教えてくれたのは……御堂直樹(みどうなおき)さん
東京医療保健大学教授。1965年生まれ。筑波大学第二学群生物学類卒業。東北大学博士 (農学)、CSCS(アメリカに本部を置く国際的な教育団体であるNSCAが認定するアスリート指導に特化した資格)。専門分野は、食品学、食品加工学、食品機能学。競技として、アメリカンフットボール、ボディビルディングを経験。ボディビルディングでは、2002年日本社会人大会優勝した経歴をもつ。
ダイエットの成功は「たんぱく質の摂取量」がカギ!
御堂さんによると、ダイエットを継続するためには、たんぱく質の摂取量を増やすことがポイントとのこと。
加えて、次に押さえておきたいのが、食品の選び方です。
ダイエット時に欠かせないたんぱく質を摂るためには、どのような食品を選ぶとよいのでしょうか?
ダイエット向きな、たんぱく質源の食品とは
御堂さん「肉類や魚介類を主とし、脂質の少ないものを選ぶか、目に見える脂質を含む部位を除いて食べるのがよいと思います。ダイエットではエネルギー摂取量を減らす必要があるため、可能な限り、脂質の少ない食品からたんぱく質を摂るべきです。」
たんぱく質を含んだ脂質の少ない食品は、下記のとおりです。
肉類
◆肉類の場合のおすすめ食品……牛肉、豚肉(ヒレやモモの部位)、鶏肉(むね肉、ささみ)、レバー
御堂さんによると、脂質の少ない食品選びはもちろん、下ごしらえの段階の“あるひと工夫”がエネルギー量を減らせるカギになるとのこと。
御堂さん「目に見える脂身や皮を取り除くことがポイントです。20gの脂身を除くだけで、約150kcalのエネルギー量を減らすことができます。
ダイエット時はビタミンやミネラルが不足しがちになるので、脂質の少ないレバーもおすすめです。」
魚介類
◆魚介類の場合のおすすめ食品……白身魚、まぐろの赤身、いか、えび
御堂さん「脂質の多い魚や魚卵は控え、上記のような脂質の少ないものを選ぶとよいと思います。
ですが、魚類の場合は脂質が多くても食べすぎなければダイエットにプラスの効果があると考えられています。複数の研究結果を解析した信頼性の高いデータでは、魚類の摂取量の多い人は腹部脂肪が少ないことが報告されています(1)。
その要因のひとつとして考えられているのが、魚類の油に含まれる、オメガ3と呼ばれるn-3系多価不飽和脂肪酸です。エネルギー摂取量を減らすという条件付きですが、n-3系多価不飽和脂肪酸も、それを摂取しない場合に比べて、腹部脂肪を減少させることが報告されています(2)。そのため、エネルギー摂取量を減らした状態が保たれるのであれば、脂質の多い魚類を食べることにもメリットがありそうです。」
そのほかの食品
御堂さん「そのほかの食品としては、卵、乳製品、大豆製品もよい食品ですが、脂質が多いので、卵は卵黄の摂取を控えて卵白を主体にする、乳製品は低脂肪にする、大豆製品は摂りすぎないようにするなどの工夫が必要です。
最近では、大豆の脂質を除き、肉のような食感に加工した大豆ミートが市販されており、脂質の少ないたんぱく質源として利用できます。ちなみに、大豆プロテインの摂取がダイエットによいと言われることがありますが、対象者により効果が異なり、明確な結論は出ていません(3)。」
肉類と魚類、どちらを選ぶのがよいの?
献立を考えるときや外出先でのメニュー選びの際、ダイエット中だとなおさら「肉類と魚類どちらを選ぶべきなのか」と、迷うこともありますよね。
それぞれの違い、メリットについて教えていただきました。
価格の違い
御堂さん「肉類は、価格の安いものがあることがメリットです。たんぱく質の栄養価には、特に肉魚で差はないと思います。
食品の価格については、種類により大きく異なるので、何を選ぶかにもよりますが、肉類には若鶏のむね肉やささみなど単価の安いものがあります。これらの肉類は、一般的な魚類に比べ、たんぱく質源としてのコストパフォーマンスが優れていると思いますよ。」
たんぱく質の栄養価の違い
たんぱく質の栄養価の違いについては、現在推奨されているDIASS(消化性必須アミノ酸スコア)で比較するのがよいとのこと。
DIAAS とは簡単にいうと、消化吸収まで考慮したたんぱく質の栄養価を表すものだそうです。
御堂さん「魚類は種類が多いこともあり、一部の魚種のDIASS からの推測になりますが、肉類も魚類も十分な栄養価があるとされる1を超えており(4,5)、“たんぱく質の栄養価”という面では特に違いはないと考えています。
それ以外の成分としては、カルニチンやタウリンが挙げられますが、通常食べる量でその2つの成分の効果が出るかは疑問です。
先述のとおり、魚類に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸には、腹部脂肪を減少させる効果があることが報告されています(2)。そのため、魚類にはダイエットにプラスの効果があるという点で、メリットがあるといえそうです。」
「調理法」「調味料」を意識することも忘れずに
たんぱく質が含まれた脂質の少ない食品選びに加えて、意識しておきたいのが調理法です。
調理時は、どのような点に気をつけるとよいのでしょうか?
御堂さん「調理法としては、焼く、煮る、蒸すなどで油を控えます。さらに、調味料はドレッシングやマヨネーズなど油分の多いものはエネルギー値の低いものに置き換えるか、使用しないようにします。食品には目に見えない油脂も含まれているため、この程度の方法では脂質が不足し過ぎることはありません。」
エネルギー摂取量を気にして、つい食べないことを選択してしまいがちですが、健康的に痩せるためにはバランスのよい食事が大切です。食品の選び方や調理時のポイントを日ごろの食事に役立てることで、今よりもダイエットがスムーズに進むようになるかもしれませんよ!
参考文献:
(1) Schlesinger S et al., Adv Nutr, 10, 205-218, 2019.
(2) Albracht-Schulte K et al., J Nutr Biochem, 8, 1-16, 2018.
(3) Akhlaghi M et al., Adv Nutr, 8, 705-717, 2017.
(4) Ertl P et al., Journal of Land Management, Food and Environment, 67, 91–103, 2016.
(5) Shaheen N et al., Food Chemistry, 213, 83-89, 2016.