なぜ、結論よりもプロセス?
「対話は『より良い結論』を出すためにするのでは?」と思う方も多いかもしれません。 とくに、夫婦で意見が割れてしまったときなどは。
子どもの受験、習い事、家族の引っ越しなどの大きな話から、 旅行はどこに行くか、外食はハンバーグか回転寿司か、みたいな小さな話まで……。
どうしたらお互いが納得感のある対話ができるのでしょうか。
実は、結論を急ぐほど、夫婦の溝は深くなりがちです。「どっちが正しいか」「どちらの意見を採用するか」という白黒つけたがる思考になると、どうしても相手を論破しようとしてしまいます。
でも、夫婦は勝ち負けを決める関係ではありませんよね。お互いの考えや気持ちを理解し合い、一緒に最適解を見つけていく関係のはず。そのためには、「結論に向かう過程」を大切にすることが欠かせないんです。
プロセスを重視することで、「私はこう考えているんだな」「夫はそういう価値観なんだな」という理解が深まります。そして、その理解こそが、夫婦の絆を強くしてくれます。
「結論ありき」から「気持ちファースト」へ
プロセス・コミュニケーションの第一歩は、「気持ちファースト」の姿勢です。
例えば、子どもの習い事について話し合うとき。「英語教室に通わせたい」という結論から入るのではなく、「子どもの将来が心配で……」という気持ちから話し始めてみてください。すると、パートナーも「確かに、将来のことは僕も気になってた」「でも、今は子どもらしく遊ぶ時間も大切だと思うんだ」と、同じ土俵で話ができるようになります。
「どの習い事にするか」という結論を急ぐより、「子どものことを思う気持ち」を共有することで、二人の距離がぐっと縮まります。そして、その上で一緒に考えた結論は、お互いが納得できるものになりやすいんです。
旅行先を決めるときも同じです。「沖縄がいい」「北海道がいい」と主張し合うより、「家族でゆっくりしたいね」「子どもに新しい体験をさせてあげたいね」という思いを確認し合う。そこから一緒に候補を考えていくと、自然と全員が満足できる答えが見つかります。
「聞く」技術がプロセスを豊かにする
プロセス・コミュニケーションで最も大切なのは、「聞く」技術です。
相手の意見に反論したくなったときこそ、まず深く聞いてみてください。
「なるほど、そう考えているんだね。その理由をもう少し聞かせて」
「そういう見方もあるのか。私は気づかなかった」
こんな風に、相手の考えに興味を持つ姿勢を示すと、パートナーも安心して本音を話してくれます。そして、話しているうちに、相手も自分の考えを整理できて、新しいアイデアが生まれることもある。
また、「私はこう思うんだけど、あなたはどう感じる?」と、相手の意見を求める問いかけも効果的です。一方的に話すのではなく、対話のキャッチボールを意識することで、お互いの理解が深まります。
大切なのは、「正しい答え」を見つけることではなく、「二人で考えている」という実感を共有することです。
時間をかけることで見えてくるもの
「でも、そんなに時間をかけて話していられない」と思う方もいるかもしれません。確かに、忙しい日常の中で、毎回じっくり話し合うのは難しいでしょう。
でも、大切な決断ほど、プロセスに時間をかける価値があります。急いで結論を出して後からモヤモヤするより、最初にしっかり話し合って、お互いが納得できる答えを見つける方が、結果的に時間の節約になります。
また、プロセスを大切にした対話を重ねることで、夫婦の「話し合いの型」ができてきます。お互いの考え方のクセや、大切にしている価値観が分かってくると、日常の小さな決断も驚くほどスムーズになります。
「うちの夫婦は話し合いが得意」という自信も生まれて、どんな問題が起きても「二人で乗り越えられる」という安心感につながります。
夫婦の対話は「チームづくり」
プロセス・コミュニケーションの本質は、夫婦が「チーム」になることです。「私vs夫」ではなく、「私たちvs問題」という構図で話し合えるようになると、どんな課題も一緒に解決していけます。
結論を急がず、まずはお互いの気持ちを確認し合う。相手の意見を最後まで聞き、自分の考えも丁寧に伝える。そして、時間をかけて一緒に答えを見つけていく。
そんな対話ができる夫婦は、きっと何年経っても仲良しでいられるはず。ぜひ今日から、「結論よりプロセス」の対話を試してみませんか?