教えてくれたのは……中澤佑介(なかざわゆうすけ)先生
金沢医科大学医学部医学科卒業。日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医。
「患者さんに近い立場で専門的医療を提供したい」という思いで2021年、なかざわ腎泌尿器科クリニックを開設。2023年6月、JR金沢駅前にメンズヘルスクリニック(Gran Clinic)を開院。
「男性更年期」は、なぜ自分で気づきにくい?
前回の記事では、「男性更年期の受診のきっかけや診断・治療の流れ」、「家庭でできる対策」についてご紹介しました。
「最近夫がなんだか元気がない……」「イライラしていることが増えたかも?」などと思ったときは、もしかしたら男性更年期のサインの可能性も。しかし、本人はその変化に気づきにくいことも多いと、中澤先生は言います。なぜ自覚しにくいのでしょうか。
中澤先生「男性は『年のせい』『仕事のせい』と捉えがちで、性やメンタルの不調を言葉にしづらい文化的背景もあります。症状がゆるやかに進行するため、本人は“いつの間にか順応”してしまうことも一因です。さらに、睡眠不足やストレス、肥満などの他の要因が重なると原因がぼやけ、自覚や受診が後手になります。」
パートナーとして、どのように伝えるのがベスト?「3つのポイント」と伝え方のOK例・NG例
「夫が更年期かもしれない」と感じたとき、すぐに伝えるべきか、それとも様子を見るべきか、悩む方も多いと思います。中澤先生によると、伝え方には3つのポイントがあるとのこと。
実際にパートナーからの指摘で受診につながったOK例と、ケンカになりやすいNG例についても教えていただきました。
中澤先生「伝え方は、『穏やかに、事実ベースで、タイミングを選んで伝える』が基本です。叱責や決めつけは避け、『最近眠れていないみたいだね』『朝の元気が減ったと言っていたね』など、観察事実を共有し、相手の体調に寄り添う姿勢を示します。仕事が落ち着いた時間や休日の前夜など、余裕のある場面を選ぶのがよいでしょう。」
OKな伝え方
中澤先生「声かけの成功例としては、『最近しんどそう。無理しないで、専門医に一度相談してみない? 一緒に行くよ』と 、“提案+伴走”をセットで伝える方法です。家事や育児の分担を一時的に調整して、受診のハードルを下げる配慮も有効です。」
NGな伝え方
中澤先生「『あなたのせいで、家の中の雰囲気が悪い』『年のせいでしょ』などの人格や年齢に結びつける表現は対立を招きます。チェックリスト(簡易質問票)を一緒に記入し、具体的に困っている場面を共有するのもおすすめです。」
見守る距離感の上手な保ち方
心配だからこそ、つい口を出したくなるもの。しかし、できる限り相手のペースを尊重したいですよね。過干渉にならず、距離感を保ちながら寄り添うには、どのようなことを意識するとよいのでしょうか。
中澤先生「“命に関わる兆候があるか”を軸にメリハリをつけます。強い抑うつ・ 希死念慮、急な体重減少、激しい睡眠障害、胸痛や呼吸苦などは早めに医療機関を受診しましょう。一方で、日々の些細な不調は、本人のペースを尊重しつつ、生活改善(睡眠・運動・食事)を一緒に習慣化するサポートに回ります。やる/やらないの選択権を本人に残すことが過干渉の防止になります。」
夫婦でできるセルフケアは「生活習慣を整える」こと
無理なく始められるセルフケアとして、中澤先生がすすめるのは「生活リズムを整えること」。夫婦で一緒に取り組むことで、自然と習慣化しやすくなるそうです。
中澤先生「睡眠は、就寝・起床時刻をそろえ、就寝前1時間はスマホ・PC をオフにし、アルコールに頼らず自然な入眠を心がけましょう。運動は、週末は一緒に早歩き30分、平日は自重スクワットや腕立て伏せ、体幹トレーニングを10~15分おこなうのがおすすめです。食事は、夕食は“主菜は手のひら1枚のたんぱく質+野菜半分+主食は少なめ”を合言葉に、メニューを組み立てられると理想的です。外食では揚げ物や深夜の食事を控え、水分は無糖の飲み物を基本にしましょう。」
男性更年期は、本人が気づきにくく、つい見過ごされがちな不調。だからこそ、身近なパートナーの気づきと、やさしい声かけが支えになります。「もしかして……」と感じたら、まずはそっと寄り添い、できることから始められたらいいですね。
次回の記事では、「男性更年期を放置したときのリスク」と、「家族が知っておきたいケアと受診の目安」についてご紹介します。
参考文献:
1. 日本泌尿器科 /日本学会 Men’s Health 医学会. LOH 症候群(加齢男性性腺機能低下症)診療の手引き. 2022.
2. Bhasin S, et al. Testosterone Therapy in Men With Hypogonadism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab.2018.
3. Mulhall JP, et al. Testosterone Deficiency: AUA Guideline (2018; 2020amendment). J Urol. 2018.
4. Wu FCW, et al. Identification of late-onset hypogonadism in middle-aged and elderly men. N Engl J Med. 2010.
5. Nissen SE, et al. Cardiovascular Safety of Testosterone-Replacement Therapy (TRAVERSE). N Engl J Med. 2023.
6. 体重減少・運動の効果に関する総説・メタ解析(例:Corona G, et al. Obes Rev. 2013 ほか)。
※本回答は医学的根拠に基づいて作成しています。個別症例の診断・治療は実際の受診と検査に基づき医師が判断します。





