「今さら夫と同じ寝室なんて…」その本音に潜むモノとは
あなたは夫婦で一緒に寝ていますか? まだ子どもが小さい人は夫婦の間に子どもを挟んで「川の字」ということもありますよね。しかし、子どもが大きくなり自室で寝るようになると……? 「今さら夫婦で一緒に寝るのはなんとなく居心地が悪いけれど、夫婦仲に影響するなら、かんがえものだな」と思った筆者が夫婦カウンセラーの椎名先生に直撃!
今回は女性側が「夫婦別寝室」にしたいと考える理由を探りつつ、それが夫婦仲に影響がないようにするための方法を椎名先生と一緒に考えたいと思います。
夫婦別寝室を希望する、女性側の主な理由は2つ
子どもが小さい場合、家族同室で寝る習慣が根強い日本。家族で川の字で寝るというスタイルや、母子だけで寝て夫とは別室というケースも珍しくありません。そのため子どもが成長して一人で寝られるようになったときに、「今さら夫と二人で寝るなんて…」と、抵抗感を持つ人もいるのでは。
「夫婦別寝室を希望したことにより、夫婦仲に影響が出てしまうケースは多くあります」 (椎名先生)。
椎名先生によると「夫婦別寝室を希望する女性の主な理由は2つに分けられる」のだそう。
1つめは「睡眠の質・健康」が理由のケース。そして2つめは「パートナーとのコミュニケーション」が理由のケースです。
それぞれ詳しく聞いてみると……
睡眠の質・健康が理由の場合
〇夫のいびきが煩くて寝不足になる
〇加齢臭が気になって安眠できない
〇就寝時間が遅い夫に睡眠を邪魔されたくない
パートナーとのコミュニケーションが理由の場合
〇寝るときに音楽やわずかな灯りが欲しいなど睡眠環境にこだわりがある自分を、夫が理解してくれない
〇セックスを求められたくない
〇普段から不仲の夫と二人きりの空間にいるのは気まずい
どちらの理由であったとしても「寝室を分けたい」という希望がすんなり受け入れられれば問題にならないはずです。
しかし椎名先生曰く、「寝室を分けたいと夫に伝えるときに、その伝え方に誤解があってそれが夫婦の問題となってしまう場合が多い」とのことです。
別寝室を提案するときは「パートナの立場を考えた」言葉選びを
「睡眠の質・健康が理由」で別寝室を希望する場合
「睡眠の質・健康が理由」から別寝室を提案する場合でも、伝え方は重要ですよ!」(椎名先生)
健康の問題だし、とわかってもらうこと前提で話を進めると夫婦関係を悪化させる原因になる可能性が。
例えば、パートナーのいびきがうるさくて良く眠れないとき。
自分は悪くないと思っているからこそ「いびきがうるさすぎる! 一緒に寝てられないわ!」など強く言ってしまいがちですよね。ただ、もしかすると妻もいびきをかいている場合もあるので、この言い方は夫婦のコミュニケーションを悪化させます。
ではどのように伝えるのがいいのでしょうか。
椎名先生は「言い方を少し変えることがポイントです。相手のことも気遣ってあげてください」とおっしゃいます。
例えば「最近私はうまく眠れないけれどあなたはどう?」など、お互いの睡眠や疲労の状態について話しあうことから始めるのがおすすめなんだとか。
「しっかり眠らないとあなたも私も仕事にも影響が出てしまうから、たまには別の部屋で寝てみない?」など、お互いの健康を気にしていることを伝えることで、やんわりといびきについても指摘してみるのはいかがでしょう。
もしパートナーのいびきがひどいことが心配な場合、「あなたのいびき、もし何か病気が隠れていると心配だから一度病院でしっかり診てもらってほしい」。などと相手のことを気遣いながらコミュニケーションを取ることが大切になってくるのです。夫婦だと近い人になりすぎてうっかり気遣いを忘れてしまうことが多々ありますが、自分がされてうれしいコミュニケーションを心がけてほしいんです」(椎名先生)
「パートナーとのコミュニケーションが理由」で別寝室を希望する場合
「夫と別寝室にしたい」理由の裏に「話したくない」「さわられたくない」「セックスレスだから」など夫婦のコミュニケーションの問題があるなら、ちょっと心配だと椎名先生はおっしゃいます。
その理由は「セックスレス」は離婚の原因になりえる、重大な問題だからだと椎名先生はおっしゃいます。
もちろんお互い納得し、合意の上でのセックスレスなら問題はありません。歳を重ねるにつれ、体調や体質の変化などで「そんな気になれない」夫婦が増えるのもごく自然なことでしょう。
問題なのは、どちらかが一方的にセックスを拒むことで、パートナーが我慢を強いられているケースです。
「セックスは夫婦のコミュニケーションの一つです。それを一方的に拒絶すれば、相手は信頼されていない・自分の存在を否定されている気になってしまいます。だから、相手のことを拒む理由で「夫婦別室」を望むなら、それはもう寝室をどこにするかという問題を超えてきます」(椎名先生)
セックスレスの場合は夫婦別寝室かどうかが問題ではない。
自分たちの「セックスレス」を見て見ぬふりするために夫婦の寝室を分けることは一時しのぎでしかありません。
「夫婦間の適切なコミュニケーションがないまま「別寝室にするかどうか」など、のらりくらりかわしていると、あとで大きな問題に発展する可能性がでてきます。まずはちゃんと話し合うことが大事です」(椎名先生)
夫婦カウンセラーの椎名先生のもとにはセックスレスで離婚まで考える夫婦がカウンセリングを受けにくることは珍しくないんだとか。それは性的な欲求が満たせないからではなく、セックスすらしたくなくなるほど「心の底に相手への強い不満や本音が潜んでいるケースが多い」と椎名先生はおっしゃいます。
よくある例としては「過去に浮気をされた経験があり、信頼できない」「モラハラなど心理的に圧力を受けているため尊敬できない」「パワーバランスが上のパートナーを見返したい」などの気持ちをセックスを拒否することで表そうとしているだとか。
「セックスをするもしないも、一緒に寝るも寝ないも、お互いが納得してその形に落ち着いているなら全く問題はありません。もちろん寝室が別になることでセックスレスになりがちということは言えるかもしれませんが、心の中で信頼関係があれば大丈夫です。
要は「話し合いをしていない」「相手の理解を完全に得られていない」まま寝室を分けてしまうなど、夫婦間に充分なコミュニケーションが足りないケースが危ないんです。つまり「寝室が同じか否か」というのは、あくまでも夫婦の生活のスタイルの違いに過ぎないというわけです。」(椎名先生)
《椎名あつ子先生》
Profile
2000年「横浜心理ケアセンター」設立。
1対1のカウンセリングのほか、夫婦カウンセリング、また複数でのファミリーカウンセリングにも対応。
モラハラやDV、職場ストレス、子ども・大人の発達障害の相談にも多数の実績がある。
医療や法律の専門家との連携をしている。著書に『ゆがんだ愛 それから』(ギャラクシーブックス)がある。