「自分なんて…」自己否定をする子どもへ“親が伝えたい言葉”

家族・人間関係

2025.10.13

臨床心理士・公認心理師のyukoです。子どもが「自分ってダメかも……」と口にしたときに、どのように返答していますか? 「そんなことないよ」「こんな良いところあるじゃん」などと伝えても表情が晴れないとき、どのように考えたらよいのでしょうか。自信のなさの背景にある気持ちを見つめ、受け止め方を考えていきましょう。

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「自分なんて」の背景にある“ものさし”とは?

「俺がいても意味ないから、部活やめようかな。」
サッカーの試合でミスをして、チームメイトから責められた日の夜、小6の息子が呟く。最近は、クラスの友達とも少し距離を置かれている様子。「そんなこと言わないで」「あなた頑張ってるよ」と励ましたけれど、黙り込むばかり。どう励ましたらいいのだろう。

落ち込む子ども出典:stock.adobe.com

子どもが自分を否定するような言葉を発するとき、そこにはただの失敗や落ち込みだけではなく、子ども自身の評価軸が垣間見えることがあります。

子どもが「自分ってダメかも」と言うとき、私たちはその言葉を「つらい気持ちの吐露」、すなわち感情の表出として受け止めがちです。
しかし、同時に気にかけたいのが、「その子が自分をどんな“ものさし”で測っているのか」という“評価軸”の存在です。

たとえば、

  • 「テストで90点だった。でも100点じゃないからダメ」
  • 「あの子より太っているから自分は劣ってる」
  • 「お母さんが喜ばないから、自分には価値がない」

ここに共通しているのは、“誰かの基準”や“条件つきの価値観”で自分を評価している点です。

子どもが自己否定するとき、その背後には「どんな価値観を内在化しているか」という、心の構造の問題が潜んでいます。
これを見逃して、表面の感情にだけ反応すると、子どもは「根本の部分をわかってもらえなかった」と感じてしまうんですね。

ものさしを作りなおす作業が必要

「十分頑張ってるよ」「そのままの姿でいいんだよ」などの声かけなど、励ましや共感ももちろん大切です。
加えて、子どもが自分を測っている「ものさし」を、一緒に再編集することも求められます。

今、多くの子どもは、家庭・学校・SNSなどの影響で、“偏った評価軸”を自然に取り込んでしまうことがあるんです。

たとえば、

  • 「スポーツ、勉強、容姿のどれかが人より優れていないといけない」
  • 「努力できない自分は、価値のない自分」
  • 「SNSのフォロワー数が少ない=友達が少ない」

落ち込む子ども出典:stock.adobe.com

こうした評価ルールが知らず知らずのうちに子どもの心に根を張っていることがあるんですね。
そこで必要になるのが、「それって本当にそうかな?」と問いかけ、親子で評価軸を見直す作業。

  • 「100点じゃないとダメって、いつからそう思ってたんだろう?」
  • 「“できないと意味がない”って、誰が決めたんだろうね?」
  • 「容姿の良し悪しは誰が判断してるの?」
  • 「友達は多ければ多いほどいいの? フォロワ―は本当の友達になるの?」

子どもが無意識に取り込んだ「自分への評価基準」を見直していくための手助けが必要なんですね。

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 「見方を変える力」を育てていく

大人も子どもも、誰かと話したり、本や記事を読んで別の人の考え方に触れる中で、自分の考えを見つめなおすことができます。
しかし、「自分の価値観はゆるぎないもの」と信じ込んでしまっている子も多いもの。
まずは子どもに、「自分を苦しめている考え方は変えてもいい」と伝えていくのが大切なんですね。

親が評価のものさしを一緒に見つめ直すことで、

  • 「あ、別の見方もできるんだ」
  • 「今の考えが“真実”じゃないかもしれない」
  • 「この”ダメ”は自分の思い込みかも?」

考える子ども出典:stock.adobe.com

“ものの見方を問い直す力”が、自己肯定感の土台となる「柔軟な自己評価」の育ちにもつながっていきます。

“励ます”でも“正す”でもなく、「その子が持つ“評価のものさし”を一緒に見つめ直す」
子どもが自信のない発言をしたときは、ものさしを変えるチャンスと捉え、何が大切なのかを一緒に考えてあげてみてください。

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著者

yuko

yuko

臨床心理士・公認心理師。現在は小児の総合医療センターと大学の心理教育相談センターにて勤務。児童期から思春期の子どもへのカウンセリングやプレイセラピー、子育てに悩む保護者の方への育児相談を専門にしています。色彩心理学やカラーコーディネートについても学んでおります。

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