教えてくれたのは……中澤佑介(なかざわゆうすけ)先生
金沢医科大学医学部医学科卒業。日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医。
「患者さんに近い立場で専門的医療を提供したい」という思いで2021年、なかざわ腎泌尿器科クリニックを開設。2023年6月、JR金沢駅前にメンズヘルスクリニック(Gran Clinic)を開院。
近ごろ増加傾向にある「男性更年期」
「夫が最近イライラしやすくなった気がする」「眠れない、やる気が出ないと訴えることが増えた」など、パートナーの変化に、心あたりはありませんか? それはもしかすると、“男性更年期”が関係している可能性があります。
中澤先生によると、近年、男性更年期の受診者や相談件数は増加傾向にあるとのこと。医学的に“男性更年期”とはどのような状態を指すのでしょうか。発症しやすい年齢層や大きく関係すると考えられる原因について教えていただきました。
中澤先生「男性更年期(いわゆる LOH症候群)は、加齢や生活習慣・基礎疾患などの影響で男性ホルモン(テストステロン)の分泌や作用が低下し、性機能・身体・メンタルの領域に多面的な症状が現れる状態を指します。多くは40代以降で自覚する方が増えますが、『年齢=必ず低テストステロン』ではありません。
肥満や2型糖尿病、メタボリックシンドローム、睡眠時無呼吸、長期のオピオイドやステロイド使用、 強いストレスや慢性疾患など、加齢以外の因子も大きく関与します。診断は症状の有無に加え、朝の採血で繰り返し低テストステロンを確認して総合的に判断します。
男性更年期は、海外・国内ともに一般向けの認知向上や検査の普及を背景に、相談や診断・治療の件数はこの十年で伸びています。特に働き盛り世代(40~60代)で、仕事や家庭に影響するイライラ、不眠、集中力低下、性機能の不調をきっかけに受診される方が多く、企業の健康経営の文脈でも注目が高まっています。」
男性更年期は「体」と「心」どちらにも現れる
では、実際にどのような症状が多く見られるのでしょうか。身体面と精神面どちらにも変化が現れることがあるため、「症状だけ」でも「数値だけ」でもなく、両方をそろえて評価することが大切なのだと、中澤先生は言います。
中澤先生「性機能の変化(性欲低下、朝の勃起の減少、勃起不全)が中心症状になりやすく、身体症状としては疲れやすさ、筋力低下、体脂肪(特に内臓脂肪)の増加、骨密度低下や貧血、汗・ほてりなどが見られます。
精神面では、意欲低下、抑うつ気分、不安、イライラ、集中力低下、睡眠障害が挙げられます。これらは他の病気(甲状腺機能異常、うつ病、睡眠時無呼吸、貧血、薬剤性など)でも起こり得るため、症状だけで決めつけず、検査を組み合わせて評価します。」
「女性の更年期」との違いとは?
男性にも更年期があると聞くと、女性の更年期とどのように違うのか気になる方も多いと思います。じつは、ホルモンの変化の仕方や現れ方には、男女で違いがあるのだそうです。
中澤先生「女性は閉経の前後でエストロゲンが比較的短期間に大きく低下します。一方、男性はテストステロンが何年もかけて緩やかに下がるため、発症の仕方や程度に個人差が大きいのが特徴です。また、男性では性欲低下・朝の勃起減少・勃起不全といった性機能症状が『核』となりやすい点も異なります。」
働き盛りの世代に増えている男性更年期。次回は、「男性更年期との正しい向き合い方」をテーマに、実際に受診された方が気づくことになったきっかけや、受診から改善までの流れ、一般的な治療方法などについて、詳しくご紹介します。
参考文献:
1. 日本泌尿器科 /日本学会 Men’s Health 医学会. LOH 症候群(加齢男性性腺機能低下症)診療の手引き. 2022.
2. Bhasin S, et al. Testosterone Therapy in Men With Hypogonadism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab.2018.
3. Mulhall JP, et al. Testosterone Deficiency: AUA Guideline (2018; 2020amendment). J Urol. 2018.
4. Wu FCW, et al. Identification of late-onset hypogonadism in middle-aged and elderly men. N Engl J Med. 2010.
5. Nissen SE, et al. Cardiovascular Safety of Testosterone-Replacement Therapy (TRAVERSE). N Engl J Med. 2023.
6. 体重減少・運動の効果に関する総説・メタ解析(例:Corona G, et al. Obes Rev. 2013 ほか)。
※本回答は医学的根拠に基づいて作成しています。個別症例の診断・治療は実際の受診と検査に基づき医師が判断します。




