教えてくれたのは……鶴町宗大(つるまちむねひろ)先生
医学博士、皮膚科専門医。医療法人 鶴町会 理事。獨協医科大学医学部卒業後、順天堂大学浦安病院 皮膚科教室にて研鑽を積み皮膚科専門医を取得。現在、つくば・土浦鶴町皮膚科クリニックの副院長として、皮膚科・美容皮膚科を通じて、健康で美しい肌の実現を目指して、肌の悩みをトータルにサポートできるよう診療を行っている。
痛みが改善したケース
【case1】54歳 女性の場合
【帯状疱疹ができた部位と、気づいたきっかけ】
数日前から右胸にピリピリする痛みを認めていたところ、赤みを伴う水膨れ(水疱)が出現したので、すぐに皮膚科を受診し帯状疱疹の診断となった。
【治療法】
鶴町宗大先生 「発症早期から抗ヘルペスウイルス剤の内服(1週間)及び、鎮痛剤内服を行いました。皮疹は1週間程度でカサブタとなり2週間ほどで改善しましたが、軽度の痛みが持続しました。皮膚科外来の通院にて鎮痛剤内服の変更を適宜おこなったところ、帯状疱疹後神経痛は3ヶ月程度で改善しました。
現在、鎮痛剤の使用などはせずとも、痛みなく生活できています」
【case2】49歳 男性の場合
【帯状疱疹ができた部位と、気づいたきっかけ】
数日前から軽度の頭痛があり、額の左側に赤みを伴う水膨れ(水疱)が出現し、左目が腫れてきたので、すぐに皮膚科を受診し顔の帯状疱疹の診断となった。同日に眼科も受診したところ、目には問題はなかった。
【治療法】
鶴町宗大先生 「発症早期から抗ヘルペスウイルス剤の内服(1週間)及び、鎮痛剤内服を行いました。皮疹は1週間程度でカサブタとなり3週間ほどで改善し、目の腫れも引いてきました。
しかし、顔の痛みは帯状疱疹の発症時点から強く日常生活にも支障が出ていたので、ペインクリニックを紹介し痛みのコントロールをお願いしました。その後はペインクリニックにて鎮痛剤の調節及び神経ブロック療法を行ったところ、帯状疱疹後神経痛は6ヶ月程度で改善しました。
現在は、鎮痛剤の使用などはせずとも、痛みなく生活できています」
痛みが長引いているケース
【case3】59歳 女性の場合
【帯状疱疹ができた部位と、気づいたきっかけ】
数日前から左腰にチクチクする痛みがあり、赤みを伴う水膨れ(水疱)が出現。自宅で様子を見ていましたが、その後、4日ほど経過しても痛みが軽減せずにむしろ強くなっていたので、皮膚科を受診し帯状疱疹の診断となった。
【治療法】
鶴町宗大先生 「診断後より抗ヘルペスウイルス剤の内服(1週間)及び鎮痛剤内服を行いました。皮疹は1週間程度でカサブタとなり3週間ほどで改善しました。
しかし強い痛みは継続していたため、皮膚科の外来にて鎮痛剤内服薬を適宜変更しながら定期通院していました。その結果、以前と比べて痛みの程度は軽減しましたが、依然として痛みを認めている状況です。
現在、帯状疱疹後神経痛を発症して1年半以上経過はしていますが、軽度の痛みが継続しているため、鎮痛剤の内服を必要としている状況です」
痛みを長引かせないためには……
痛みが改善したケースはいずれも、発症早期に抗ヘルペスウイルス剤の内服及び、鎮痛剤内服を開始できていました。赤みを伴う水膨れ(水疱)に気づいたら、決して自己判断で様子を見たりせず、すぐに医師の診察を受けることが大切です。
また、今回の3つの事例では、全員が帯状疱疹予防ワクチン未接種という共通点がありました。
現在、帯状疱疹ワクチンについては、つぎのように考えられています。
帯状疱疹ワクチンによって、帯状疱疹の発症に加え、個人のPHN(帯状疱疹後神経痛)の発症を予防することが期待できる。
出典: 厚生労働省 帯状疱疹ワクチンについて www.mhlw.go.jp
帯状疱疹ワクチンの接種と早期の治療開始が、長引く帯状疱疹後神経痛を防ぐポイントといえそうです。