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【国際女性デー】トランプのキングがクイーンより強いのはなぜ?犬山さんが大人になって気付いたこと

カルチャー

 犬山紙子さんインタビュー

2021.03.07

知っていますか? 3月8日は国連が定めた「国際女性デー」。ニューヨークで婦人参政権を求めたデモから始まったこの運動は世界中に広がり日本にも。現在は各企業が様々な取り組みやイベントを行なっています。2021年日本のテーマは「リーダーシップを発揮する女性たち:コロナ禍の世界で平等な未来を実現する」。saitaでも「国際女性デー」にちなみ、輝いている女性にインタビューしました。

当時は気が付かなかった、生きづらさ

今回インタビューしたのは、犬山紙子さん。さまざまなメディアにて、リアルな視点での発言が共感を呼び、多くの女性が密かに勇気をもらっています。独身時代に作家デビューしてから、結婚、出産を経験された今、犬山さんが感じている「女性」について、率直な気持ちをうかがいました。

ーー今まで「女性」として生きづらさを感じたことは?

犬山さん:今考えたら、あの頃辛かったんだろうな、と思うことはあったんですけど、当時は「女」だからツライとわかっていない時期がありました。なんだかツライし、モヤモヤするけど、その理由がわからない感じです。

ーー具体的なその時期とは?

犬山さん:中学生の時に電車通学で、そのときに痴漢にあっていた時ですら、ひたすら混乱していました。もっと小さな頃だと、小学生の時に算数が得意だったんですが、そうすると「女の子なのにすごいね」と褒められていたんですよ。当時は、そのまま鵜呑みにして「褒められているんだな」と喜んでいたんですけど、でもこれは褒めている文脈に見せかけて、裏を返すと「女の子は男の子より数学は不得意」という無意識の偏見がありますよね。

ーーなるほど。でも、褒められて嬉しいですよね。「女の子なのに数学が得意ですごいね」に不都合ってあるんでしょうか?

犬山さん:それが、じつはあるんです。男子に数学の点数で負けた時「相手は男子だから、負けてもしょうがないんだ」と、無意識に思っていたんです。自分の勉強に対する向上心とかモチベーションとか、性差が入ることで阻害されていたなって。男性・女性で脳に差はほとんどなく、個人差がかなり大きいと言われているのに、理系の大学には男性が多いことも、この偏見の影響は大きいと思います。

パートナーの劔樹人氏パートナーの劔樹人氏とは「中での仕事と外での仕事が同じくらいになるように」調整しているそう

ジェンダーバイアスの無意識の内面化

犬山さんがまだ子どもだった当時、世の中にはまだ多くの性差バイアスがあったものの、犬山さんのご両親は「女の子だから」といって、勉強を頑張らなくていいとは言われなかったとおっしゃいます。でも周りを見渡すと、違った光景があったそうです。

犬山さん:女の子は勉強を頑張らなくても、愛嬌があればいい、と言われていました。これもひとつのジェンダーバイアスですよね。小さいことからそう言うのってたくさんあると思っていて。お人形遊びや、家庭的なことをすると「さすが女の子だねぇ」と言われることも多かった。でも、こういうのは大人になってから気がついたんですけどね。当時は全く気が付かずに、無意識に内面化していたので。「ああ、女の子はこう振舞うべきなんだ」「こういう将来を望むのがいいんだ」と思ってしまうことで可能性は狭まるんです。

ーー他にも内面化されていたことは?

犬山さん:例えば自分の意見を言う時、男性が多数いる中だと勝手に主張を弱めていることがありました。これは「女性が主張すると男性が主張するよりも悪印象を持たれやすい」というバイアスによるものです。これは研究結果でもでているもので、本を読み結果を知ってから「あ、自分もそういうところあったな」と気がつきました。

映画でも気づくことはあります。先日見た男女がガラッと入れ替わった世界を描いている映画『軽い男じゃないのよ』※でも、自分が気づいていなかったジェンダーバイアスをざくざく感じました。例を挙げると映画で出てくるトランプ。映画の中で使うトランプで一番強いのはキングではなく、クイーンなんですよ。このシーンを見るまで、当たり前にキングが一番強いと思い込んでいた自分に衝撃を受けました。

※Netflixオリジナル映画『軽い男じゃないのよ』2018年フランス

大人になってやっと話せるようになった

ジェンダーバイアスという、無意識の内面化に気がついた今、まわりの友人たちと意見を共有することで、犬山さんは新たな問題に気がついたとおっしゃいます。それは「家事・育児」の分担。なぜか女性がするものという意識が根底にあり、そこから「シェアする」という意識になっている。夫婦共働きなら、外での仕事量や疲労度は同じはずなのに、なぜか女性の方が「主担当」で量も多く分担している家庭が多い。

ーー犬山さんのご家庭では?

我が家は、1日の仕事量が夫婦でトントンになるようにしています。1日の仕事量の中に「家事」「育児」を含めているところがポイントです。私が外の仕事が多い日は、夫が家の仕事、つまり家事と育児を多く負担してくれます。逆に夫が外の仕事で忙しい時は、私が家事と育児を行う。これまでを振り返ると、夫の方が家事・育児の分担は大きかったと思います。

ーー「家事と育児」も仕事に含まれるんですね。

そうですね。外の仕事も家事も育児も同じ、全部をひっくるめて、夫婦それぞれが同じくらい休めて、同じくらい頑張れるようにしています。

ーー「家事と育児」をやって当たり前にしないスタイルで報われますね。そのスタイルは、いつからですか?

同棲時代から夫が率先して家事をしていましたね。でもそれは、夫のお母さんのおかげかもしれません。義母はずっと外で働いていたので、夫のなかにもともと「男とは、女とは」という考え方がない人だったので。もう、義父、義母ありがとうですよね(笑)。

だからこそ、子育て中の我々は子どもに背中を見せているという意識を持って「お母さんだから」「お父さんだから」という意識を外して家事や育児を本当にシェアしてほしいと思います。

男女関係なく同じ選択肢を!

犬山さんが「女性ってつらい」と初めて感じたのは、アラサーの時だそう。突然「もうすぐ30代だけど、結婚はまだ?」「子どもは産まないの?」「子どもは産まないの?」という言葉を投げられ、「結婚し、子どもを産め」というプレッシャーを感じたそう。

犬山さん:でもそんなプレッシャーに戸惑っているのは女友達で、周りの男友達はそんなことなくて。「女は若い方が価値が高い」という通念だったりとかにぶち当たる中で、本を読んだり、先輩の話を聞く中で、「こういうジェンダーギャップがあるんだ」ということが、腑に落ちてきました。

ーー1児の母でもある犬山さん。ご自身の娘さんを取り巻く現在のジェンダー環境について、どう思われますか?

犬山さん:正直、残念ながらまだ時代はそんなに変わっていないな、と言う印象です。今もテレビで映る政治家や社長や働く人は男性が主体です。ただ、女性が働くために保育園に預けるということに関して、世間の目はずいぶん変化していますが。女性が生きやすい社会は、同時に男性が生きやすい社会でもあると思うんです。

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理想の生きやすさは「男性と女性が同じ選択肢を持つこと」という犬山さん。性別ではなく、個人の考えや志しで人生の選択ができるようになればいい、と語ってくれました。

話を聞いた方:犬山紙子さん

犬山紙子さん

1981年大阪府生まれ。イラストエッセイスト、コラムニスト。仙台の出版社にてファッション編集を経て、2011年作家デビュー。現在は、ラジオパーソナリティーやテレビのコメンテイターとしても活躍。プライベートでは、音楽プロデューサーの劔樹人氏と結婚、第1子の母である。

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著者

池田ゆき

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