「確認したのに」「買ってあげたのに」というモヤモヤ
子どもが「これやりたい!」と言うと、親としては応援したくなります。
「本当にやりたいの?」「途中でやめたりしない?」と確認して、必要な道具も買い揃えて、いざスタート。ところが数ヶ月経つと「疲れた」「行きたくない」と言い始める。そんなとき、親としては「確認したのに」「道具も買ったのに」というモヤモヤが湧いてきます。
「信用」と「信頼」は違う
ここで少し考えてみたいのが、「信用」と「信頼」の違いです。
「信用」とは、担保があること。 「信頼」とは、担保がなくても信じて、頼ることができること。子どもが「やりたい」と言ったから、確認をして、道具を買って、希望を叶えてあげた。この確認や道具を担保に、親は子どもを「信用」していた状態です。
だからこそ、それだけ担保をしたのに行きたがらなくなると「約束が違う」と感じてしまうのです。
娘が卓球を始めたときのこと
じつは、わが家の娘も同じような経験をしています。
当時8歳だった娘が、近所の卓球クラブを外から見て「楽しそう!やりたい!」と言い出しました。当時、娘はプログラミング教室にとても楽しく通っていたのですが、両方は通えません。そこで「プログラミングをやめてもいいの?」「卓球をどれだけやってみたいの?」と丁寧に確認しました。
娘はそれでも「卓球がいい!」とキラキラした目で言います。そこでラケットやシューズを買いに行きました。そのときのウキウキした様子は、今でも覚えています。ところが半年ほど経つと「足が痛い」「疲れた」と、行きたがらなくなってきたのです。
親としての正直な気持ち
正直に言うと、僕も「せっかく入ったのに、もったいない」と思いました。がっかりもしました。でも同時に、やってみて続かないことを無理に続けさせても意味がないとも思っていました。
そこで、なぜ行きたくないのかを丁寧に聞き出しました。そして娘が「やっぱりプログラミングに戻りたい」と言ったとき、「卓球をやめることになるけど、それでいい?」と確認して、認めました。
「担保なしで信じる」ことで生まれる良いサイクル
ここで大事なのは「次もまた同じことになるのでは?」と不安にならないことです。
また何かを始めて、すぐに辞めてしまうこと自体は問題ではありません。
それよりも、続かないことを恐れて、やりたいことに挑戦できなくなる方が問題だと、僕は考えています。
やってみたからこそわかることがあります。娘は卓球教室で近所に新しい友だちもできました。卓球という新しい世界を知り、やってみて、思ったほど楽しくなかったけれど、それも大切な経験です。
そしてまたプログラミングに戻ったり、違うことを始めてみたりする。このサイクルこそが、子育ての上でとても大事なのではないでしょうか。
いま小学5年生になった娘は、楽しくプログラミングに通っています。卓球をやったことを、僕も娘も後悔していません。
子どもを「信頼する」ための実践ヒント
では、具体的にどうすればいいのか。
まず、子どもの気持ちはすべて本当であると受け止めることです。
「やりたい」という気持ちも本当。やってみて「違うな」と思った気持ちも本当。「戻りたい」という気持ちも本当。そこに担保も、信用の材料も必要ありません。
そして、もう一度希望を聞き入れてあげる。「二度とこんなことするなよ」なんて余計な担保はいりません。垣根なしで信頼する。
信頼されていることを感じると、子どもはその信頼に応えたいと思うようになります。そして、安心して新しいことに挑戦できるようになるのです。
一歩ずつ、子どもを信じる
完璧な子育てなんてありません。僕自身も「もったいない」と思う気持ちはありました。でも、担保なしで子どもを信じることで、子どもは自分で考え、選び、挑戦する力を育んでいきます。
それが子どもにとっても、親にとっても、家族にとっても、きっと良いサイクルになっていくはずです。