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「うちのお母さんは何でもしてくれた」子どもが無意識に男女差別をしないために親が気を付けたいコト

カルチャー

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2021.03.23 更新

「忙しいワーキングマザーのための時短料理」を発信する時短料理研究家の田内しょうこさんによるコラム連載。 48歳、2人の子どもはそれぞれ高校生と中学生。子育て卒業を目前に控えた等身大の女性の毎日と、そこで得た気づきを連載形式で綴ります。

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高校生の娘が帰宅して言う。

「今日、学校でジェンダー教育の授業があった。でね、『男らしく、女らしく、と親から言われたことがある人?』って聞かれたら7割以上の手が上がったんだよね」

うちでは「女の子だから」とか「女らしくしないと」とは言ったことがない。言うとしたなら「それ、人間としてどうなん?」だ。娘は同級生の多くが男女を意識させる教えを家庭で受けていたことを知って驚いたようだ。正直、わたしだってびっくりだ。こりゃ男女平等ランキングが世界153ヵ国中の121位にもなるわけだわ。

男女雇用均等法が導入されたのが1985年。その頃ちょうど中高生だったわれわれ団塊ジュニア世代は「男女には均等な機会が保障されるようになりました。努力すれば、あなた達には平等な未来が待っています」と学校でも教えられ、無邪気にそれを希望として信じていた。もちろん、当時は今よりもさらに強い女性差別があったはずだが「変わっていかなくちゃいけない」という意思があちこちで感じられたように思う。

その後、雇用均等法の下で就職し、世の中は変わり始めたんだ、と頑張ってきた。明らかな男女差別に直面して悔しい思いをすることもあったけれど、それでも変わって行かなくちゃいけないと信じてきた。そのわたしとほぼ同世代であろう今の高校生の親たちが、これから社会に出ていくべき子どもたちに「女の子らしくしなさい」とか「男の子なんだから」なんて、本当に言っているの? 

"今の高校生"も「子育ては女性がやるもの」と思っている?

件の娘の授業では男性の育児休暇取得についても話題になったそうだが、

「なぜ男が育児休暇を取る必要があるのか。子育ては女がやるものじゃないのか。大変なら仕事が終わって帰宅後に手伝える」

との意見が男子から噴出したそうで、聞いたこちらが頭を抱えた。まだ高校生なんだから、赤ちゃんが生まれたらどんなに大変かは想像もつかないのは当たり前だ。でも、今どきの高校生男子なら、子育ては二人でやるもの、と思って欲しかったし、「よくわからんけど、育休って男もとるもんでしょ?」くらい言って欲しかったのに。

慌てて友人たちにリサーチをしたところ、どうも息子を甘やかしているママが多いらしい、ということがわかってきた。幼稚園時代のママ友に「将来、息子のお嫁さんのことは絶対にいびるわ」と言い切った人がいて、まさか冗談だと思おうとしていたが、案外それは冗談ではなかったのかもしれない。

古い世代の女性にはもちろん、そういう人はいる。夫が浮気をした友人は、彼のお母さん(つまりお姑さん)から「あなたが忙しくしてるのが悪い」と非難されたという。が、もう少し若い世代にも黄色信号は点灯している。あるママ友は、息子の通う学校で、男子生徒が女子とのプライベートな動画や写真を撮って友達に拡散するという事件が起きても「いまどきの女の子は積極的だから」とまるで女子学生が誘惑したと言わんばかりだ。浮気をされたのが自分だったらどうか。動画を撮られ流されたのが自分の娘だったらどうか。女は女の味方であるべきなのに、息子可愛さのあまり女は簡単に女の敵にもなってしまう。

そうした事実に驚き、娘には「そうやって育ってる男子がいっぱいいるから、よく見極めるように」と話したけれど、息子にはまだ内緒だ。お母さんにそこまでかばってもらえる男もいるのか、とショックを受けてしまうに違いないから。

わたしが息子を甘やかさない理由

というのも。はっきり言って、わたしは息子には冷たい。

娘には「悪いけど、お風呂洗ってくれる?」と言うのに、息子には「お風呂洗っといて」。そこには男女差別が確実にある。娘には「女性の役割として刷り込んではいないか……」と迷い、家事をさせるにもいちいち躊躇する。反対に息子には「僕は男だからやらなくていいよね」とふざけたことを考えさえしないように、「やっといて」と当然のように押しつける。ある意味、逆差別だ。息子にはたまに同情しているし、わたしもまだまだジェンダーフリーにはほど遠いなと反省したりもする。

だが13年前、第二子として息子が生まれたとき、絶対に彼は突き放して育てようと決心したのだ。「息子は可愛いわよ。小さい恋人っていうくらいだし」と息子を持つ友人たちには言われ、心底気持ち悪いと思ったことがきっかけだ。どうして子どもに恋人の役割を求めるのか。子どもはよそに恋人を作って巣立っていけるように育てるものでしょう?

いまのところ、見る限りでは息子は異性愛者のようだから、いつの日か女性と出会い一緒に過ごすなかでジェンダーロールの問題に直面するだろう。その日に向けて、息子には「女性は家事をしてくれるだろう」「いつも優しくしてくれるだろう」などという妄想は持たずに育ってもらいたい。

そのためにも「うちのお母さんは何でもしてくれた」と思わせてはいけないのだ

わたしたちは疑問をもつ姿勢を忘れてはいけない

幸い、中学生の息子、すでに女の子のクラスメートから「男子が思うような可愛くて優しいだけの女子なんていないからね」という現実は突きつけられているらしい。いいことだ。

けれど、自分たちの息子を可愛がり「男らしく」振舞えるよう全力でサポートするママたちのことも必ずしも責められない。あるいは、娘に「女らしく」わきまえることを美徳として教えていたとしても。なかなか男女格差がなくならない世の中に失望した結果、子どもたちが要領良く世の中を渡っていけるように「男らしくあれ。女らしくふるまえ」と教えているのかもしれないのだから。

それでもやっぱり。

男女は同じ立場で同じ権利で暮らしていける世の中に、娘と息子には出て行って欲しい。そのためには、わたしたち子育て世代が「女性がいると会議が長びく」という発言には疑問を持つようにしたい。そして、そういう考えに子どもたちがすでに染まっていないか。自分たち親が植えつけていないか。たまにチェックしてみなくては。いざ世の中が変わったときに、自分の子どもが時代遅れで取り残されたら悲しいからね。

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著者

田内しょうこ

田内しょうこ

「働くママの時短おさんどん料理」「育休復帰のためのキッチンづくり」「忙しいワーキングマザーのための料理」「子育て料理」をテーマに、書籍や雑誌、ウェブサイトで発信。出張教室やセミナーのほか、食と子育て関連の情報発信を行う。著書に『時短料理のきほん』(草思社)、『働くおうちの親子ごはん』(英治出版)、『「今日も、ごはん作らなきゃ」のため息がふっとぶ本』(主婦の友)などがある。

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