BTB(Bean to Bar)とは
最近、巷でよく聞く「Bean to Bar」。
よく似た言葉「Bean to cup」は、コーヒー豆を生産地で直接買い付けて、言葉通り「豆からカップまで」独自で生産管理をするスタイル。チョコレートの世界でもこのような小規模&ハンドメイドスタイルがアメリカを発祥として広がりました。
カカオ豆を産地から直接買い付け、焙煎や粉砕を経て、さらに砂糖など他の材料を合わせて独自のチョコレートを作る工房やチョコレートそのものをBean to Bar(以下、BTB)と呼びますが、中でもここSATURDAYS CHOCOLATEは徹底したハンドメイドが魅力。不良豆や不純物などは手作業で丁寧により分け、それぞれの産地の特徴に合わせて焙煎の温度や時間を調節したり、砕く時間や滑らかにする時間、合わせる砂糖の種類も変更しているのだとか。
産地には出来るだけ足を運び、品種や栽培方法・発酵の技術などを確認するのはもちろん、適正な価格で買い取ることによって、児童労働をはじめとする貧困問題の改善にも心を寄せています。
それ以外のチョコレートは?
実は、専門店のチョコレートが全てBTBかと言われれば、答えは「NO!」。国内外を問わずさまざまなチョコレート専門店がありますが、BTBを名乗っていないそれらのお店のチョコレートは、カカオ豆からの生産は行っておらず「クーベルチュール」と呼ばれる製菓用のチョコレートでボンボンショコラなどを製造しています。
そして、そのクーベルチュール自体にも多くのブランドが存在し、取材であちらこちらのショコラティエに伺うと「ウチはベルギーの〇〇というクーベルチュールを使っています。」と、品質の確かさをアピールされることもあります。例えば多くのアイテムを少ない人数で製造するとなると、クーベルチュールを使う方が生産性が向上することは間違いなく、安定したおいしさの提供も可能だからです。
なのにどうして、SATURDAYS CHOCOLATEは、手間暇がかかるBTBを選んでいるのでしょう?
とにかくチョコレートが大好き!
ここからは、代表の秋元力さんにお話を伺います。
ーーチョコレートの製造をされるまではどんなお仕事を?
秋元さん:設計やデザインの仕事を30半ばくらいまでやっていて、そのあと家業を継いで化粧品の通信販売をしていたんです。与えられたものをきちんと受け継いでいくことも大切だけど、自分で考えたものをブランディングしながらモノ作りをしていきたいなと思って。
アメリカのクラフト文化に影響を
ーーチョコレートに行きついたのは?
秋元さん:北海道の食材を使ったお菓子を作りたくて。初めは、きなことのお菓子を作ったんだけど、なかなか(笑)。2013年当時、まだBTBは一般的ではなくて。チョコレートと言えば、日本では大手菓子メーカーが大量生産していて、コンビニでもどこでも安く買えるものという位置づけしかなかったんですよ。
ところが、アメリカには「自分たちなりのこだわりの製品を作っていこう」というクラフト文化が芽吹きつつある時期で「クラフトビール」「3rdウェーブコーヒー」「ジン・ウィスキー」などのスモールバッチというムーブメントがありました。「希少価値、こだわり、限定」としての価値を重んじる文化が生まれ出して「これはおもしろいな」と。
北海道素材とのコラボ
ーーBTBなら、産地のチョコレートの個性と北海道の食材を組み合わせてオリジナルが作れますね。
秋元さん:10年やっていると地元のつながりができて、フレーバーにも幅が出ました。「滝上町の和ハッカを復活させたい」という地元の人たちとも繋がり、「次はかぼちゃは?」と、可能性が広がってきましたね。
例えば、ボンボンショコラのように、ダイレクトにきなこやかぼちゃを感じるチョコレートを作るのも1つのアプローチだけど、ウチはBTBの技術でチョコレート本体の個性を生かしたものを作ることができるし、今後は例えばラベンダーをミックスさせるとどうなるか?と研究中です。
マニア向けだけではない、親しみやすいBTB
ーーSATURDAYSさんのチョコレートが他のBTBと明らかに違うところは「誰が食べてもおいしい」ところ。他のBTBには、甘みが少なく酸味や苦み、スパイスのようなちょっとした刺激を感じるものが多いので、「甘いチョコレートが好き」な人にとってはちょっと難しく感じます。
秋元さん:チョコレートに限らずクリエイター全てに言えることかもしれないけれど、一定のクォリティのものを作ることができるようになると、目線が上がっちゃうんですよ。同業者やマニアが求めるもの、驚くものに挑戦したくなるんです。仕事のやりがいということにも繋がる話かもしれないけれど、同じものを作り続けることというのは、モノづくりをする者にとって実は苦痛になる瞬間があるんですね。
チョコレートは誰のもの?みんなのもの!
秋元さん:そういう理由で、どんどんマニアックな甘くないチョコレートが増えてきているのも分かるんですが、やっぱりチョコレートは小さい子がおじいちゃんおばあちゃんと一緒に食べて「おいしいね」っていうものでないと…いうのが基本にあるんです。なので、あんまりね、プロっぽくなりすぎるのもやりすぎなんじゃないかな?と思って…10種あったらマニア向けに攻めてるものは1つか2つあれば十分だな、と。
ーープロダクトとしてのクラフトチョコレートに限らず、本当にチョコレートがお好きなんですね?
秋元さん:そう!小さいときからケーキから菓子パン、アイスまで全部チョコレート。バニラやイチゴじゃなくていつでもなんでも(笑)チョコレートを選んで食べてきたので、チョコレート好きのキャリアは長いんです。だから余計に「誰が食べてもおいしいもの」を作りたいと思うんですね。
コーヒー、カクテルとのペアリング
ーーSATURDAYSのカフェやスタンドで好きなチョコレートを選ぶと、それに合うコーヒーの銘柄のオススメをしてもらえたり、淹れ方も選ぶことができるのがうれしいです。
秋元さん:コーヒーとのペアリングは、コーヒー好きの人にもチョコレートのおいしさ、ペアリングの楽しさを知ってもらいたくて始めたんです。両方の世界が広がるんじゃないかな?と。今は、チョコレートを使ったノンアルコールのカクテルを作りたいなと考えています。
Friendlyなチョコレートとheartfulなスタッフさん
秋元さんにお話を伺った後は、私もゆっくりカフェタイム。あれこれと迷っていると季節限定のドリンクやオススメのブラウニーを紹介してくださり、「オランジェットは1本からお出しできますよ。」と、うれしいお言葉。スタッフの長崎さんにもお話を伺いました。
長崎さん:ご家族やグループで来られる方には、チョコレートのお好みを伺ったり、それぞれのメニューの特徴を説明したりと、よりチョコレートを楽しんでいただけるように心がけています。おひとりの方には、ゆっくりくつろいでいただける雰囲気を大切にしたいと思っています。
季節限定チョコミントシェイク(浦上和ハッカ)にリッチブラウニー(トーゴミルク&ヘーゼルナッツ)オランジェットが2本という、フルコース?!をいただきました。それぞれのチョコレートの生かし方に個性があり、またどれもがまろやかで甘さが心地よく、幸せな時間を堪能しました。
※ カフェメニューは季節ごとに一部変更されます。ぜひ来店時にご確認を!
チョコレートと同じく、スタッフさんの接客を含め、間違いなく「みんなきっと大好きになる」カフェ。テレビ塔や時計台からも徒歩圏内のロケーションです。
SATURDAYS Chocolate Factory & Cafe
〒060-0052 札幌市中央区南2条東2丁目7−1 ビルセススクエア大通 1F
TEL / 011-208-2750
営業時間 / 10:00-18:00
定休日 / 毎週水曜日
MAIL / info@saturdayschocolate.com