舞台で堂々とプレゼンをする小1の娘。“失敗から立ち直る力”を目の当たりにしたお話。

家族・人間関係

 舞台で堂々とプレゼンをする小1の娘。“失敗から立ち直る力”を目の当たりにしたお話。

2022.09.25

「失敗しても大丈夫! 次に活かしてまたがんばればいいよ」 失敗して凹んでいるとき。そう励まされたり、または励ますこともあるかもしれません。 周りから見て、それがどんな些細なことでも。どれだけ次に活かせそうな価値ある失敗でも。 だけど本人は辛いものです。 そこから立ち直る力のことを「レジリエンス」と言います。 娘の通うスクールでは、このレジリエンスをとても大切にしています。今日は、そんな立ち直る力について。

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レジリエンスを発揮しよう!

「・・・」
舞台に立ち、言葉を発することができずに立ち尽くす娘が、LIVE配信の画面の向こう側にいた。
そのまま30秒が過ぎる。周りがザワザワし始めた。娘を取り囲む同じクラスの友達が、顔の前で手をひらひらさせたり、背中越しに覗き込んだり、何か言ったりしている。
でも、娘は一歩も動けなかった。1分、2分。5分が経つ前に娘は舞台から降りることになった。

当時、娘は小学1年生。
通っているスクールでは、小1からずっと1年間に何回もプレゼンテーションを行う。

そのプレゼンの様子はLIVE配信を通して、保護者にも共有される。
ぼくは、一言も発することができずに舞台を去る娘を、何もできずにただ画面越しに見つめていた。

パソコンを見る男性出典:stock.adobe.com

とはいえ。
プレゼン中に頭が真っ白になって、言葉が出なくなる事態はけっして珍しい出来事ではない。とくに1年生は何回かに1人、2人は真っ白になってしまう子が出てくる。

人前で話をするのがわりと平気な娘は、これまでのプレゼンを全力でこなしていた。
今回だって準備はバッチリのはずだった。それでも、何も言えなくなってしまうことなんてあって当然だ。

むしろ、勝負はここからだった。
舞台を去った、この瞬間から子どもたちは次に向けた勝負へと踏み出す勇気を試される。

「レジリエンスを発揮しよう!」

1年生全員の発表が終わった最後の最後。
スタッフ(先生)の声を小さくマイクが拾った。

発表を終えた子どもたちが端っこに立っていた娘の背中を押す。肩を叩いたり、話しかけたり、変顔したり。思い思いの方法で娘を励ましている。

娘はしっかりした足取りで舞台の中央に立った。

「わたし、さっきは失敗しちゃったんだけど」

そう前置きしてから、娘はプレゼンを堂々としゃべり終えた。

拍手出典:stock.adobe.com

大きな拍手が響く。
ぼくは、舞台を去る娘を見ながら、この瞬間を信じていたのかもしれないと思った。
大丈夫、まだ立ち直れる。それは、今回じゃないかもしれない。次回かも、その次かもしれない。
けど、挑戦し続ける限り必ずこの瞬間が訪れることを、ぼくは信じていたのだ。

6つのスピリット

娘が通っている小学校では、6つのスピリットを大切にしています。
そしてこのスピリットについて事ある毎にフィードバックしてくれます。

その6つのスピリットとは、
『Ownership』,『Love』,『Playfulness』,『Resilience』,『Harmony』,『Confidence』

この中の一つにあるのが『Resilience(レジリエンス・回復力)』です。

約束をやぶってしまったとき。遅刻したとき。喧嘩しちゃったとき。何かを壊しちゃったとき。
あらゆるときに「レジリエンスを発揮しよう!」と言われます。

仲直りをする子ども出典:stock.adobe.com

子どもたちは、そのことを習慣のように身に着けていく。
もちろん、できないときだって多い。立ち上がれないことなんてたくさんある。

それでも彼らは「再び立ち上がることの凄さ」を知っています。
その大変さも、必要な勇気も、価値も。だからもう一度立ち上がろうとする。

スタッフを始め、ぼくたち大人は彼らが立ち上がるためにしっかりと「待つ」のです。

保護者が見ていようと、公の場であろうと関係ない。
子どもたちの胸の中にある「失敗した!」「どうしよう」「もう嫌だ」「できない」「辞めたい」「逃げたい」そうした葛藤が落ち着くのを待ちます。
「やってみようか」「いまならまだやり直せるかも」「できるかも」そうしたエンジンがかかるのをじっとじっと待ちます。

それは5分のときもあれば、数日、数ヶ月、ときには数年ということもあるかもしれない。

舞台からは降ろしても、勝負の場からは簡単には降ろしません。
勝負の場にい続けること。それこそがレジリエンスを発揮するための大切な条件だから。

失敗からがスタートだ

スタート地点出典:stock.adobe.com

失敗は、なにも終わりじゃない。舞台からは降りることになったとしても、勝負の場に立ち続けてさえいればレジリエンスを発揮するチャンスは必ず巡ってくるのです。
もちろん、子どもたちだけの話じゃありません。

大人だって同じ。
親がレジリエンスを発揮する姿を子どもに見せてあげることは、再び立ち上がることの価値を教えてあげることになります。
その姿は、きっと子どもたちを勇気づけてくれる。

「レジリエンスを発揮しよう!」

失敗したとき、凹んだとき。子どもに、自分に、ぜひそう声をかけてみてください。
 

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著者

三木智有

三木智有

NPO法人tadaima!代表 日本唯一の家事シェア研究家/子育て家庭のためのモヨウ替えコンサルタント 家事シェア研究家のnote:https://note.com/tomoari_miki

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