「就学したら子ども部屋をつくろう」
「大きくなってきたし、そろそろ子ども部屋があったほうがいいかな」
今の時期、そろそろお子さんに個室を作ってあげたいと思う親御さんからのモヨウ替えの相談が跡を絶ちません。
「子ども部屋には、ベッドと学習デスクを置かなくちゃ」なんとなく、子ども部屋をつくるとなると「何を置くか」ばかりを考えてしまいがちですが、その前に子ども部屋ってどんな役割があるの? ということをぜひ一度考えてもらいたいなと思うのです。
なぜなら、子ども部屋とは子どもの「自律」のための大切な一歩になるから。
なんとなく作って、ほとんど使われない、ただ寝るだけ、散らかし放題、中で何をやっているのか不安、なんてことになってはもったいない。
子ども部屋って「個室」がいいの「オープンスペース」がいいの?
「子ども部屋はプライバシー確保のために必要」という人もいれば「子ども部屋はなるべくオープンで、家族の目が行き届くような空間がいい」という人もいて、考え方は人それぞれのようです。
ですが、日本の子ども部屋に対する歴史を読み解くと、子ども部屋の役割が時代とともにどう変化したのかがわかります。
日本では、1970年代に「個室が子どもの個を育む」と言われるようになり、1980年代に子どもの非行が問題になったのを契機にこども白書で「子ども部屋は非行の温床、夜ふかしの原因」と記載され、それ以降「仕切りのない家からコミュニケーションが生まれる」という考え方が広まっていきました。
仕切りが少ない間取り、大きなワンルームのような間取りがブームとなったのです。
この流れは現代にも続いていますが、「個室派」か「オープン派」かは自分の子ども時代に与えられた子ども部屋の様式に影響をされるようです。
また、日本だけでなく欧米と比べてみても子ども部屋の価値観は大きく違います。
日本の子ども部屋は「勉強部屋」
欧米では、子どもが産まれた頃から「寝室」として個室を与える家庭が多く、赤ちゃんもひとりで眠ります。それに対して日本は、子どもの寝室というよりも、子どもの勉強部屋という意味合いが強く、就学前後で個室を考える家庭が多いようです。
こうした違いは、そもそも「個室」に対する価値観の違いから来るようです。
欧米における個室とは、「個を育む場所」であり、プライバシーのための空間。
日本ではあまり「個を育む場所」」という捉え方はされておらず「集中して勉強をする場所」という狭義の役割を求められることが多いようです。
そのため、リビング学習などを行い、寝るのも親と一緒という家庭では「子ども部屋はとくに必要ない」と考えられがちです。
子ども部屋は「自律」を促す空間
子ども部屋が勉強部屋となり、リビング学習も併用するとなると、子ども部屋に置かれた学習デスクは使われずに物置化してしまいます。子どもにしてみれば、親に聞きながら宿題ができたり、テレビを見ながら(!)勉強できるリビングで勉強をした方がいいので、わざわざ自室で勉強なんてしません。
その結果物置になったデスクは、いざ個室での勉強が必要という時期になっても使いづらく、とても勉強をする環境なんかにはない、となります。
子ども部屋が「個室で勉強しないのに作った勉強部屋」となることで、散らかり放題、居心地も悪く、ただ寝るだけというもったいない部屋になってしまいます。
そうならないためにも、子ども部屋=勉強部屋ではなく、「自律を促す部屋」という子ども部屋のイメージに対する再定義が必要だと思うのです。
「じりつ」には「自立」と「自律」があります。
自立は、援助や管理下に置かれずに独立していること。
自律は、自分で決めた規律で自分自身をコントロールできる精神性。誰にも邪魔されないで自分自身の決定をすることができる能力のこと。
子ども部屋で育むことができるのは、まさにこの「自律」なのです。
実は多様な子ども部屋の役割
子ども部屋は、子どもにとって自律に繋がるたくさんの役割を果たしてくれます。
ひとりで籠もって、空想にふけったり、部屋のインテリアやおもちゃのディスプレイをいじったりすることは、本来とても健全な時間。籠もるなんて言うと、すぐに「引きこもって出てこなくなるんじゃ?」と心配する親もいますが、子ども部屋=引きこもり、という図式はあまりにも短絡的すぎます。
自分が自由でいられる空間。自分自身が自由でいられる空間。
そうした自分をコントロールする空間が、子どもの中に自律を促していく力になります。
子ども部屋は勉強するだけ、眠るだけの部屋じゃない。
これから子ども部屋をつくる、いまある子ども部屋をもっと有効活用できるようにしたい。
そう考えている親御さんは、ぜひそのことを知っていて欲しいと思います。
次回は、このことを踏まえた上でどのように子ども部屋を作っていったら良いのか、そのステップについてご紹介します。