なぜ更年期につらい不調が起きるの?
更年期にこのような不調が出るのは、ホルモンの変化が原因。女性の体は、通常、脳から血流を通じて卵巣に指令が出て、卵巣からエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンが分泌されます。女性ホルモンは、女性の体を健康に保つ役割をしています。
けれど、加齢によって卵巣の中に卵がなくなると、脳から指令が出ても、卵巣は女性ホルモンを分泌できません。卵巣が反応しないと脳がパニックを起こし、自律神経系などの調節機能に支障をきたすようになる。それが更年期の不調の正体なのだそうです。
「自分の血中のホルモン量の変化は、血液検査で調べることができ、閉経時期の指標になります。また、基礎体温を計測することでも排卵があるかどうかが分かります。数値で見て、体の状態を把握するのも一つの方法ですね」(対馬先生)
「女性ホルモンは女性の体を守るもの。閉経するとそのお守りがなくなるのだから、生きていくのに知恵が必要ですよね」(吉川さん)
更年期の症状を緩和するHRT(ホルモン補充療法)とは?
更年期の症状を緩和する治療法として、海外では確立されているHRT(ホルモン補充療法)ですが、日本での普及はまだまだなのだとか。
「HRTは、更年期以降にホルモン量が急降下している部分を必要最小限補うもの。更年期の症状は、きちんと治療をすれば改善できるんですよ。
日本女性たちは、知識や準備がないままに更年期に突入せざるを得ないという状況に置かれています。不調を我慢してなんとかしようと頑張ったり、仕事を諦めてしまったり、というのは残念すぎますよね」(対馬先生)
「今の50代女性は、仕事や家事も忙しく親の介護などもあると、どうしても負担が大きくなります。そういうときに、いい治療があるなら、少しでも自分を楽をさせて、自分を壊さないようにしてほしいんです。更年期の時に自分を大事にしてあげないと、その後30〜40年と続く人生の質に関わってきますから」(吉川さん)
一方で、ホルモン療法はがんのリスクがあるなど言われることもあるようですが…。
「50歳以上の女性の婦人科系がんリスクについては、トータルでみるとさほど影響は考えられません。婦人科や内科の医師に相談しながら、正しい知識を持って治療しましょう。漢方やサプリメントと併用することも可能ですよ」(対馬先生)
今までなかなか語られなかった「閉経」の話。「我慢しなくていい」「治療すれば緩和できる」とわかり、心が軽くなった女性はきっと多いはず。今回のセミナーでお二人は「更年期を快適に過ごして、これからの人生、一緒に楽しく生きましょう!」という前向きなメッセージを届けてくれました。
40代からの必読書!
婦人科医の対馬ルリ子さんと美容家の吉川千明さんが、2002年から145回以上開催してきた「女性ホルモン塾®」の知見をもとに生まれた、集大成ともいえる一冊。
40代以上の女性が心や体の変調で困ったとき、「なぜこうなるのか」「どう対処すればいいのか」、わかりやすいビジュアルで丁寧に解説しています。閉経前後の女性の人生を前向きに、健やかに生きる助けになってくれるはずです。
【著者プロフィール】
対馬ルリ子(つしま・るりこ)
1958年生まれ。対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座院長。産婦人科医、医学博士。専門は周産期学、女性医療(ウィメンズヘルス)。女性の心と体、社会とのかかわりを総合的にとらえ女性の生涯にわたる健康を推進するNPO法人「女性医療ネットワーク」を設立、さまざまな啓発活動や政策提言を行う。
http://w-wellness.com
吉川千明(よしかわ・ちあき)
1959年生まれ。美容家。オーガニックスペシャリスト。メノポーズカウンセラー。90年代より数々のブランドプロデュースにかかわりオーガニックコスメと植物美容を日本に広げたナチュラルビューティの第一人者。2020年から、対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座にて「更年期カウンセリング外来」を担当。
https://biodaikanyama.com
『「閉経」のホントがわかる本 ~更年期の体と心がラクになる!』
著者:対馬ルリ子・吉川千明
四六判 全256ページ
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撮影/島袋智子
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