍手画像を一部加工しています。

【17:40】

最後のお客さまが入店され、マスターがカウンター前で「営業中」のプレートを手に持ち、少し控えめに「長い間ありがとうございました」とご挨拶された瞬間、店内の全てのお客さまから温かい拍手が! おひとりさまは静かにスプーンやフォークをテーブルに置いて顔を上げ、それ以外の方々はお話を一瞬止めて……。

マスター

時間にすると10秒くらいの間だったけれど、51年の歩みを象徴する尊い瞬間だった。
マスターの奥さまは涙ぐまれ、スタッフさんたちも小さく何度も会釈をして、感謝の気持ちを伝えていた。

初代マスター登場!

閉店前

【17:51】

名残惜しい時間を過ごした後、ひとりふたりとお客さまは席を立たれ、店内をスマホで撮影しながら帰路につかれた。
お会計の時にひと言ふた言、マスターと言葉を交わす方やスタッフさんに丁寧にお礼を言う後ろ姿を見送ってしばらくした後、初代マスターが登場。

初代マスター

がらんとした店内の大テーブルから、この最後の時間を噛みしめておられるようだった。
以前、密着取材をさせていただいたことと大切なこの日に伺わせていただいたお礼を言うと、笑顔で「そう、今日は最後でね。近くに息子がいい場所を見つけて来てくれて本当によかったと思って。」と、天井を見上げてしみじみと……。その横顔は寂しさよりも充実感で溢れ、とても満足そうだった。

最後のお客さまを見送って…

最後のお見送り

【17:57】

いよいよ最後のお客さまを見送り、喫茶サンシャインの51年にも及ぶ第1章は幕を閉じた。

丁寧にドアの外に出てお見送りを済ませた2代目マスターご夫妻が、スタッフさんに「お疲れさまでした」と声を掛け、一見すると普通の一日のよう……聞けば翌日からは引っ越し作業が始まるとのこと。ホッとひと息ついている暇は無い、

インテリア

新店舗はインテリアもできるだけ旧店舗に近づける予定で照明器具やイラストなどの装飾も一緒にお引越し。壁や天井、床などの雰囲気も違和感のないよう工夫する。
第2章を大阪駅前第3ビルで迎えるのは5月23日。喫茶サンシャインにまた多くのドラマが新たに刻まれていく。

新店舗は徒歩3分

地図

ホームページ(https://www.kissa-sunshine.jp/
Instagram(https://www.instagram.com/kissa_sunshine/

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著者

みやむらけいこ

みやむらけいこ

ライター歴20年。「あなたに逢いに行きます」取材ではなく出会い、インタビューではなく会話。わかりやすい言葉で丁寧に「ひと」を伝えます。好きなものは、サーフィンと歌舞伎、主食はチョコレート。#人生はチョコレート

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