「嫌だったらやめていい」が当たり前の時代
小5の娘。小1から続けてきたピアノをやめたいと言い始めた。理由を聞くと「なんとなく楽しくない」とのこと。嫌なら無理させなくていいのかな。でも、すぐやめる癖がついたらどうしようと少し迷う。「嫌ならやめてもいいよ」と言うと、「ふーん、わかった」と煮え切らない返事。こういう場合、どのように親子で考えていけばよいのだろう。
最近の子育てでは、「無理をさせない」「子どもの気持ちを尊重する」という考え方が広がっていますよね。
「我慢して続けなさい」と厳しくされる親御さんも少なくなったように感じます。
ただ一方で、相談現場ではこんな声も聞きます。
- 少し嫌になると、すぐやめたがる
- 続ける経験が少ない気がする
- 無理強いはしたくないけど、少し頑張った先に手に入るものを失っているのでは?
ある程度我慢させるのも必要なのか、辛いことは避けさせてよいのか。
悩まれる方も多いようです。
習い事、受験、人間関係など、子どもが「もうやめたい」の壁にあたったとき、どのように考えていけばよいのかを考えます。
我慢させるか、甘やかすか、の2択ではない。
「もう嫌だ」「やめたい」と子どもが言ったとき、「そんなこと言わないの」と否定するか「じゃあやめていいよ」とすぐに受け入れるか。
この2択に絞ってしまうと、親子ともに考え方が狭まり、極端になってしまいます。
心理学では、子どもが困難に向き合うときには、いくつかの力が関係しているといわれています。
たとえば、少しの不快感に耐える力、状況を整理して考える力、そして「自分で選んだ」と感じられる主体性。
つまり、我慢させるか・嫌ならやめるかの軸から視点をずらして、自分で考えて決める力を育てる方向にシフトするのがよいでしょう。
「自分で決めた」と思える道にいけるよう、どのような関わり方が役立つでしょうか。
子どもが嫌なことと向き合うとき、親ができる3つの関わり方
「嫌」の中身を一緒に分解する
子どもが「嫌だ」と言うとき、その中身は意外といろいろです。
- 難しくて嫌
- うまくできなくて恥ずかしい
- 単純に飽きた
- 人間関係がしんどい
同じ「嫌」でも、対応は変わります。
「嫌」の一言で終わらせるのではなく、「何が一番しんどい?」「難しいの? 飽きた感じ?」と問いかけると、気持ちの整理ができてきます。
「嫌だからやめる」と結論を急ぐのではなく、考えるためのスタート地点と捉えられるとよいでしょう。
一度、期限を設ける
テストに合格できなかった、友達と衝突した、思うようなプレイができなかった。
うまくいかず落ち込んだり、「もう嫌!」と投げ出したくなる気持ちはもっともです。
しかし、気持ちが揺れているとき、衝動的に判断すると後悔してしまうことも多いもの。
「今はそういう気持ちなんだね」と受け止めたうえで、
- じゃあ夏休みまで続けてみて、気持ちが変わらなかったらやめよう。
- あと1カ月やってみて、それでもしんどかったら別のところにしよう。
- 次の発表会のあとに先生に伝えよう。
このように期限を決めることには、2つのメリットがあります。
ひとつは、子どもにとっては”永遠に続く努力”よりも区切りのある挑戦の方が頑張りやすいから。
見通しをもって続けてみて、気持ちが変わることも多いんです。
もうひとつは、一時的な感情か持続的な感情かを知ることができる点です。
「もう嫌」という気持ちが持続的に続いているのであれば、切り替えて別のことにエネルギーを使うほうがよいかもしれません。
「最後にもう一度向き合う期間」と捉えてみて、期間が終わったときに決断するのもおすすめです。
やめるときは「理由」を言葉にする
もしやめる選択になったとしても、それは失敗ではありません。
大切なのは、経験を言葉に残すことです。
たとえば、
- 楽しいより大変が大きくなったんだね。
- 発表会までは頑張ったから、区切りがついたね。
- 新しい”好き”を探してみる時期なのかもね。
肯定的に経験を整理して子どもに伝えることで、「これまでの時間は無駄ではなかった」「考えて決められた」と思えます。
やめることも、続けることも、どちらも大事な選択。
だからこそ親は、結論を急ぐよりも、子どもが考える時間を支える伴走者でいられるといいのかもしれません。



