「人生の最後にたべたい“おやつ”はなんですか?」
2年前、義父をガンで亡くした。体調がおかしいと病院に行ったら、そのまま入院になった。入院した時点ですでに末期がん。手の施しようがないということで、入院2週間後に在宅介護に切り替えることになり、明日は退院という日に、あっけなく義父は天国へと旅立ってしまった。
「人生の最後にたべたい“おやつ”はなんですか?」
小川糸さんの最新作「ライオンのおやつ」の帯に書かれた一文に惹かれて、この本を手に取った。
「ライオンのおやつ」の主人公は、33歳の女性、海野雫。33歳という若さで末期がんを患っている。瀬戸内海の小さな島にあるホスピス「ライオンのおやつ」を終の棲家に選んだ雫が、ライオンの家を訪れるところから物語は始まる。「33歳で末期がん」。これはなかなかのパワーワードであり、物語冒頭から雫に感情移入してしまう。とっくに33歳を過ぎている自分の人生を振り返り、「もし、自分が33歳のときに末期がんという診断を受けたら……」という気持ちで物語を読み進めていく。
「ライオンのおやつ」には、ホスピスで過ごす人たちをお世話するマドンナと、食事担当で、ご飯の主導権を握っているシマさんと、おやつの主導権を握っている舞さんという姉妹が登場する。この姉妹が作る食事やおやつが実に美味しそうで、読んでいる最中、何度も空腹感が襲ってくる。小川糸さんの作品には、“食べる”ことが大切に描かれている作品が多い。この「ライオンのおやつ」も、その1冊。
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