教えてくれたのは、内藤 裕二先生
昭和58年京都府立医科大学卒業。令和3年より、京都府立医科大学大学院医学研究科生体免疫栄養学講座教授。著書は『すべての臨床医が知っておきたい腸内細菌叢』(羊土社) など多数。
腸内フローラの状態をチェックしよう
腸内細菌は、野に咲く花のように同じ種類が群生していることから、腸内フローラと呼ばれており、排便や消化・吸収といった腸管機能に大きく貢献しています。
腸と脳には密接な関係があります。ストレスを感じるとお腹が痛くなり、下痢や便秘を生じることがあります。これは、脳が自律神経を介して、腸にストレスを与えるからです。反対に、腸の機能に障害があると、不安感が増し、行動や食欲などが変化することがわかっています。
腸内フローラと腸管機能の共生関係が乱れることをディスバイオーシスといい、便秘や下痢などの腸の不調だけでなく、心身症やうつ病といった脳の疾患とも関連があることがわかってきました。
このことから、ディスバイオーシスを改善し腸内フローラを整えることで、メンタルも改善され、ストレスに強い体をつくることができると考えられています。
ストレスに強い体をつくるには、まずは自分の腸の状態を知ることが大切です。腸内フローラが乱れていないか、下のチェックリストで確認しましょう。あてはまるものが多いほど、腸内フローラが乱れているかも……。
□常に下痢か便秘気味
□脂っこい食事、甘いものが好き
□外食、インスタント食品が多い
□野菜など食物繊維が多い食品をほとんど食べない
□ヨーグルトや納豆など発酵食品をほとんど食べない
□食事の時間が不規則
□睡眠時間が短い、就寝と起床時間が不規則
□運動しない
□イライラが多い
□薬を飲んでいる
腸を整えるには、シンバイオティクスも大切
腸内フローラを整える方法として、ヨーグルトなどの生きた菌であるプロバイオティクスが注目されていました。しかし、生きた菌は腸に定着せず、体外へ排出されてしまいます。
そこで大切なのが、プロバイオティクスだけでなく、もともと自分の腸に存在する善玉菌のエサとなるプレバイオティクスも摂ること。最近では、プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせた「シンバイオティクス」が重要だと考えられるようになりました。
ヨーグルトなどの発酵食品とともに、食物繊維、フラクトオリゴ糖など、難消化性の糖質などを積極的に摂取することで、プロバイオティクスとプレバイオティクス両方を摂ることができます。
注目のフラクトオリゴ糖 どんな食品に含まれる?
注目されているのは、難消化性の糖質であるフラクトオリゴ糖です。
フラクトオリゴ糖は、胃や小腸では吸収されずに大腸まで届きます。そこで腸に定着している善玉菌のエサとなり、善玉菌を増やします。善玉菌が増えると、悪玉菌が棲みにくい環境になり、善玉菌優性の整った腸内フローラになります。
フラクトオリゴ糖は、自然界では、ゴボウ、タマネギ、トマトなどの野菜、バナナ、モモ、スイカなどの果物に含まれています。また、甘みがありながら砂糖よりもカロリーが半分であることから、甘味料としてチョコレートなどの製品にも使われています。
食品から摂取しやすいフラクトオリゴ糖を日常的に取り入れて、 腸内フローラを整え、ストレスに強いからだづくりを目指しましょう。