「書く人」たちの意外な答え
編集者ののんさんとライターのぐんちゃんは、ふたりとも日々「書く」ことを仕事にしている。だから当然、手帳も仕事用だと思っていた。ところが返ってきたのは、思いがけず軽やかな答え。
「仕事には、使ってないです(笑)」
「私もです(笑)」
まさかの一致に驚いた。デジタルでスケジュール共有をする編集者と、付箋でタスク管理をするライター。
そこには、ふたりなりの理由があった。

のんさんが毎日書き始めたきっかけは、日付を自分で書き込むスタイルの「夜とカフェオレと日記帳」。
「今日の振り返りと明日やることがそれぞれ7行っていうのが、ちょうどよかったんです」
しばらく止まっていた書く時間がそこから少しずつ日常に戻ってきた。今は1日2ページの「hibino」を使っている。
「土日にやりたいことの『時間割』を時間軸に書いて、そのあと振り返りを書くのが好きです。え? 何を書いてるかって? 例えば……『犬を洗う』とか(笑)」
平日は編集者として、常に誰かと予定を共有する立場。だから仕事のスケジュールやタスク管理は完全にデジタル派。合理的に、効率的に。それが仕事のスタイル。でも、感情までは共有しなくていい。
できたことを書き留めて、小さな達成を自分で確認する。そうすることで、気持ちが少し前を向くことを、のんさんは実感してきた。仕事のモチベーションが落ちた時期もあったという。
「書き出してみたら、意外と大したことなかったりして(笑)本当にアウトプットって大切だなって気づきました。」

ワンちゃんのそばに1冊の手帳。そこには「編集者」ではなく、生活者としてののんさんがいる。
手帳は、原稿じゃないから提出もしないし、校正も評価もされない。仕事とは違ったテキストとの向き合い方に彼女は気づいたようだ。さらに、こんな言葉も聞くことができた。
「悩みがちな友だちに手帳をすすめたい。プレゼントにいいなって。」
解決はできなくても、気持ちを置いておく場所は必要ーーそんな、のんさんの実体験がこの言葉になった。
付箋にシゴト、手帳にマインド

ぐんちゃんも、手帳を仕事には使わない。「仕事のタスクは付箋にびっしり書いてます(笑)」小さな付箋に細かな文字、それらを校了と同時にペンで消す。作業の進捗を彼女なりの方法で把握している。
一方、手帳に書いているのはもっと個人的なことだ。
「日記とか、プライベートのタスクですね」
夫が単身赴任。平日の夜、話し相手がいない……そんな暮らしのなかで、気持ちの行き場がほしかった。
「吐き出す場所が欲しかったんです」
誰にも見せない。だから正直に書ける。
「うまく書こうと思わないようにしたら書くのが楽しくなりました。誰も見ない前提のはずなのに、上手にとかきれいにとか手帳ってそんなものだと勝手に思い込んでハードルを高くしていました」
仕事では「読まれる前提」で文章を書く。でも手帳は違う。あるのは、自分の今の気持ちだけ。
書くことで、気持ちが整理され、つい不安や悩みを作りがちな自分のクセにも気が付いた。手帳が持つ静かな効果を、ぐんちゃんは日々感じている。

子どもたちのランドセルやドリルと一緒に、ぐんちゃんの「NOLTYエクリPlus」が暮らしのまんなかに、そっとある。そんなリビングのテーブル。仕事にしないから、続く。追いかけてくる締め切りじゃなく、自分から掴みにいきたい楽しいことや、心の奥底から湧き出す感情を言葉にする。
ふたりに共通していたのは「書くことを仕事にしない時間が必要だった」ということ。
胸の内を言語化する

整っていない文字もある。消した跡も空白もある。
「何もしなかった日でも、書くと『ちゃんと生きてたな』って思えます。ちょっと大げさだけど(笑)」
のんさんがそう言うと、
「ほんとにそう! 誰にも見せないのに、自分で勝手に評価しちゃってたんだなって。」
とぐんちゃんが笑顔で続ける。評価を得るために書くんじゃない、ただ、自分を置いておくために書く。

「書いてみるとちょっといい」
子どもたちが眠ったあとに、ワンちゃんのぬくもりのそばで……ふたりは今日も、そっとページを開いている。
★ふたりが愛用している手帳
・夜とカフェオレと日記帳
(のんさん日記デビュー 1項目7行)
https://shop.daigo.co.jp/item/108866/
・hibino(デザインフィル)
(のんさん愛用。1日2ページ)
https://www.midori-store.net/SHOP/207278/list.html
・NOLTY エクリPlus B6
(ぐんちゃん愛用。週間ブロック)
https://nolty.jp/ekuriplus/

